第一話
ガタ…ゴト…。
馬車は広い草原の一本道を走っていた。
空は青く広がり、気持ちの良い日だった。
「なぁーソウじぃ。あとどれくらいで都につく?」
荷台からひょこりと男の子が顔をだした。
「あと1日はかかるなぁー」
ソウじいさんは呑気にそう答えた。
「げー!!そんなにかかるの!?だから車買おうって言ってんのにー」
「いってるのにー!!」
キャッキャと兄に続いて楽しそうに顔をだした女の子。
「…ん?あれはなんだ?」
後ろでちびっ子が騒いでる中、ソウじいは草原の中で何かを見つけた。
「あ、人だー!!」
「人だー!!」
そう。何もない草原の中人が2人立っていたのだ。
「だぁーから言ってんだろが。都はこっちだ」
「そっちは原っぱしかないでしょーがあぁあ!!あんたに目はついてないのかっ!」
「うっせーないちいち大声出すな。近道だ近道。」
「そう言って何日歩いてると思っとるんじゃ!!」
「あのー…お嬢さん達??」
「「あ"ぁ??」」
「…都に行くなら乗っけていこうか?;」
* * *
「いやぁ〜助かりましたー先程は失礼な態度で申し訳ありませんでした;」
長い髪を一括りに高い位置で縛った女の子が申し訳なさそうに謝る。
「まぁーたく。誰かさんのせいで2週間も時間食っちまった」
「その言葉、ソックリそのままお返しするわ」
頭で腕を組み、呑気そうな男の子は今では珍しい着物姿だった。
そして髪の毛は白く目は赤い。
「……」
ソウじいはその少年を訝しげに見つめる。
「あ、こいつは邪弧ではないんで安心して下さい。私アカネ。この白髪バカはコウシンです」
そう言って丁寧にお辞儀をした。
「『じゃこ』ってなぁに?」
女の子が無邪気にコウシンに聞いた。
「…あー。邪弧ってーのはな、いわゆる鬼みたいなものだ」
アカネがコウシンに変わって女の子の頭を撫でながら言葉を続ける。
「邪弧は絶望に落ちた人に巧みに嘘をつく。その嘘に落ちた人を殺して魂を食べちゃうの」
「?よく分かんないよ」
「ま、ガキにはまだ分からなくていい話だけどな」
そう言ってコウシンは再び寝る態勢に入った。
「んだよー!!もっと詳しく教えてくれてもいーじゃんか!!」
少年がぷぅっと顔を膨らませた。
「邪弧の存在はあまり知られていないけど、その正体は人の闇なの…」
「おねぇちゃん…?」
アカネは、悲しそうに微笑んでいた。