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第9話「眠れる力②」

 解放軍はまだライムを諦めてはおらず、ずっと今まで探していたのだ。

 忘れた頃に、ライムは手下達に見つかってしまった。



「やっべ!! まだいたのか!!」



 慌ててライムはナヴィを引き連れて逃げ出した。



「待て!! 逃がすか!!」



 逃げるライムを手下達は追う。またもや暗闇の林の中に、ライムは逃げ込んだ。


 ライムはナヴィを抱きかかえるようにして、走っている。



「意外とおまえ重いんだな」



「失礼だぞ!! ライム!!」



 一人で逃げるなら、追っ手を撒くことなど、なんてことはないが……

 それがナヴィを抱えてとなると、中々スピードを出すのも難しい。


 ライムと手下達の距離が、どんどん縮まっていく。



「はぁ……はぁ……このままじゃ捕まる! 捕まって……たまるか!!」



 ライムは力を振り絞り、更にスピードをあげた。


 あともう少しで追い付くーーといったところで、また両者の距離は広がる。手下は驚いた。



「あいつまた速くなったか!? チッ……逃げ足だけは早いやつめ!」



 後ろを振り返る余裕すらなく、前を向いて走るライムと違って、抱えられているナヴィには、追ってくる解放軍の姿がよく見えていた。


 ナヴィが確認できたものは、解放軍の手下と思われる人物が二人。

 灯りを照らすランプを片手に、腰には短剣らしき物があるのが、うっすらと分かった。


 武器を持っていることは、注意しなければならないが……

 幸いなことに、あの巨人・ダイキの姿は見えない。


 相手はたったの二人。強敵、ダイキもいない。

 これはチャンスかもしれない!!


 何かを閃いたナヴィは、抱えているライムの体を手で叩いて呼び止めた。



「待てライム!! 止まるんだ!!」



「な、なんで止まらなきゃならないんだよ! 今止まったら、あいつらに捕まってしまうだろ!」



「チャンスだ! あのデカイ男、ダイキがいない。

 相手は手下二人のみだ! 戦うなら今しかない!!」



「戦う!? 何言ってんだ! 俺にもさっき、チラッと見えてたぞ?

 あいつら剣を持ってる!! こっちは丸腰だ。分が悪すぎる」



 実はライムにも相手が武器を持っていることも、ダイキがいないことも、すでに全部分かっていた。


 それでも敵わないと悟り、逃げていたというのに……


 それが足を止めて戦う!? ナヴィは無謀な事を言っている!!


 しかし、ナヴィだって馬鹿ではない。これも勝算があってのこと。

 ナヴィは自信を持ってライムに言い聞かせた。



「大丈夫だ。ライム!! 君は丸腰なんかじゃない……


 君には、“神力”がある!!」



「神力……」



 ライムは思い出す。あの巨人のダイキが使いこなしていた不思議な力


 “神力”


 両腕が鋼鉄のハンマーのように破壊力を増すという、脅威な能力だった。



「あの不思議な力が俺にもあるっていうのか?」



「うん。異界人には皆不思議な力が宿っていると言われている。

 その力のことを、この島の者達は”神力“と呼ぶ。


 君みたいに意識を失って、この世界に来る人も多いんだ。

 その神力があることが、異界人だという証明になることもある」



「じゃあ俺の神力はどんな力が眠ってるっていうんだ……?」



「さぁ……それは分からない。

 持つ神力次第では、戦闘に向かないものも存在するくらいだしね」



「それじゃ話にならないじゃないか!! 今止まって奴等の相手をするには、リスクが大きすぎる!!」



 ここで止まって戦うのは、一種の賭けに近い。


 ライムにどんな神力が宿っているかも分からないうえに、ライムがここで神力の能力に目覚める保証もない……


 だが、それでもライムがここで止まって戦わなければならない理由があった。

 その理由をナヴィが明かす。



「止まる気はないか。ならば、ライム……


 このまま僕を抱えながら、ずっと走り続けるかい?」



 意外に重いナヴィを抱えながら、ひたすら走るライムは完全に息があがっていた。


 そろそろ限界を迎えるであろうことが、ナヴィには分かっていたのだ。



「はぁ……はぁ……そうなんだよな……もう無理だ。もう限界……!!

 まったく……ナヴィは……重いんだよ!!」



 ライムが愚痴をこぼすようにして、ナヴィを放り投げた。


 何となく手を離すような気がしていたナヴィは、くるりと空中で回転して、華麗に着地する。


 そして、すぐさま茂みの中へと走り込み、ナヴィはうまいこと自らの身を隠した。



「ず、ずるいぞ! おまえ自分だけ!!」



 一目散に逃げるナヴィに苛立つも、ライムは息があがり、どうすることもできない。

 両膝に手をつきながら、呼吸を整える。



「いたぞ!!見つけたぞ!!」



「追い付かれたか!! くそっ!! 結局やるしかないのか!!」



 手下達はようやくライムに追い付く。


 手下の二人は、腰にあった短剣を手にした。

 右手に短剣、左手にはランプを持ち、ライムの顔を照らしている。



「とうとう観念したか! はっ、なんだ。よく顔を見てみれば……こいつ弱そうだな! たいしたことなさそうだ」



 ライムの見た目はどこにでもいるような一般男性。ダイキのように、体格だって良くない。


 正直、見るからに弱そうだ。そんなライムを見て、手下達は強気に出た。



「なぁ、こいつならダイキさんがいなくても俺達だけでなんとかなるんじゃないか? 手を借りるまでもない!」



「あぁ、そうかもな! ダイキさんのいい土産になる!!決まりだ! そうと決まれば……


 解放してやる!!異界人!!」



 まずは手下の一人がライム目掛けて、短剣片手に迫ってくる。

 丸腰のライムはどうすることもできない。



(おいおい、どうすりゃいいんだよ! 勘弁してくれ!!)



 ライムに近づく手下に向かって、せめてもの抵抗で、ナヴィは茂みの中から足を出した。


 辺りは暗闇で包まれているため、足下にまで目はいかず……手下の一人は、ナヴィの足に引っ掛かり、つまずいて転んだ。



「痛てぇ、なんだ今のは! 誰かいるぞ! この草むらの中に!!」



 手下は転んだ拍子に、ランプを地面に落とす。


 その衝撃により、ランプは壊れてしまった。辺りは一層暗さを増す。



「チッ、余計見えなくなっちまった」



「そういえばあの異界人と一緒に、変な生き物がいたな。さてはあいつの仕業だな!?」



(助かった。ナヴィ!)



 ライムはナヴィに助けられるも、そのせいで、手下達がライムと一緒にいた、謎の生き物の存在に気付く。


 存在がバレたと知りながらも、ナヴィは自分の居場所を明かしてしまうのではないかと思うくらいの大声で、ライムに助言をした。



 「考えるんだライム。よく考えろ!! 必ず君にも神力は眠っている……


 信じるんだ。自分を!!」



 ナヴィの思いは伝わるも、ライムはどうすることも出来ずに立ち尽くしていた。



(考えろ、信じろっていったって……分かんないよ。俺には何が……

 

 一体どんな力が眠ってるっていうんだ!)






第9話 “眠れる力” 完

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