表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/136

第81話「再会②」

 ナヴィは時の流れ、この島に時の軸(タイムアクシス)と未来から来た、二人の同じ人物がいること。

 また、ライムが父親の記憶が消えている理由など、ありとあらゆるすべてを説明した。


 すると、さすがは時の研究者というべきか。とても飲み込みがよく、ナヴィの言ったことのほぼすべてをキリシマは理解した。



「なるほど。同じ世界線に同一人物がいてはならないルールか……

 “タイムパラドックス”とも呼ばれてるやつだな。人体の転送はまだ早すぎた……


 だが、驚いたことに未来は私の定説通りだったんだ! 未来には無数の未来の世界が存在する! これはすごい発見だぞ!!

 私の考え……いや、私は間違ってなんかいなかったんだ!!」



 キリシマは未来の真実を知り、大変興奮している様子だ。

 ナヴィの話を完璧に理解するキリシマに、ミサキは驚きながらも感心していた。



「すごい! さすが未来を研究しているだけあるわ。私なんてナヴィちゃんの話聞いてもさっぱりだったのに……」



 だが、呑気に感心している場合ではない。

 そしてキリシマ本人も本人で、問題ありの能天気だ。

 事態を把握し反省するかと思われたが、まさかのこの状況下でキリシマは、未来についての自分の考察が的中していたことを大いに喜んでいる。

 目をキラキラと輝かせ、完全にキリシマが研究者の顔となってしまっている……


 そんな興奮冷めやらぬキリシマを、ナヴィは叱りつけた。



「喜んでる場合じゃないよ!! 置かれてる状況を考えてくれ!!」

  


「──!! そ、そうだったな……面目ない」



 ナヴィに怒鳴られ、キリシマは我に変える。

 やはりキリシマにすべてを話したのは間違いではなそうだ。聞き分けもよく、話は通じる。


 解放軍キリシマは平気で人殺しを行うが、このキリシマからは到底、そんな“恐怖”は感じられない。

 ナヴィはこのキリシマに、多少ではあるが気を許した。



「さて、キリシマ。いや、キリシマ博士──あなたのことは、そう呼ぶことにしよう。解放軍のキリシマとは、全くの別人ということは分かったよ」



「ありがとう。私を信じてくれて」



「礼には及ばない。その代わり、博士にはすべてを話してもらいたい。事件の真相のすべてをね」



 謎に包まれていた事件の真相に、これで辿り着ける……

 だが場所も場所だけに、ここで話す内容ではない。そのためナヴィは考えた。



「ここだと場所が悪い……いつ気絶した解放軍が目を覚ますか分からないからね。だから場所を変えよう! “時の塔”で話を聞くとしようか!!」



 “時の塔”

 ライム達が旅の目的として、ずっと目指していたその地に、ようやく向かうこととなる。



「ライム。ハヤテが持っていた鍵で牢屋を開けて、キリシマ博士を外に出してあげてくれないか?」



「……分かった!」



 ナヴィの言われるがままに、ライムは牢屋の鍵を使い、扉を開けた。

 扉が開いたと同時に、キリシマ博士はライムに飛び込むように抱きつく。



「ライム!! 会いたかったぞ……“無事”だったんだな。父さんだぞ? ライム……」



 ライムは突然の出来事に、体が固まっていた。

 拒否することもできず、ライムはキリシマ博士を受け入れざるをえなかった。

 悪気を感じた博士は、抱き締めながらも謝罪する。



「すまない……記憶がなくて、誰だか分からないとは思うけどな。今は……こうさせてくれ」


 

「あ、あぁ……」



 しばしの間、博士はライムを抱き続けた。

 十分堪能したと思ったナヴィは、そっと声をかける。



「もういいかな? キリシマ博士。時の塔に向かうよ」



 ナヴィにそう言われ、博士はライムから離れた。



「あぁ、私のわがままをすまない。その時の塔とやらへ、私を案内してくれ」



 キリシマ博士は抵抗することもなく、自らの意志で時の塔へと向かうこととなった。

 アスカルタ洞窟から時の塔は、そう遠くはない。外に出ればすぐのはずだ。

 しかし、ここは洞窟の最深部。まずはこのアスカルタ洞窟から出なければならない。


 牢屋があった広場のロウソクを、ナヴィは何本か手にし、出口へと歩き出す。

 博士はナヴィの後ろをしっかりと付いて歩いている。

 けれども、ライムは二人には付いていかず、一旦足を止めた。

 異変を感じたミサキが、ライムを気遣う。



「大丈夫? 父親って言われてもピンと来ないでしょうしね……変な感覚かしら?」



「いや、それが怖いくらいに、何も感情がなくてさ……大丈夫、心配しないで平気だよ!」



「そう……それならいいんだけど。何か辛いことがあったら、ちゃんと言ってよね!」



「あぁ、ありがとうミサキ! よし、俺達も行こう!!」



 慌ててライムとミサキはナヴィを追いかけた。


『大丈夫』 『心配ない』


 こう答えたライムであったのだが……

 内心はキリシマ博士の言葉の意味を深く考え、悩んでいた。

 部下のオオヤマとは違う反応を見せたキリシマ博士に、大きな違和感を覚えていたのだ。


 ライムとオオヤマが初めて会った時、オオヤマはライムに向かってこう言っていた。


『どうしてこんなところにいるんだ?』


 至って普通の反応である。むしろ、これが普通のことなのだろう。

 しかし、それに対してキリシマ博士は──


『無事だったんだな』


 そう言っていた。

 一見、ライムの身を案じての言葉に思えるが……


 “なぜライムがこの島にいるのか?” 


 そのことに博士が触れることは、一度もなかったのである。

 まるで、ライムがこの島にいることを初めから知っていたかのように…………


 それこそがライムが抱いた違和感の原因だったのだ。ライムは思慮をめぐらす。



(俺の考えすぎか? 杞憂に過ぎない話ならいいんだけど……それにしても一体、キリシマ博士は元いた世界で、何をしたっていうんだ……)






第81話 “再会” 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[一言] ライムくんの考えすぎだと良いんですけどね……(震え) まだ陰謀と謎のにおいがしますね……更新楽しみにしてます!
2020/02/26 15:06 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ