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第71話「苦戦②」

 ハヤテの神力・クロー


 これでハヤテの神力が分かった。あとは神獣だ。

 神獣使いかどうかはまだ定かでないが、恐らく神獣を使いこなしてくるだろう。

 そう考えて、戦いに臨んだ方がいい。


 再びハヤテはライムに攻撃を仕掛けるために、

自慢の脚力で洞窟内を飛び回っている。

 ライムを翻弄していた。



(くそっ……こうちょこまか動かれると、狙いが定まらない……近づいてきたところを狙うしか手はないのか!?)



 ライムの神力・ガンは一撃は強力だが、力は真っ直ぐに放たれる。

 そのライムの性格にも似た、正直な軌道は読みやすく、素早い相手のハヤテには相性が悪かった。

 

 ただでさえ得意技を封じられていたライムであるのに、更に悪い展開へとなっていく。

 敵から見てもライムが焦っているのが分かる。それほどまでに明らかだった。



「さっきまでの威勢はどうした? 私のスピードについていけていないようですね!! 私がおまえを──解放してやる!!」



 ハヤテは瞬時にライムの後ろをとった。

 それに気づいたナヴィが声を張り上げる。



「ライム!! 後ろだ!!」



 ナヴィの声に反応し、慌ててライムも振り返るも、どうやら間に合いそうにもない。

 ライムは神力・クローの強烈な一撃をもらうと思われたが……


 こちらには頼もしい味方がもう一人いることを、忘れてはならない。



「ミサキ!!」



 ミサキが神力・シールドでライムの背後を守っていたのだ。

 計算外の出来事に、ハヤテは舌打ちする。



「チッ……お嬢ちゃんも神力使いでしたか。侮った!! 次はそれも計算に入れて攻撃しなければ」



 先程のハヤテの攻撃、完全にライムは隙をつかれていた。

 ミサキが守っていなければ、危なかっただろう。



「助かったよ! ミサキ。いつもミサキには助けてもらってばっかりだ!」



「礼はいらないんだけどさ。悪いんだけど今のスピードで私、限界かも……これ以上スピードが上がると、目がついていかない……」



 滅多に弱音を吐かないミサキが、珍しく弱音を吐いた。

 ミサキは今の速さで精一杯……まだハヤテは余力を残しているように思える。

 恐らくまだスピードは上がるだろう。


 ミサキの盾がある前提で、ライムが戦っても困る……そうミサキは考えたのかもしれない。


 ライムの翻弄される姿と、今のミサキの言葉がナヴィの耳に入る。

 二人が苦戦をしいられている……


 ここは奥の手を使うしかない。



 実はナヴィにはハヤテを倒すための、とっておきの案がひとつあったのだ。

 それは苦肉の策に過ぎないかもしれないが、ここは使わざるをえないだろう……



(あまりこれはやりたくなかったけど……仕方ない! そうも言ってられないしな)



 ハヤテは超スピードを駆使し、また攻撃態勢に入る。

 このままでは先程の二の舞だ。

 ナヴィは攻撃を阻止すべく、ハヤテに声をかけた。



「手出しはやめるんだ! ハヤテ!! 一体誰を相手にしてると思ってるんだ? これ以上、危害は加えないことだね!」



 意味深な発言に、思わずハヤテは足を止める。



「──何? どういうことだ!?」



 なんとなくナヴィの言いたいことを察したライム……

 しかし、ライムはナヴィのやり口に疑問を抱いた。



(ナヴィ……? おまえ、もしかして……)



 足を止めたハヤテに対し、ナヴィは真実を告げる。



「今、君が相手してるいる男は、君が尊敬する人物……キリシマの実の息子だぞ!!」



「な、なにっ!!? そんなバカな……」



 ハヤテは驚いたが、ナヴィの言うことを信じきれていない様子だ。

 むしろ、普通に考えて信じる方のが難しいのかもしれない。



「あなた……嘘ついて私を騙すんじゃないでしょうね? 嘘だとしたら、承知しませんよ!!」



 あまり気分はいいものではなかったが、ライムはナヴィに口を合わせた。



「嘘なんかじゃない。俺の名前は “キリシマ ライム” あのキリシマの息子さ」



 どうせ嘘に決まっている……


 そうハヤテは考えたが、言われてみればどことなくライムがキリシマに似ていることに気づく。


 まさか──これは本当の話なのか!?


 疑いが晴れることは決してなかったが、万が一事実だとしたら、大変なことである……

 

 ハヤテはその万が一に備え、ライムに対して

突然下手に出た。

 片膝をついてしゃがみこみ、ライムに頭を下げる。



「これはこれは……大変失礼しました! まさかキリシマ様に子供がいたとは。今になって思えば、キリシマ様の面影がある……顔が似ていますね!」



 ハヤテの急変にライムは戸惑う。

 ナヴィの思惑通りに、事は進むかに思えたが……

 そう簡単に、このハヤテの思考は読めるものではない。



「そうとも知らず、大変な過ちを起こすとこでした。キリシマ様の息子を解放するわけにはいかない……ですから──」



 顔を伏せていたハヤテは顔をあげ、ライムを見てニッコリと笑った。



「──生け捕りにしなくては!!

 キリシマ様のペアと同じ牢屋にぶち込んであげましょう!! きっとキリシマ様も喜ぶことだ!!」



 どうもこの男の思考は分からない……


 ナヴィの悪知恵は不発に終わった。



(結局こうなってしまうのか……キリシマの息子と知れば、ハヤテは手出しできなくなると思ったが……無駄にライムの存在を明らかにするだけだった)



 どうやらハヤテとの戦いは避けることはできないようだ。

 最初の状況と、何ら変わりはない。


 未だハヤテの神獣の能力も分からぬまま、苦戦をしいられ、早くもライム達は追い込まれてしまっていた。






第71話 “苦戦” 完

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