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高木 瀾(らん) (9)

「何で、医者でもカウンセラーでも宗教家でもないあんたが、あの男の人生を背負えると思ってるんだ?」

 私は「神保町」の「魔法使い」にそう言った。

「でも……」

「そりゃ、あの男にも同情すべき点は有るだろうよ。でも、あんたの人生を、あの男に捧げる必要なんてない。自分の人生を安売りするな」

 まだ、心を決めかねてる彼女に私は言った。

「首に縄付けてでも、あんたを、この島から連れ出す。判ったな」

「ところでさ……お前が何で私を『気に入った』とか言ったのか、判ったよ」

 関口がニヤニヤしながらそう言った。

「何だ?」

「いや……私だって気に食わないヤツの横っ面引っ叩く為なら後先考えないが……お前ほどじゃねぇよ」

「うるさい」

 少し離れた所では、台湾から来た女の子が顔を赤らめながら、レナに何か話そうとしていた。

「あ……あの……お姉さん……」

「な……なに?」

「よかったら……その……ボクと付き合って……」

「い……いや……ちょっと待って……。ちょっと、瀾‼ 何、うらやましそうな顔してんだよっ⁉」

「うらやましいから、うらやましそうな顔してんだ。……悪いか?」

 台湾から来た女の子は、すっかりレナになついていた。

「お前……何、考えてんだ?『死んだフリ』する為だけに、4号鬼をブッ壊すなんて……」

 続いて、苹采(ほつみ)姉さんが……怒る気力も無い、って感じのげんなりした口調で言った。

「『護国軍鬼』の部品の8割近くは『水城(みずき)』と共通だろ。また作れる。それに……新たに『護国軍鬼』を2つか3つ作れるだけの動力源も手に入った」

 そう言って私は「国防戦機・特号機」の操縦者から摘出した「幽明核」が入ったトランクを指差した。

「ついでに、偶然とは言え、4号鬼の『幽明核』も無事だった」

「って……言うけどなぁ……」

「一時凌ぎの『死んだフリ』だからこそ、念入りにやる必要が有る。違うか?」

「だとしてもだ……。やり過ぎだ、あれは……」

「けどさ……もう……私達……『戦う力を持つ者』は……主役じゃないのかも知れない」

「へっ?」

「私は……ずっと悩んでた……。誰かを助ける者になりたかったのに……私が手にした『強さ』は……『誰かを倒す事』『自分だけは生き残る事』に特化したモノだった……。けど……答は、すぐ近くに有った」

「何だ?」

「偶然とは言え、この1年足らずで……私が『誰かを倒せる力』だけじゃ解決出来ない事件を何度経験したと思う? これからは……救助チームや避難誘導チームや医療チームが主役になり……私みたいな『戦士』は……」

 そう言いかけた時、携帯電話(Nフォン)の災害通知アプリの通知音が鳴った。

「お……おい……冗談じゃない……。お前の言った通りの事が……」

「待ってくれ……何だよ……これ……まさか……」

 この時……「千代田区」の「九段」地区に毒ガスが撒かれると云う事件が起きていた。

 (のち)に判明した犯人は……「九段」の「自警団」の「英霊顕彰会」。

 ヤツらは……武器である大量の「死霊」を一夜にして失なった。そして、その「武器」を補充すべく、「死霊」の大量生産を試みたのだ。自分達が守るべき「九段」の人々を虐殺する事で……。

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