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第72話「アウェイ①」

 解放軍ハヤテの神力・クローによる攻撃と、驚異的なスピードにライム達は苦戦をしいられていた。


 キリシマ信者のハヤテは、ライムがキリシマの息子であることを知るが、それでもハヤテとの戦いは避けることはできない。

 むしろハヤテは一段とやる気を増している。



「さぁ、今すぐ私がキリシマ様のところへ連れて行ってあげますよ! 大人しくしていれば、痛い目見ずに済みますよ。坊っちゃん!!」



「坊っちゃんって……バカにしやがって!!」



 決してハヤテはライムをバカにしたわけではなかったが、滑稽な呼び方にライムは見下されている気分だった。


 ハヤテはターゲットをミサキに変更する。厄介な盾の能力を先に潰すつもりだ。


 ハヤテが超スピードでミサキに向かう。

 ミサキはいつでもバリアを張れるよう、集中力を高めた。



「ライムを守るんじゃなくて、私自身なら……いくらあんたのスピードが速くても何てことはないわ!!」



 ライムを守るには、ミサキが相手の攻撃よりも先にライムの前に立つ必要がある。

 その場合、難易度は高まるが、自分の身を守るだけならミサキにもできるはずだ。


 唯一の灯りはナヴィが持っているランプのみ。洞窟内の視界は随分と悪い。

 ミサキは目を離すまいと、ハヤテを必死に目で追い続けた。

 いくら暗いと言えど、ハヤテを見失うわけがない……なのにも関わらず、ハヤテはミサキの目の前で、突如として姿を消した。



「──!!! 消えた!? 一体どこに……」



 ミサキがハヤテを見失っていると、後方から『スタッ』と足音が聞こえる。

 消えたはずのハヤテが、一瞬にしてミサキの背後へと回っていたのだ。



「ミサキ!! 後ろだ!!」



 ライムがハヤテの居場所に気付き、ミサキに伝えるも──



 時すでに遅し。


 ハヤテは何かの“神獣”に姿を変え、大きな口を開けて、がぶりとミサキの首もとを噛みついた。



「な、なんだ!!?」



 ライムがハヤテの変貌に驚いていると、次の瞬間には、ミサキが地面にうつ伏せで倒れ込んでいる。



「ミサキーーー!!! くそっ、なんだ今のは……

何の神獣なんだ!?」



 ハヤテが、じゅるりと口元を舐め回す。

 満足気な表情でライムに言った。



「あー美味しかった。やはり若い女の“血”はうまい。何の神獣かって? キリシマ様のお子さんだ。 特別に教えてあげましょう……


 神獣・“ヴァンパイア”です!!」






 カコイマミライ

~時を刻まない島~


第72話

 “アウェイ”






 神獣・ヴァンパイア

 別名、吸血鬼とも呼ばれている。


 姿はコウモリに似ており、翼を生やす。

 人間の血を好物とし、噛みついて血を吸い尽くす。



 ライムは倒れたミサキを介抱し、すぐさまハヤテから遠ざけた。

 意識のないミサキに大声で呼び掛ける。



「ミサキ!! 大丈夫か!? しっかりしろ! ミサキ!!」


 

 しかし、ミサキは一向に返事をすることはない。

 ライムの頭に不安がよぎるが、ハヤテはその不安を簡単に払拭させた。



「案ずるな。死んではいない。大量の血を頂いたからな……気を失ってるだけですよ!」



 そう言われてライムも思い出す。

 考えてみれば、ミサキは異界人。もし死んでしまったのならば、肉体は消えるはずだ。


 ライム達は一度、異界人が死に、消える瞬間を目の当たりにしている。

 それをすっかり忘れてしまうほどに、ライムは取り乱していた。



(無事ならよかったが……これではミサキは戦うことはできない……俺一人で、やらなくちゃならない)



 ミサキの命に別状はないものの、ライムは一段と不利な状況へと追い込まれる。

 ただでさえ苦戦をしいられていただけに、早々のミサキの戦線離脱は痛い。


 残すはライムとナヴィだけとなり、ハヤテは早くも勝利宣言だ。



「あとは坊っちゃんのみ。あのお嬢ちゃんのように、最後はヴァンパイアで血を吸い尽くしてあげますからね! キリシマ様の息子の血……どんな味か気になるなぁ……」



 もはやナヴィは、戦力として数えられてすらいない。その油断にライムが付け込めるかどうか。

 ライムは沈む気持ちをすぐに切り替え、ハヤテの神獣対策に取り組んだ。


 神獣の正体は明らかになったわけだが、それでもライムにはハヤテが突如として、ミサキの目の前から消えた理由が分からなかった。まずはここから解明していかねばならない。



「さっきおまえは何をした!? 一瞬にして、姿を消した……ヴァンパイアの能力に、一体何の関係が……」




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