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第44話「幽霊屋敷③」

 ライムと同じような反応を見せるが、言われるがままに近づいてみる。

 するとナヴィが、家と家の細い隙間に何かを見つけた。



「──ん? ここに生えてる草……何かに潰された跡があるな。誰かがここを通ったのか?」



 ナヴィは家の間を歩き、先へと進んだ。

 その誰かが通ったと思われる跡は、その先もずっと続いている。


 決して舗装された道のように綺麗ではないが、確かにそこに道はできている。

 残された跡をたどって線で結べば、道なき道が完成されるのだ。



「ずっと続いてる……あるんだ。この先に何かが!!」



 あまり子供達の話を鵜呑みにしていなかったライムだったが、ここに来て希望が少し沸き始めた。



「幽霊屋敷……ほんとにいるのか? そこに神獣が!!」



 ライムとミサキもナヴィの後に続き、三人は何者かが作り上げた軌跡を道しるべとし、茂みの奥深くへと入り込んでいった。




 どれくらいの距離を歩いただろう。

 恐らく500メートルほど。1キロまでは確実に届かない。



「あった……“幽霊屋敷”!!」



 そこには子供達が言っていた通り、しっかりと存在した。

 ボロボロになり廃墟と化した、幽霊屋敷と呼ばれる大きな建物が。


 間違いなく誰も住んではいないだろう。

 窓ガラスは割れ、屋敷の外壁は木のツタが巻いている。

 幽霊屋敷と呼ばれるだけあって、不気味な雰囲気が漂っており、確かに“何か”出そうではある。


 ナヴィは大きな屋敷を見上げた。



「立派なお家だね。この島にこれだけ大きな家を建てるのも珍しい」



「よっぽどのお金持ちが住んでたのかしら? それにしても、なんだか不気味ね……」



 怖がるミサキを見て、からかうライム。



「なんだミサキ。ビビってるの? 大丈夫、おばけなんているわけないし!」



「分かってるんだけどさ……それにしてもちょっとね……」



 ゆっくりと古びた扉を開け、恐る恐る三人は屋敷の中へと入っていった。

 やはり想像していた通り、人が住んでいた形跡はなく、そこら中は埃まみれで、かなり汚れていた。


 二階建ての大きな屋敷内を、三人は隈なく探したが、特に変わったところは何もないようだ。



「何もないね。やっぱり所詮は、子供の噂話にすぎなかったか」



(ふぅ~……何もなくてよかったわ……)



 ミサキはホッと肩を撫で下ろす。

 何もなく残念そうにするライムとは対照的だ。



「仕方ないよ。そんな簡単に神獣が見つかるわけないし。面倒だけど、こうやってひとつずつ潰してくしかないね」



 三人は何も収穫はなしと判断し、屋敷の外へ出ようとするが……


 ナヴィの大きな耳は“ある音”をとらえ、足を止めた。



「──ん?ちょっと待って! “風”の音が……聞こえてくる」



 当たり前のことを言うナヴィに、ライムは疑問符を浮かべた。



「風の音って……そりゃそうでしょ。これだけ筒抜けになってればさ。当たり前じゃない?」



 窓ガラスのほとんどは割れ、外からの風が屋敷の中に入り込んでいる。

 風の音が聞こえる事なんて、何ら不思議なことではない。


 しかし、それでもナヴィの耳が察知するのは、“外”から入り込む風の音ではなく、“内”から流れ出る風の音だ。



「いや、そうじゃなくて。向こうの部屋から聞こえてくるんだ」



 その音の正体を確かめに、一階の一番奥の部屋にナヴィが入った。


 おかしなことに、この部屋に窓は存在しない。

 風の音が聞こえるなんて変な話だ。



「風の音なんて聞こえないけど……ナヴィちゃんには分かるのかしら?」



 ミサキとライムには、不思議な風の音など聞こえてはこない。


 だが、この部屋……

 言われてみれば確かにおかしい。


 他の部屋と比べて、この部屋だけ余計にひどく荒らされているのだ。


 天井まで破壊されており、その崩れた天井により瓦礫の山が出来上がっている。

 ナヴィはこの瓦礫の下に、その音の正体があるのではないかと睨んだ。



「きっとこの下からだ!! ライム! 神力・ガンでこの瓦礫をどけてくれ!!」



「オッケー。任せろ! 二人とも下がって!!」



 言われるがままに、ライムは神力を使い瓦礫の山を破壊する。



ドーン!! と、音を立て積まれた瓦礫は粉々になると、その下には……




「地下通路だ!!」




 地下へと続く階段が隠されていた。






第44話 “幽霊屋敷” 完 

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