第52話「最善策①」
ライムはずっと心の中に思い留めていた悩みを、ナヴィ達にぶちまけた。
「俺は──もうこの世にいない方がいいんじゃないか?
そうすればキリシマは元の世界に戻り、この島から消える……それが一番平和なんじゃないかって……」
ライムの目からは涙が溢れ落ちる。
ナヴィは人一倍責任を感じていた。
(ごめん、ライム……僕が気づけなくて、ずっと一人にさせ続け、ごめんよ……ライム……)
カコイマミライ
~時を刻まない島~
第52話
“最善策”
ナヴィは泣きながら意気消沈するライムに、優しく声をかける。
「ライム、ごめんよ。ずっと君が悩んでいることに気づいてあげれなくて……でもライム! 死ぬなんてこと考えちゃだめだ!!」
「なんでだよ……そりゃ俺だって死にたくないよ。けど、それが一番平和になる方法だろ……?」
ナヴィは強く首を横に降った。
「そんなことはない。確かに君が消えれば、キリシマもこの島からは消える……でももう残念ながら手遅れなんだ……
ライムと一緒に旅をして、改めて分かった。僕が思っていた想像よりも、キリシマの解放の意志は、すでに島中に行き渡っている……
これでは、キリシマが消えたところで解決には至らない。きっと新たにまた、別の解放軍の者がトップに立つだけだ!」
「じゃあどうすればいいんだよ!! もう手遅れなら、どうしようもないじゃないか!!」
「それは正直のところ今は分からない……だから、これから最善の策を見つけていくしかないんだ! あと理由はそれだけじゃないよ!」
涙を流すライムの目を、じっと見てナヴィは言った。
「ライムが死んだら僕は寂しいよ! これは時の支配者としてではなく、僕個人の素直な気持ちだ。ライムに死んでほしくない!!」
「ナヴィ……」
ナヴィに続くようにミサキも思いを伝える。
「私もライムが死んでしまったら悲しいわ。せっかくいい仲間に会えたのに……死ぬなんて寂しいこと言わないでよ!!」
「ミサキまで……」
感動の瞬間に水を差すように、置いてけぼりをくらっていたミツルギが話に割って入った。
「お涙頂戴の中、悪いけどよ……もうこっちはうずうずしてんだ。そんなに死にてぇなら、今すぐ俺がおまえを殺してやるよ!!」
我慢の限界を迎えていたミツルギは、ライムに向かって飛びかかった。
ライムはすでに死を覚悟しているのか、目を瞑り、下を向いたままだ。
「ライム!! 早まっちゃだめだ!! これからも僕達といっしょに旅を続けよう!!」
目を瞑るライムにナヴィの叫び声が聞こえる。
ライムの悩みは完全に消えることはなかったが……
二人の生きて欲しいと願う思い
ライムは本当に嬉しかった。
(ありがとう。二人とも……俺はいなくなった方がいい存在だと思ってた。
俺、生きててもいいのかな……? どの選択が一番いいのかはまだ分からないけど……
俺は──俺は──)
ミツルギがライムの目の前に迫る直前
二人の思いが届いたのか、ライムは目をカッと見開いた。
そして、すぐさま銃口をミツルギに向けた。
(まだ生きていたい!! ナヴィとミサキと、まだ一緒に旅を続けていたい!!)
突然、銃口を向けられたミツルギは、身の危険を感じ、一度下がる。
「神力か!?」
ライムは神力・ガンの力をミツルギ目掛けて放った。
慌ててミツルギも神力で対抗する。
レーザービームのように放れたガンの力を、ミツルギは右手を水平にチョップするようにして横に切った。
キン!! と、金属音のような高音が鳴り響き、ガンの力はミツルギに当たらず跳ね返され
明後日の方角へと飛び、ドンと音を立てて屋敷内の天井に激突した。
ライム、ミツルギの両者がお互いの神力を探りあっている。
(俺のガンが跳ね返された? 今のは神力!?)
(銃の神力か!? 遠距離タイプか)
そのまま死を受け入れるのではないかと不安視していたナヴィが、ライムに駆け寄る。
「よかった! ライム!! そのまま目を瞑ったままかと思ったよ!」
ライムは涙を服の袖で拭いて、笑ってみせた。
「悪いな、ナヴィ! 心配かけた! まだ決めつけるのは早かったみたいだ。俺が今ここで死ぬことが最善策かは分からない……
だから──よく考えてみるよ。これからのこと!」
ナヴィも満面の笑顔で言葉を返す。
「うん! そうするといいよ!! きっとそれ以外にもっといい方法があるはずだ! これから一緒に最善策を探していこう!!」




