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第79話「一世一代の大仕事③」

 気を失うハヤテにライムはゆっくりと近づく。そして、ライムはハヤテの上着を漁った。

 すると、上着の内側のポケットから鍵を見つける。



「あった! これかな? キリシマの牢屋の鍵ってのは」



 鍵を見つけたことで気が緩んだのか、ライムが放っていたフェニックスの力が完全に途切れた。



「あっ……」



 辺り一面は真っ暗闇に包まれる。さすがに力を使いすぎたようだ。

 これでは何も見えない。ライムとナヴィは、お互いの声だけを頼りに、コンタクトを取らざるをえない。



「これじゃ歩くだけでも大変だね。けど、力が切れたのが、ハヤテを倒してからで本当によかった……単に集中力が切れたからって問題もあるかもしれないけど」



 肩を撫で下ろすナヴィ。

 キリシマの入る先へと進みたいが、まずは気を失ったままのミサキを起こさなければ。


 手探りで壁をつたい、ライムは感覚でミサキの居場所を探った。



「寝息が聞こえるな……これかな? ミサキは。おーい! ミサキ!! 終わったよ、起きて!!」



「──う、う~ん……ん……?」



 長いこと気を失い、眠りについていたミサキが目を覚ます。



「な、なにこれ! 真っ暗じゃない!! どうなったの!? 解放軍は!? ハヤテは……!?」



 真っ暗闇のこの状況に、ミサキはパニックに陥る。

 ライムが可笑しそうに、ケラケラと笑いながら答えた。



「はは! 倒したよ! 俺とナヴィの二人でね。特に今回はナヴィが頑張ったんだ!!」



「えっ!? ナヴィちゃんが!? すごい! やるじゃない、ナヴィちゃん!!」



「へへへ……」



 ミサキは嬉しさのあまり、跳ねるようにして起き上がった。

 褒められたナヴィは照れて恥ずかしそうにしている。だが、それも暗闇でうまく隠し、ごまかせているようだ。

 ミサキは喜んだのも束の間、すかさず反省の色を見せる。



「それにしても、ごめん……ライムにナヴィちゃん。私、気失って全然戦いに参加できなくて……思えば前回のミツルギの時も、途中で離脱したわ……」



 ミサキが謝ることではない。

 ライムはミサキには感謝してるし、ミサキのシールドにいつも助けてもらってばかりだ。



「気にすることないよ! 何より全員無事が一番だ!! それさえあれば、何でもオッケーだよ!!」



 ミサキはライムの優しさに救われ、気を落ち着かせることができた。

 無事に三人揃ったところで、いよいよ本題へと移る。ライムの声色が変わった。



「それで、問題はここからだよ。牢屋の鍵は手に入れた! 行こうか、キリシマのペアのところへ!!」



「えぇ!!」



 洞窟内を誰よりもよく見ていたナヴィが、記憶を頼りに先に続く道を探る。



「あった! この細道の先だよ。二人とも、僕についてきて!!」



 暗がりの中、ナヴィの声に誘われるような形で、二人はナヴィの後を追った。

 細道はまっすぐ続いており、先へと進むと──若干の光が差し込んでくる。



「灯りが見える……もしかして着いたのか? キリシマのところに……」



 ナヴィがそのまま光のある方へと進むと、道は開けて大きい広場へと繋がった。

 そこにはいくつものロウソクが並んでおり、広場の中は照らされている。


 どうやらここが洞窟の最深部のようだ。

 これより先に道はない。行き止まりである。

 この行き止まりの地に、鉄の柵が連なり牢屋は用意されていた。中には一人の男が捕らえられている。



「──!! あれがキリシマ……!?」



 ナヴィ達は恐る恐る、男に近づいていく。


 男はうずくまり、衰弱している様子だ。

 髪や髭は伸びきり、手入れは施されていないのが分かる。

 仮にキリシマのペアとなれば、大犯罪者、指名手配犯の解放軍キリシマと同じ顔のはず……

 そのため、きっとキリシマ同様に追われる立場となっていたのだろう。


 今まで散々逃げ回っていたのだろうか?

 正直、この無精髭に、あまりに伸びきった髪の毛では、キリシマかどうか判断すらできないレベルだ。

 それほどまでに、写真と見た目が違っていた。


 ナヴィは牢屋の目の前まで近づき、その男の顔をよく見てみる。



「君が……キリシマか? いや、キリシマのペアか?」



 ナヴィの声かけに反応し、男は顔をあげた。

 いつも見回りに来る、解放軍達の声ではない……聞いたことのない別の声に耳を取られ、男もナヴィの顔を見た。



「──!! 喋るウサギ!?」



 男はナヴィの顔をじっと眺めている。

 まるで写し鏡のように、ナヴィも同じように男の顔をじっくりと眺めた。


 確かによくよく男の顔を見れば分かる。しっかりとキリシマの面影はある。

 髭を剃り、髪を整えれば、間違いなく指名手配の写真と同じ顔となるだろう。


 男はナヴィの姿を見て、何か驚いた表情を見せていたが……

 次に男の目に飛び込んできた映像が、すべてを吹きとはずほどの、強烈な衝撃を与えていた。


 それは──ナヴィの隣にいる、ライムの存在である。



「──!!! お、おまえは……ライム!! ライムじゃないか!!」





第79話 “一世一代の大仕事” 完

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