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第85話「最下層特別独房室②」

 この神の創造物とも呼べる時の塔。

 それは極めて異質であり、そこらにある人工物と桁違いの存在だ。


 そしてそのトップに立つのが、何を隠そう、時の支配者であるナヴィだ。

 そう考えると、今更ながらライムには、ナヴィがとてつもなく偉大な人物に見えてきてしまっていた。手のひら返しとは、まさにこのことだろう。


 思い返せば、ナヴィには失礼の連続で……数えようにもキリがない。

 ライムは今までの自分の行いの非を詫びて、唐突に頭を下げた。



「ナヴィ……今までバカにしてばかりでごめんな。時の支配者って、すごい人物だったんだな」



 ミサキも同じ感想を持ち合わせていたのか、ライムにつられる形で、ミサキも頭を下げる。



「私もよ……ごめんなさい。ナヴィちゃん。

──あっ、今となっては、このナヴィちゃん(・・・)ってのもだいぶ失礼な気が……ナヴィ()のがいいかしら?」



 二人の急変ぶりに、先程よりも更に大きな声でナヴィは笑った。



「あっははは! やめてよ二人とも! そんなんじゃ僕も調子狂っちゃうよ。二人はみんなの真似しないで、今まで通りでいいんだよ!」



「そ、そう言われても……」



 特にライムは散々ナヴィを小馬鹿にして手荒く扱っただけに、反省の色は強い。

 

 立つ瀬がないライムの気を紛らすためか、ナヴィは不意におかしな質問をしてみせた。



「やれやれ、困ったな……じゃあちょっと気晴らしに……ライム、君の年齢はいくつか分かるかい?」



「な、何言ってるんだよ……」



『ここに来てナヴィの仕返しか!?』


 ライムはそう思った。今までの鬱憤を晴らすつもりに違いない。

 なぜならこれは、この島に初めて来たときに体験済みの出来事だったからだ。


 この島では“時間”が存在しない。そのため、元いた世界の日時や年齢などという、“時間”に関与するものは、何も思い出すことができないのだ。


 だから自分の年齢を答えられるはずがない。

 そう結末を知っていながらも、ナヴィの言われるがままにライムは一応、自分の年齢を考えてみた。

 すると──



「俺の年齢は……16歳だよ! あれっ??」



 何のためらいもなく、ライムの頭に年齢が浮かんでくる。

 驚いたミサキは、ライムに続いて自分も考えてみた。



「うそ!! どうなってるの!? 私も思い浮かぶのかしら? 私の年齢は……18歳! 私にも分かる!! どうして!?」



 なぜか思い出すことができた年齢に、二人が興奮していると、ナヴィがニンマリした顔で理由を説明した。



「それはね、この塔が君達の世界と繋がりをもっているからなんだよ! ここでは君達の世界に存在した“時間”が適応される。だから自然と思い出せるんだ! それに大きく影響されるものが、もうひとつある!」

  


 ナヴィは下降中のエレベーターの外の方に目をやった。

 不思議な壁に覆われ、外が見えることはなかったが、外の様子を思い浮かべながらナヴィは二人に話す。



「前に塔の中に解放軍専用の留置場があると話したのを覚えてるかな? 今、地下へと降りていってるけど、この地下室すべてが独房の作りとなっている。多くの解放軍が捕らえられてるよ!」



 塔の中に存在する、解放軍専用の留置場。

 それはすでに島の者達も周知の事実だ。

 しかし、以前も不安視していたように、安全面が問われる。

 ライムがナヴィに疑問を投げ掛けた。



「地下にその牢屋があったのか! もちろんその話は覚えてるよ! それに、その時から気になってたんだ……

 解放軍の者達は神力や神獣を使う……その力があれば、簡単に牢屋は壊されてしまうんじゃないか? 危険そうだけど、大丈夫なのかな?」



「その点についてはね、君達も同じ神力の使い手だ。神力を使おうとしてみれば分かるよ!

 神力とは、とても不思議なものでね……異世界、島の中だけで発揮される不思議な力なんだ。君達の世界と繋がる、この塔の中では力を使うことはできないんだよ!」



 ライムは半信半疑で、実際に神力・ガンを使おうと、いつも通り指先に力を溜めてみた。

 けれども、まったくもってライムの指は反応を示さず、神力を発揮することができない。



「あれ!? ほんとだ! 神力が使えない!! なるほど……完全に封印されちゃうわけだな。

 でも、神獣はまた別なんじゃないかな? あれはまた神力とは違う力だ!」



「実は、その神獣の力も平気なんだよ。神獣達はね、神に使える生き物と言われている。だから神獣達は生まれながらにして、本能的に分かっているんだ。この時の塔の重要性を!

 神獣は時の塔を傷つけることができない。一体化した主が攻撃を加えようとしても、拒否されてしまう!」



 ミサキは神獣達の存在に、より一層驚いた。



「やっぱり神獣ってのは、神秘的な生き物ね! 主の意思に従い、人殺しや悪巧みの手助けを加担する者も多いけど……それでも時の塔だけは、守ろうとしている!

 神獣も十分不思議な存在だけど……何より、この塔が一番の不思議かも! 本当に時の塔は謎に包まれた存在ね!!」



 いかに時の塔が特殊なものか、ライム達は改めて思い知らされる。


 二人の興奮は冷めやらない中、エレベーターはスピードを落とし完全に停止する。どうやら目的地へと辿り着いたようだ。

 覆われた壁は徐々に消えていき、外の世界があらわになる。


 これから博士が語る内容に、どんな事実が待ち受けているか分からない……


 実はそのために、ナヴィは先程からずっと明るく振るまい、ライム達の緊張をほぐそうとしていたのだ。

 わざとらしく笑って見せたのも、すべてはこのためである。


 だが──ナヴィの表情はここに来て一気に変わった。

 とうとう、その真実に触れる“時”が訪れる。



「話してるうちに着いたよ。二人とも! 最下層の特別独房室。そこに連れて来られた、キリシマ博士のもとにね!!」






第85話 “最下層特別独房室” 完

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