第45話「力の証明①」
謎の風の音が屋敷内から聞こえる……
瓦礫の下が怪しい。
ナヴィに言われるがままに、ライムは神力で瓦礫を壊すと、そこには隠された地下通路が現れた。
「こんなところに階段が! 地下室でもあるのか? やるじゃないか!ナヴィ!」
地下から舞い上がる風の音を、ナヴィは決して聞き逃さなかった。
「なんだろ。この風……妙に生暖かい……」
謎に包まれる地下室。
今こそ形なき廃墟と化しているが、これだけの豪邸だ。
高価なものが隠されている可能性もある。
ライムは自然と胸が踊る。
「お宝が隠されたりしてね! よし、降りていってみよう!」
三人は階段を降りて地下へと進むが、中はとても薄暗く、足下がよく見えない。
ナヴィがランプを取りだし、灯りをつけながらゆっくりと降り始めた。
コツコツと、三人の階段を降りる足音だけが響き渡る。
中々すぐに下へはたどり着かず、随分と底は深い。
ただでさえ幽霊屋敷にびびっていたミサキは、弱音を吐いた。
「ねぇ……どこまで続くんだろ。この階段……私、そろそろ戻りたくなってきちゃったよ……」
少年の心を取り戻したかのように、ワクワク感を味わっていたライムは、冷たく対応した。
「だったらミサキ一人で戻れば? ここまで来て引き返したくないよ!」
「ひどい! ライム!! 一人で離ればなれになる方がよっぽど怖いわよ! 分かったわよ……いっしょに先に進めばいいんでしょ!」
そんな軽い冗談話も交わしながら、ひたすら下へと降りて行くと……
真っ暗闇であるはずの地下内に、突然強い光が差し込んできた。
「なんだろ……この光? もしかして、もうすぐ終わりが近い?」
ゴールが近づいてきたと分かり、ナヴィは駆け足で下へと降りる。
ついには階段が終わり、やっとの思いでたどり着くも……
やけに眩しい光の輝きに、一同は目を奪われる。
皆一斉に手で目を覆い隠した。そして、ゆっくりと目を開ける。
「眩しい……なんだこの強い光は……それに熱い……
──ん? なんかいる……」
その強い光の正体……
それは、ライム達の目の前に、燃える羽を大きく羽ばたかせながら君臨していた
“火の鳥” だった。
ナヴィが火の鳥の正体を暴く。
「こいつは……
“神獣・フェニックス”!!!」
カコイマミライ
~時を刻まない島~
第45話
“力の証明”
神獣・フェニックス
別名、不死鳥とも呼ばれている。
なぜこんな屋敷の地下室に、神獣がいるのか?
ライムは部屋の周りを見渡した。
「ここって……研究施設? もしかして、この屋敷の主はフェニックスの研究でもしてたのか?」
どうやらこの地下室は、神獣の研究をするために作られたもののようだ。
至るところに資料らしきものが散乱しているが、ほとんどがフェニックスの火の粉に焼かれ
中身はほとんど見えない。燃えくずと化している。
ナヴィが床に落ちている焼かれた資料を眺めていると、背後から声が聞こえ出した。
「何しに来た。人間達よ。我の力を欲してきたか?」
思わずナヴィは振り返り、ライムに尋ねる。
「ん? ライム……? 何か言った?」
「いや、俺じゃない! もしかして──今のってフェニックスの声なのか?」
「そ、そんなバカな……」
戸惑う二人に対し、冷静にミサキは言った。
「えぇ、そうよ。フェニックスが私達に話しかけて来てるのよ」
ミサキの発言にライムは驚きを隠せない。
まさか神獣が言葉を話すとは夢にも思わなかった。
「えぇっ!? 神獣って喋るのか!!」
「私のマーメイドの時もそうだったわ。優しく私に語りかけてくれた」
驚いてばかりで、質問に全く応じなかったライム達。
再び先程と同じ声の主が問いかける。
「もう一度聞く……我の力が欲しいのか? 人間よ」
間違いない。やはりフェニックスがライム達に語りかけているのだ。
不思議な感覚だ。耳で声をとらえると言うより、脳内に声が届くといった方が正しいか。
ライムは自分の願望のままに、正直に答えた。
「あぁ、力が欲しいんだ! 俺に力を貸してくれ!!」
ライムが力強くそう言ったものの、しばしの沈黙が流れる。
そしてその沈黙のあと、フェニックスは言葉を返した。
「……分かった。力を貸すとしよう──」
「やった!!」
ライムが笑顔になるも……
その笑顔はすぐに消え去る。
なぜなら、まだフェニックスの話には続きがあったからだ。
「力を貸すとしよう──我に勝つことができたのならば!!」
そう言った途端、フェニックスが羽を大きく広げ飛び立った。
予想だにしない展開にナヴィは焦り、額からは冷や汗が流れ落ちる。
「飛んだ! もしかして……戦うのか? 神獣と!!」
ミサキに八つ当たりするようにして、ライムが声を荒げた。
「戦うのかよ! それなら先に言ってくれよ! ミサキ!!」
「し、知らないわよ私も!! マーメイドの時は、すんなりといってこんなことにならなかったもの!!」
喧嘩腰の二人に、ナヴィが仲裁に入る。
「おそらく神獣にも性格があるんだよ! そんなことより、二人とも落ち着いて! 喧嘩してる場合じゃない!」
ナヴィに言われ、ライムは気持ちを切り替える。
こちらに向かってくるフェニックスに、ライムが先制攻撃をかました。
「戦うしかないなら──やってやる! くらえ!! フェニックス」
ライムが狙いを定めて、神力・ガンを放つ。
しかし、フェニックスはくるりと回転し、華麗に攻撃をかわした。
突然の発砲に、ナヴィは慌てふためいた。
「だめだよ! ライム!! ここは地下室……壁が壊れたら崩れて埋もれてしまう!!」
「や、やべっ!!
(何も考えず、とりあえず撃っちゃった!)」
ライムの攻撃は外れ、そのまま壁に激突し
ドーーン!! と、大かな音を立てたが……
「──壊れてない!? 随分と頑丈な壁なんだな」
壁に少し穴が空いた程度で、びくともしていない様子だ。
何事もなかったかのように、優雅にフェニックスは飛び回っている。




