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第74話「アウェイ③」

 これ以降のライムはテンパり、だたひたすらに攻撃を避けることしかできずにいた。

 もはや思考は停止しているに等しいだろう……このままでは手も足も出ず、終わりを迎えてしまう。


 ここは冷静な判断ができる、ナヴィが助けるしかない。

 ナヴィはライムにアドバイスを送った。



「ライム! 神獣を使うんだ!! フェニックスの力で火を灯せ!!」



「そうか!! その手があったか!


(ありがとう! ナヴィ!!)」



 ライムはフェニックスの力を使った。


 すると辺りは一気に明るくなり、先程破壊されたランプの灯りとは比べ物にならないほどの強い光が放たれる。 

 ハヤテはライムの一体化した姿に驚いた。



「火の鳥!! 不死鳥・フェニックスか!!」



 実のところ、ナヴィは随分と前からフェニックスが持つ“火の力”のポテンシャルに気が付いていた。

 しかし、安易にライムに勧めることはしなかった。


 なぜなら、神獣の力は使うだけでも体力を消費するからだ。

 温存しておくに越したことはない。このギリギリのタイミングまで、ナヴィは粘って待っていたのだ。



(それにしても、この火の鳥の姿じゃ戦いづらいな……)



 フェニックスが放つ光により、何とか暗闇状態での戦闘は免れたが、これはこれで難点がある。

 この狭い洞窟内では、空羽ばたく火の鳥の姿は邪魔となってしまう。


 そこでライムは機転を利かす。

 先程のハヤテの攻撃から、ライムはあるヒントを得ていたのだ。



(ハヤテは神獣の力を使いながら、神力を放っていた。これは使えるかもしれない!)



 今までの解放軍の神獣使いは、神獣を使うときは神獣のみ。神力は神力のみと、別々に力を使っていた。

 二つの力を融合させたのはハヤテが初めてだ。


 それに習って、ライムもフェニックスの炎のみ(・・)を一体化させてみる。

 そのライムの器用さに、ハヤテも敵ながら褒め称えた。



「──こ、これは……“部分一体化”!! やりますね、坊っちゃん!」



 火の鳥とならずとも、人の姿のままに一部のみ(・・・・)を一体化させる。

 ライムの体は炎に包まれた。これなら洞窟内でも動けるし、神力も使える。


 メリットはそれだけではない。

 ハヤテは更に付け加える。


「しかもこれなら、大幅に神獣の力を使わずに済む……体力の消耗は減らせるはずだ。素晴らしい案です! ですが……」



 随分とハヤテはライムを褒めちぎったが、それでもハヤテは白い歯を溢す。



「フェニックスだろうが、部分一体化だろうが、そんなもの関係ない……所詮、あなたは私のスピードについてこれないのだから!!」



 そう、これでは単に振り出しに戻っただけだ。

 自分のスピードに自信を持つハヤテは、どこまでも強気に出る。

 

 ハヤテは再び壁を蹴り、速度をあげながら洞窟内を飛び回った。

 必殺技の“疾風迅雷”をお見舞いするつもりだ。ライムはハヤテを迎え撃つ。



(そうなんだよな……これじゃ解決にはならない。けど、どんなに速かろうが、俺に近づかなきゃヤツは攻撃できない! 近づいたところを撃ち抜いてやる!!)



 ライムが力を溜め始めたことにハヤテは気づいた。

 だが、自信満々のハヤテは、そんなことはお構い無し。そのままの勢いでライムに突っ込む。



「くらうがいい! 疾風迅雷!!」



 ライムは目を凝らして、迫り来るハヤテの動きをじっと見ている。


 すると、先程はまるでスピードについていけなかったはずなのに、なぜだか今度は、しっかりとライムの目にハヤテの姿が映っていた。



「見えた!! “フェニックス バースト”!!」



 またしてもここでライムは神力と神獣の力を融合させ、炎を纏ったレーザー光線を放つ。


 自分の姿が捕らえられるわけはないと踏んでいたハヤテは、狙いすまされたライムの攻撃に慌てふためいた。

 急遽地面を蹴って、進行方向を無理矢理変更しようとするも、そのスピードが仇となり、すでにライムとの距離はかなり近い。

 完全には逃げ切ることができず、ハヤテの左肩をレーザー光線が貫いた。



「ぐわっっ!!


(な、なぜだ……? 私の動きについてきた!?)」



 この一撃で、ハヤテは左肩を負傷する。

 しかし、緊急事態においても、さすがのハヤテだ。

 咄嗟の判断で右方向へと飛び、被弾したものの利き腕の右腕だけは、しっかりと守っている。


 正直、ライム本人も自分がハヤテのスピードに対応できたことに驚いていた。

 その理由を考えるも、すぐさまライムにその答えが見つかる。



「──そうか!! これだけ明るく、視界が晴れれば……俺はおまえの動きについていける!!」



 ランプのぼんやりとした灯りのみの時と、今のフェニックスが照らす燃え盛る炎の光では、見え方に天と地ほどの差がある。


 ライムに笑みが溢れた。

 ほんの僅かではあるが、勝利の兆しが見え始めていた。



「散々いたぶってくれたからな……反撃はこれからだぜ! 解放軍!!」






第74話 “アウェイ” 完

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