第42話「幽霊屋敷①」
ライム達の意見は固まり、神獣を手に入れることとなった。
しかし早速壁にぶち当たり、ライムは頭を悩ませる。
「神獣を手に入れるのは決まったんだけど……どこにいるんだ? どうやって探せばいいんだろ?」
ライムはナヴィの方をじっと見るも、思わずナヴィは目を反らした。
「そんな僕を見られても困るよ! 僕が何でも知ってると思わないでくれるかな! 神獣がどこにいるかなんて分からないよ」
「そこは時の支配者だろ? なんとかしてくれよ!」
「それとこれは関係ないだろ!! 無茶言わないでくれ!! むしろ神獣なら……ミサキのが詳しいんじゃない!?」
そう、何もナヴィに聞かなくても、神獣使いがここに一人。身近にいる。
神獣・マーメイドの使い手であるミサキだ。
「私に頼られても……私が見つけたのは、ほんと偶然なのよ! それでも神獣はこの島の人達にとっても、特別で伝説的な存在になってるから……もしかしたら村の人達の噂話とかになってるかもしれない!」
「噂か……なんだ。結局アーサイ村に行ってみるしかないんだね。村の人に聞き込みでもして、神獣の情報を手に入れようか」
ライム達は当初の予定通り、まずはアーサイ村へと行くこととなった。
考えるだけ無駄。
行動あるのみ。ライム達は足を動かす。
カコイマミライ
~時を刻まない島~
第42話
“幽霊屋敷”
三人は雑談を交わしながら、しばし歩いていると、道の先にアーサイ村が見えてきた。
ぱっと見た感じから、村は活気に溢れており、賑わっているのが分かる。
どうやらミサキが不安視していた、解放軍の崩壊は受けていないようだ。
そこにひとまず安心し、三人は村の中へと入った。
中に入ると、まずアーサイ村の広さに圧倒される。
面積にして、だいたいファブル村の倍くらいはあるだろう。
これなら宿屋はもちろん、食料や物資の補給もできそうだ。
「やっと着いたーー!! 俺、腹減っちゃったよ」
「私はこのベタベタな体が気持ち悪くて。シャワーを先に浴びたいとこだわ」
ライムとミサキ、それぞれの思惑は食い違う。
ナヴィはライムに少ない小遣いを手渡し、しばらくの間、三人は別行動にすることにした。
「はい、これライムの分」
「す、少な……! こんな金で飯食えるのか?」
「文句言わないの! ライムは元々無一文だったくせに! じゃあ、あとは自由に。用事が済んだら、あの大きな木の下で落ち合おう!」
「おう!」
ライムが一目散にレストランへと走り出す。
ナヴィが慌ててライムに忠告した。
「ライム!! 肝心の聞き込みも忘れないでよ!」
「あー分かってる! 大丈夫だって!!」
本当に分かっているのだろうか……
ナヴィは不安を覚えながらも、物資の調達へと向かった。
ライムは早々に食事を済ませ、いち早く約束の大きな木の下へとやって来ていた。
「ふぅ~……食った~。久しぶりにまともな食事ができた」
すっかり聞き込みのことなど忘れているライム。
暇になったのか、地面に座り込み、木に寄りかかった。
「二人とも遅いな。ふぁ~あ……なんだか眠くなってきたし、少し居眠りでもして待ってればいいか」
大あくびをしたライムは、木にもたれ掛かりながら眠りにつき始めた。
ライムがうとうととし、ようやく深い眠りに入ろうとしたところで……
テンションの高い騒ぎ声により、ライムは目を覚ます。
「また幽霊屋敷から人が戻ってこないんだって!」
「えー! やっぱりおばけだ! おばけの仕業だ!」
ライムが眠い目を擦り、騒ぎ声の方を見ると
三人の小さい子供が噂話で盛り上がっているようだった。
「あれほどあの屋敷には近づかないようにって言われてたのに……きっとおばけを怒らせちゃったんだよ!」
小さな女の子と男の子が、おばけが出たと騒ぎ立てている。
ライムは昔の自分を思い出し、やはり小さい子供は怪談話が好きで、どこでも定番なのだなと思いふけていた。
すると、二人の子供より少し大きな男の子が、大人びた雰囲気をかもしだし、得意気に語り始めた。
「バカだな。まだおばけとか言ってんのかよ! おばけなんかいるわけないだろ。あれは“神獣”の仕業だよ!」
寝起きでボーッとしていたライムは、神獣の言葉を耳にし、パッと目を見開いた。
(──し、神獣だって!?)