Angst
たった一晩で全ては変ってしまった。
千代田区の警察と自警団は全て事実上の壊滅。
「神保町」の「自警団」のリーダーだった、あたしの叔母さんは……混乱の中で行方不明になっていた。……いや、「本土」から来たあの人が言った事が本当なら、生きてはいない。人間に魂が本当に有るとしたら、その魂も無事では済んでいないだろう。
これからは、千代田区の治安は……他の「島」の「自警団」か……「本土」の「御当地ヒーロー」達によって維持される事になるだろう。
4つの「島」の中で「2位以下に大差を付けた最強」の「自警団」だった「英霊顕彰会」は大幅に弱体化し……そして、もう誰も「英霊顕彰会」を「自警団」と見做す人など居ないだろう。4つの「島」の「自警団」の力関係は大きく変ってしまった。
多分、「自警団」の有り方そのものも変ってしまうだろう……。
「勇気さん……」
控えめに言っても、そこは……「ゴミ屋敷」だった。
「行っちまうのか……俺を捨てて……」
「あの……ごめんなさい……」
あたしは、「本土」に移り住み……高校の勉強を一からやる事になった。
レナさんも、「本土」の高専に編入。
「みんな……居なくなっちまったな……」
初めて会った日以来……数ヶ月ぶりに聞いた……勇気さんの芝居がかっていない……本当の感情がこもった声。
「最後に頼む……俺を……元の俺に戻してくれ……」
言っている意味が判らなかった……。
勇気さんが、この数カ月間かかっていた「精神支配」は……本土の「御当地ヒーロー」達の手で解かれた筈だ。
やがて……勇気さんが何をして欲しいのか、ようやく理解出来た時……。
「違いますよ‼ 今の勇気さんが……本当の勇気さんなんです‼ 判らないんですか?」
「こんなに……惨めなのが……『本当の俺』?」
笑い声か泣き声か判らない声……。
「頼む……戻してくれ……心をいじられてた頃の俺に……あの頃の俺が……本当の俺だ……。お前こそ……何故、判らないんだ?」
「Neo Tokyo Site 04:カメラを止めるな!」(仮題)に続く