第43話「幽霊屋敷②」
座っていたライムは起き上がり、子供達に話しかける。
「なぁ君達。その話、詳しく聞かせてくれないか?」
突然見知らぬ人に話しかけれた子供達は、キョトンとし、一旦会話が止まった。
気まずい空気が流れ、ライムは少し慌てる。
「あぁ、突然ごめんよ! その幽霊屋敷だっけ? その屋敷はどこにあるか教えてくれないかな?」
ライムがそう尋ねると、女の子が指をさし、一言だけ返した。
「あっち」
女の子が指した方向は、村の出口とは大きくかけ離れている。
そこにあるものと言えば、家が2、3件並んでいるだけで、特に道などは見当たらない。
「あっちって……随分ぼんやりとしてるな」
ライムが困り果てていると、今度は反対に子供達の方からライムに質問した。
「もしかして幽霊屋敷に行くの?」
「知らないからね、おばけが出てどうなっても!」
「だから何度も言わすなよ! 神獣だって!!」
三人はおばけと神獣の、どちらの仕業かで揉め始める。
突然の言い争いに、ライムはたじたじだ。
「ちょっと──喧嘩はやめろって。困ったな~……」
ライムが途方に暮れていると、抜群のタイミングでナヴィが戻ってきた。
「どうしたの!? ライム」
「ナヴィ!!」
ライムがナヴィに助けを求めようとするが、怖い話の最中に、喋るウサギの登場に子供達はびっくり仰天。
「うわっ!! ウサギが喋った!!もしかして──おばけ? 幽霊屋敷のおばけだ!!」
いくら子供相手でも、おばけ呼ばわりにナヴィはカチンときた様子だ。
「おばけ!? 失礼な!! 僕は時の支配者だぞ!! 誰がおばけだ!!」
ナヴィは鼻息を荒くし大声を出すと、更に驚いた子供達は、走るようにして逃げ出した。
「おばけが怒った!! やばい……呪われる!! みんな、逃げろーー!!」
三人の子供は散り散りになり、村の奥の方へと走り去ってしまった。
「もう……失礼な子供達だな、ほんとに!」
ナヴィは腹の虫がおさまらず、イライラし続けている。
ナヴィには申し訳ないが、子供達の揉め事を終わらせてくれた事に、ライムは内心ホッとしていた。
そこで一部始終を見ていたミサキが、ライム達のまえに現れる。
ミサキは呆れて若干引き気味だ。
「子供相手に何してるのよ……あなた達……」
「ミサキ!!いたのか。いや、ちょっと色々あってさ……」
ライムは恥ずかしくなり、赤面する。
話を逸らすように、さっと話題を変えた。
「そ、その話はいいからさ。どう? 情報は手に入った?」
三人は持ち寄った情報の報告を始める。
まずはナヴィから。
「僕は……神獣については分からなかったけど、おもしろいものを見つけたんだ。見てよ、これ!」
ナヴィは持ってきた一枚の紙を地面に起き、開いて見せた。
「これは──指名手配書!?」
ナヴィの持ってきたおもしろいものとは、指名手配の紙だった。
その手配されていた人物とは……
寝返った 元・解放軍
“ Y.MITSURUGI ”
先程、解放軍内で争っていた
神獣・ケルベロスの使い手である、あの細身の男だった。
「あいつ!! 指名手配犯だったのか!!」
ライムが驚くも、ナヴィが少しばかりの訂正を入れる。
「いや正確には、ついさっき指名手配されたんだ。
ミツルギ ユウマ
仲間であるはずの解放軍を殺し、反感を買ったんだろう」
「あの逃げ出したやつらの嫌がらせか? 自分達で仕返しはできないから、指名手配犯にしちゃえってわけか!」
ナヴィの出した情報を知って、ミサキが申し訳なさそうに小さく手を挙げる。
「あのぉ~……大変言いにくいんですけど……私も情報それだけなんだ。もう村中に出回ってるみたいね。肝心の神獣の情報はさっぱりで……」
ミサキもナヴィと同様の指名手配を出す。
有力情報皆無の二人に、ライムは強気に出た。
「なんだよ二人とも! 情報なしか……」
「そういうライムこそ、どうなのよ!?」
ミサキが反発するも、ライムは待ってましたとばかりに得意気になる。
「ふっふっふ……手に入れたんだよ! 神獣の情報を!」
まるでライムには期待していなかったナヴィは一段と驚いた。
「ほんと!? やるじゃないかライム!」
「だろ! ちゃんと情報収集してたんだから。まっ、そうは言っても……子供の噂話にしか過ぎないんだよな……あまり信憑性の高いものとは言えないけど……」
威勢よく言ったはいいものの、所詮は子供達の噂話。
話していくうちに、徐々にライムは自信を失い始め、語尾は弱くなっていった。
その声の小ささから、自信の無さが伺える。
しかし、それでもミサキは前向きにとらえていた。
「でも神獣の話なんて、だいたい噂とか都市伝説とか、そんなもんよ! 行ってみる価値はあるんじゃない?」
「そうそう。それに他には今のところ何の情報もないし。とりあえずそこに行ってみようよ! それで、どこに神獣はいるって?」
ナヴィがライムに詳細を尋ねると、ライムは女の子の真似をするように指をさした。
「あっち……だってさ」
「あっちって……アバウトだな。家が並んでるだけじゃないか」




