第46話「力の証明②」
この頑丈すぎる壁
そして、異常なまでに深く作られた地下室
ナヴィはこの地下室の作られた意味を理解した。
「なるほど。まさにこの部屋はフェニックスのために作られたってわけか!
自由に飛べるように高さはあり、壁はフェニックスの攻撃では簡単に壊れないように頑丈に……すべてが計算つくされている!!」
危うく生き埋めになるところを逃れ、ライムは胸を撫で下ろすも、高く舞い上がっていたフェニックスは、空中で何やら怪しい動きを始めている。
危険を察知したミサキが、ライムの前に立ち、神力・シールドを使った。
「攻撃が来るわよ! ライムとナヴィちゃんは私の後ろに隠れて!!」
フェニックスは口から球状の形をした炎を吐いた。
ミサキはバリアを張り、身を守る。
「やっぱり! おかしな動きをしてると思ったわ!」
ミサキの素早い判断が功を奏す。完璧にバリアで攻撃を防いでいた。
しかし、まだフェニックスの攻撃は終わらない。
もう一度フェニックスは火の球を吐き出している。
「何度も同じ手はくらわないわ! 逆にくらいなさい! “リフレクト”!!」
今度はミサキは相手の攻撃を利用し、火の球を反射で跳ね返した。
リフレクトによるミサキの反撃は、見事、フェニックスに的中する。
「やった!!」
だが──フェニックスは火の球の攻撃を受けても、一切ダメージはないようだ。
「自らの炎でやられるほど愚かではない。愚かな人間よ……貴様達も我の炎の灰になるがいい!!」
(貴様達も……?)
ナヴィがフェニックスの言葉に引っ掛かるも、すぐにその言葉の意味を解明する。
「やはりそういうことか……幽霊屋敷から人が帰ってこないってライム言ってたよね。その理由もこれで分かったよ! みんな殺されたんだ……この神獣に!!」
ライムは体を震わせ、より一層身を構えた。
「なんだって!? なんで神獣がそんなことまで。何も殺すことはないじゃないか…!」
人の言葉を完璧に理解し、会話が成立する神獣。
その見た目こそ様々だが、知能指数は高いことがうかがえる。
そんな存在が、なぜ簡単に人を殺めようとするのか……
ライムはそれが疑問で仕方なかった。
フェニックスは言葉を返す。
「皆、我の力を欲するからだ。我は貴様ら人間の玩具じゃない。我には我の、意志がある!!」
「じゃあ、どうすればいいんだ……どうすれば力を貸してくれる?」
「我に勝ってみせよ! 我に貴様の力を示してみせよ!!」
ライムにはフェニックスの言う言葉が矛盾しているように思えた。
力を求める事を嫌うくせに、力を示してみせろとは──どうも辻褄が合わない。
とても理解できない状況であったが、話し合いでの解決が見込めないと悟り、ライムは腹をくくる。
「よく言ってる意味が分かんないけど……そんなに見せてほしいなら、見せてやるよ!! 俺の力を!!」
ライムがミサキのバリアから離れ、力を溜め始めた。
「ライム!! 無茶しないで!!」
ミサキの呼び掛けにも応じず、ライムは攻めに転じる。
ライムには前回の解放軍・レオナとの戦いで、十分に分かっていた。
(ミサキは俺を守ってくるけど……攻めるのは俺しかいない。俺がやるしかないんだ!! そんなに力を示せってんなら、見せつけてやるさ!!)
ライムがフェニックスに狙いを定める。
覚えたばかりの左手も使い、両撃ちを試みた。
(こっちの力も溜めて、ここは一気にカタをつける!!)
ライムは火の球に警戒しながら力を溜めている。
すると、フェニックスは猛スピードで急下降を始めた。
次の打つ手を読んだナヴィが、ライムに注意を促す。
「ライム! 向かってくるつもりだよ!! 気を付けて!!」
フェニックスは羽を閉じて、矢のような速さで炎を燃やしながらライムに突進した。
不意をつかれたライムであったが、ナヴィの声かけのおかけで、かろうじて突進を回避する。
しかし、僅かに触れていたのか、ライムの服は燃え始め、体は炎に包まれた。
「あっち! 熱っつ!! か、かすってたのか」
燃えるライムを見たミサキが、急いでライムの前まで走る。
ため息混じりに、やれやれといった様子で、ミサキは神獣・マーメイドの力を使った。
「もう──言わんこっちゃないんだから。まぁ、これぐらいならなんとか……“マーメイド・スプラッシュ”」
ミサキが手をかざすと、手のひらから、ちょろちょろっと水が流れ出た。
燃え続けるライムの体の炎は、みるみるうちに消え始め、完全に消火する。
どうやら多少の火傷をした程度の傷で済んだようだ。
ミサキの手から水が放たれたのを見たライムに、ひとつの案が浮かぶ。
「助かった。ありがとうミサキ。そう言えば、そんな能力もあったんだったな! その力があるならどうだ? フェニックスの火の力に対抗できないかな?」
ライムの提案も、ミサキは首を横に振る。
「私ができる程度は、今の消火が精一杯。あれほどの大きな火の力では、太刀打ちできないわ……」
やはりライム自身が決めるしかない。
危険を顧みながらも、攻めなければだめだ。
あと少し回避が遅れれば、ライムは丸焦げになっていたに違いない……
フェニックスがライムに語りかける。
「なぜそこまでして力を求む? 一歩間違えば、貴様は先程、我の炎の餌食となっていた。命がけでなぜ我に挑んでくるのだ?」
ライムはフェニックスの顔をしっかりと見て、強い意思をもって答えた。
「どうしても力が必要なんだ。解放軍を倒すには、神獣の力が!! だから俺はおまえを倒して、その力を貸してもらう!!」
「そうか……ならば……証明してみせよ! 己の力を!!」
フェニックスはまた空高く舞い上がった。
先程のように、勢いをつけてライムに突進してくるつもりだ。
ライムは二つの銃口を構えた。
(来いよ……今度は逃げずに撃ってやる!! 俺の持ってる力、全部ぶつけてやるんだ!!)
第46話 “力の証明” 完




