第54話「場馴れ①」
すでに体力を大幅に消費しているライムは、一気に決着をつけるために勝負に出た。
(こうなったら──神獣・フェニックスの力を使うしかない!!)
カコイマミライ
~時を刻まない島~
第54話
“場馴れ”
ライムは一発逆転に望みを賭け、フェニックスの力を解き放つつもりだ。
すかさずその準備を始めるが……
(あれっ? どうやって使うの? 神獣って……?)
使い方がライムには分からない。
神獣と一体化したはいいものの、今までライムの体には何の変化すらなく、これといったやり方が見えてこなかった。
ライムが神獣の使い方に手こずっていると、苛立ちを見せていたミツルギに、ある名案が浮かんでいた。
「そうだ! この隠れる場所を全部なくしちまえばいいんじゃねぇか!! 邪魔な草は、俺の神力ですべて刈ってやる!!」
ミツルギは両手に神力・ソードを宿した。
その力で腰丈まで伸びている、高さのある草を刈り始める。
「ははは! 簡単な話だったじゃねぇか! 手間とらせやがって!! もうこれで隠れられないからな!!」
もの凄いペースで草は刈られ、ライムにどんどん隠れるスペースはなくなっていく。
そして、ついにミツルギはライムの姿を捕らえた。
「──見つけたぜ!! キリシマ!!」
(ま、まずい……!!)
見つかったライムは背を向けて慌てて逃げ出した。
ミツルギは草を刈っていた両手のソードを、そのままライムに向ける。
「させないわ!!!」
完全無防備のライムに、ソードが直撃するかと思われたその瞬間──
ミサキがライムの前に立ち、神力・シールドのバリアでライムの身を守った。
「またてめぇか、この女!! 言っただろ!? 邪魔するなとな!!」
ミツルギは声を荒らげ、怒号を飛ばすも物怖じせず、堂々とした立ち振るまいでミサキは言い返した。
「私だって言ったわよね!? ライムに手出しはさせないって!!」
実を言うと、ミツルギはこれでも内心、未だかつてないほどに我慢をしていたのだ。
先程ミサキに言われた言葉が心に響き、本気で改心しようと思っていた。
『無駄な命は奪わない』
人殺しはキリシマと同罪
自分が憎きキリシマと同じ人間へと成り下がってしまう……
それだけはやめようと、心に誓っていたのだ。
しかし、その誓いも虚しく、破られようとしている……
「俺の狙いはキリシマだ! 女は関係ねぇと思っていたが……やはりキリシマの仲間は、キリシマと同じ──殺すべき存在のようだな!!」
ミツルギの目がすわり、血走っている……
ミサキをライムを見るのと同じような、あの“赤い目”で睨み付けた。
そしてとうとうミツルギは、ミサキに手を出す。
両手のソードを、ミサキの体目掛けて斬りつけたのだ。
「──私に攻撃を!! いいわ。受けて立つわよ!!」
ミサキはバリアの強度をあげた。
何度も何度もミツルギはバリアの上から斬りつけるが、バリアは破壊されることなく、びくともしていない。
完全にシールドの力がソードを上回っている。
「俺の神力は通用してないようだな……だったらこれならどうだ?
“ケルベロス”!!!」
神力が効かないと悟ったミツルギは、神獣・ケルベロスの力を使った。
ミサキの目には、目の前にいたミツルギが、狂暴な三つ首の黒い犬、あるいは狼のような──いずれにせよ恐ろしい生き物へと変化して映し出されていた。
鋭いキバが襲いかかる。
ミサキのバリアを三つ首の猛獣が一斉に噛み砕く。
すると……
「う、うそでしょ? 私のバリアが……!!」
ピシッ!! と、音を立てバリアにヒビが入った。
ヒビだけで済めばよかったが、ヒビが入ってからはもう脆い。
バリアは粉々に砕かれ、ケルベロスのキバはミサキの体まで到達した。
「きゃーーーっ!!!」
ミサキの悲鳴が響渡る。
血しぶきをあげたまま、ミサキは地面に倒れこんだ。
「ミサキーー!!!」




