第47話「信頼関係①」
神獣・フェニックスは空高く舞いあがる。
勢いをつけて、再びライムに突撃するつもりだ。
ライムは両手に神力を溜め、二つの銃口を構えた。
(来いよ……今度は逃げずに撃ってやる! 俺の持ってる力、全部ぶつけてやるんだ!!)
カコイマミライ
~時を刻まない島~
第47話
“信頼関係”
フェニックスは纏う炎の火力をあげながら、ライムめがけて猛スピードで突っ込んだ。
まともに突撃をくらうのならば、ひとたまりもないだろう。
思わずナヴィとミサキは目を瞑り、激突の瞬間を直視することはできなかった。
「ライム……危ない!!」
そんな心配する二人をよそに、ライムは真っ向勝負に出る。
己の力をライムは信じ、神力・ガンで立ち向かった。
(来る!! 俺の力なら──行ける!!)
ライムは声を張り上げながら、最大限に溜めた二つの力を解き放った。
「くらえ!! フェニックス!!
リミット・バースト……“ダブル”!!!」
ライムの大声とほぼ同時に
ドコーーン!!! と、壁に衝突する大きな音が響き渡った。
ナヴィとミサキは、ライムの無事を確かめるべく、恐る恐る目を開ける。
するとそこには……
「はぁ……はぁ……」
息を荒らしながらも、しっかりと立っているライムの姿があった。
「ライム!! 無事だったのね!! フェニックスは?」
ミサキはライムにフェニックスの居場所を尋ねるも、ライムはただ一点をひたすら見つめている。
その目線の先にはフェニックスの姿があり、ゆっくりと地上へ舞い降りて来ていたのだ。
「我の敗けだ……認めよう。貴様の力を」
フェニックスの敗北宣言。
ナヴィとミサキは歓喜し、ライムに駆け寄った。
「やったね! ライム!!」
喜ぶ二人に対し、どうもライムの顔はすっきりとしていない。険しい表情を見せている。
「どうしてだ……まだ勝負はついてなかったはずだ!」
「えっ……?」
ミサキはポカンと口を開ける。
肝心の勝負の結末を、ミサキは目を瞑り見ていない。
てっきりライムの攻撃でフェニックスが敗れたかと思っていたが……
よくよく考えれば、ドカンと壁に直撃した音が響いていた。
ライムの攻撃は、フェニックスに当たらず外れていた……?
ライムが、その瞬間の状況を説明する。
「俺の攻撃をくらう直前──フェニックスは急遽進行方向を変え、俺の攻撃をよけた。当たっちゃいない……なのに、なぜ負けたと?」
ライムは納得がいかなかった。
勝てたことを喜びたいが、これでは後味が悪い。
フェニックスはそっぽを向いて答えた。
「貴様は正直な男だな。そのまま勝ちを手にすればいいものを……」
フェニックスは少し黙り、再び振り返る。
そして今度はライムの方を向いて、脳内に声を届けた。
「力を託したくなったのだ。貴様のような男に」
「俺に……?」
「そうだ。この屋敷の住人は珍しい男でな。我を見かけたものは皆、力を求む。だが、ヤツは我の力を拒んだ」
フェニックスは自分が、この屋敷に来た経緯を語り始める。
まるで人間と話すのと同じような感覚に、ライムは少し違和感を覚えた。
神獣をどこか神格化し、神々しいものと思っていたが、神獣とて同じ生命を持つ生き物。
自分達人間や、他の動物達と何ら変わりはないのだ。
「我の研究をしたいとヤツは言うのでな。物珍しい人間に興味を示し、この屋敷の地下へとやって来たのだ」
ナヴィが今一度辺りを見渡し、この地下室の出来の良さを絶賛する。
「研究熱心な人だったんだね。ストレスを与えないように、空を飛べる高さをしっかりと作ってある。また、壁はとても頑丈だ。
本当によく作られてると思うよ! この地下室は」
「あぁ、ヤツは異界人。
『必ずこの研究成果を元の世界に持ち帰るんだ』と、研究に勤しんでいた。
しかし……我の存在を聞き付け、“解放軍”と名乗る者達が、この地下室へと押し寄せてきたのだ!!」
「解放軍!!」
「そして……その解放軍とやらに──ヤツは殺された」
ライムの顔が一気に青ざめる。
「そ、そんな……どうして……」
「我を守ろうとしたんだ。別に我は、己の身など守れるのだがな……余計な真似を……
それからは解放軍と名乗る、我の力を欲する惨めな者しか現れない。だから我は容赦なく、そいつらを葬りさってきた!」




