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第67話「成長①」

 ライムはキリシマが連れ去られた居場所を入手する。



「ナヴィ! キリシマの居場所は掴めた!! どうする? 元々は時の塔へ行くって話だったよな!?」



 寝起きだったナヴィの顔つきが、キリッとした表情へと変わった。 



「いや……後回しでいい。行こう!! キリシマがいるところへ!!」







 カコイマミライ

~時を刻まない島~


第67話

 “成長”






 キリシマの居場所は、アーサイ村を出て道なりにあると言われている

 

 “アスカルタ洞窟”


 急遽ライム達は行き先を変更し、急ぎ足で向かう。



 キリシマの部下、オオヤマが言っていた噂は、どうやら本物だったようだ。

 思い返せば、幽霊屋敷の神獣の噂話も本物であったし、噂と言えどバカにできない。


 この島では、元いた世界のようにテレビやネットといった情報源を得るものがない。

 すべては人の話で繋がる。信憑性の高いものは多いようだ。そのことにライムも薄々気づき始める。



「オオヤマさんが言ってた、キリシマが近くにいるって話……本当だったね! 正直、信じられないことだけど……」



 そうは言っても、まだライムも完全に信じたわけではない。

 自分の目で確かめなければ、確証は持てない。ミサキもそれは同じであった。



「けど、おかしな話なのよね……仮にその洞窟に本物のキリシマのペアがいるのだとしたら……

 どうして解放軍はキリシマのペアを捕らえる必要があるのかしら?」



 ミサキの意見を聞いて、ナヴィにも疑問符が浮かびあがる。



「それもそうだね……解放軍キリシマは、元の世界に戻るためにペアを探してるはず……

 だとしたら捕まえたりせず、そのまま消してしまえばいいんだ。


 まさかペアじゃなくて、キリシマ本人が捕まったのか?」



 ナヴィの仮説が当たってるとは思えない。

 ライムは軽く否定した。



「そんなバカな……そっちのが可能性低いんじゃないか?

 ペアを捕まえた後に、消すつもりなのか? いずれにせよ、急いだ方がいいよな!」



「今は考えても結論は分からない……とにかく急いで洞窟へと向かおう!

 キリシマ本人だろうが、ペアだろうがあのキリシマには変わりはない! ライム、用心するんだよ!!」



「あぁ! そのまえに解放軍もいるしな。気を引き締めていこう!!」



 ライムは一段と身構え、緊張感を高めるが

気がかりな点がもうひとつ……



(記憶にはないけど……この先に親父がいるかもしれないんだ……

 親父は俺を見たら、一体どんな反応をするんだろうか?)



 父は息子を見て何を思う……

 ライムにはまた別の緊張感が漂っていた。


 様々な思いを抱え、うまく気持ちの整理ができないままに、問題の場所

 “アスカルタ洞窟” へと一同はたどり着く。



 中はじめじめとした湿気と、漆黒の闇で覆いつくされている。


 光を一切通さないため、洞窟内はどんな作りになっているのか? どれほどの長さがあるのか?


 それらはまったくもって見当がつかない。



「奥が全然見えないな……ナヴィ。ランプをつけてくれ」



 ナヴィはランプの明かりを灯した。

 少しだけ洞窟の中が見える。足場はデコボコでかなり段差が激しい。


 また、下だけでなく、鍾乳石と呼ばれるつらら状のものが天井にいくつも連なり、天井や横の壁、洞窟内のすべてに凹凸がある。


 これぞまさに天然で出来た洞窟といったところだろう。

 これだと先に進むだけで体力を消耗してしまいそうだ。



「こんなところに解放軍がいるのか? 随分険しい道のりだ……」



 ナヴィが先頭を切って、灯りを照らしながら少しずつ進んでいく。

 ミサキは二人の後をついていくので精一杯だ。



「ちょっと待って……早いよ。二人とも……」



 女性のミサキには少々過酷かもしれない。


 一見、体の小さなナヴィも厳しい環境かとも思えるが、得意のジャンプで足場をピョンピョンと跳ねて渡っている。中々の身のこなしだ。


 どんどん先へと進むナヴィに対し、ライムは前だけでなくミサキを置いてかないように、後ろにも目を配りながら歩いていた。



「大丈夫かミサキ? おい、ナヴィ! あんまり先へ進むと灯りがなくなってミサキが見えなくなるぞ!」



 ランプの灯りは決して強いものではない。

 少し離れてしまうだけで、光は届かなくなってしまう。


 ライムがミサキを気遣い、後ろを向こうとした──その瞬間

 

 足下にあった大きな段差に足を引っ掛け、バランスを崩して前のめりで転倒した。


ドシーン!! と、地響きが洞窟の中を反射するようにこだまする。

 静かな洞窟内では、それが爆音のように響き渡った。



「大丈夫? ライム。ごめん、私が遅いばっかりに……」



 寝転ぶライムにミサキは手を差し伸べ、引っ張って体を起こす。

 ライムは土埃をはたき、ミサキの手を借りながら起き上がった。



「全然大丈夫だよ! こっちこそごめん! ちょっとよそ見して、足を滑らせただけだ……」



 ただ転んだだけで、怪我などなく大したことはなかったのだが……


 心配しなければならなかったのは、ライムの体の方ではなかったようだ。



「なんだ!? 今の音は?」



「誰か洞窟内にいるのか!? 侵入者だ!!」



 洞窟の先から声が聞こえてきた。解放軍だ。




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