第37話「秘策③」
レオナを囲んでいた村人達は、縄でレオナの両手を縛りあげ、拘束した。
「あとは俺達に任せろ! こいつは留置所に連れていく! なぁに、いくら解放軍でも、この人数なら大丈夫だ」
「留置所……?」
ライムはキョトンとした顔をしている。
それを見かねたナヴィが説明した。
「僕達が今目指してる“時の塔“があるだろ? あそこの中には、僕の仲間が管轄している、解放軍専用の留置所があるんだ」
ライムは島に堂々とそびえ立つ、時の塔を眺めた。
「あの塔の中にそんな施設が……でも解放軍にはあんな危険な神力や、神獣の力があるのに、そこは大丈夫なのか……?」
「安全面についてもちゃんとしてるから大丈夫。なんでかっていうのは……まぁ、着けば分かるよ。その時にまた説明するね」
あの謎に包まれた塔に、やたらと詳しいナヴィを不思議そうにミサキは見ていた。
だが、そこにはあえて触れず言及する。
「とにかく──解放軍を留置所に連れてくのは賛成だわ。あのまま放っておくと、誰かに殺されかねない……
レオナは憎くて憎くて仕方ないけど、人殺しはごめんだわ! そうなったらやってることは解放軍と変わらないもの」
もっともな意見だ。
『解放軍を許せない。間違ってる』と言いながら、自分も殺しに加担していたら意味がない。
ライムはそんなつもりで、レオナを倒したわけではない。
「それもそうか……じゃあレオナのあとのことは、村の人達に任せよう」
これにて一件落着。
日も少しずつ暮れ始め、辺りも薄暗くなってきていた。
ライムはこれからの進路をナヴィに尋ねる。
「無事レオナも倒せたわけだし、この先どうする? ナヴィ」
「そうだな……結局物資の補給をヒザン村でするはずが、できなかったからね。また少し寄り道になるけど、近くの“アーサイ村”へと向かおうか」
「そうか、分かった。まだ外も明るさ残ってるし、少しでも先を急ごうか。行けるとこまで行こう」
ライムは重い体を起こし、ナヴィと共に急ぎ足で先へと進む。
ヘトヘトにバテて、立つことができないでいたミサキは、ライム達を呼び止めた。
「待ってよ! もう行っちゃうの? 私まだ動けないし……
私もライムとナヴィちゃんにはちゃんとお礼をしたいぐらいで……だからもう少しゆっくりしていかない?」
ナヴィは腕を組み、困りながらも厳しい言葉をかける。
「う~ん……ごめん、ミサキ。僕達先を急ぐ旅でね。ゆっくりしてる暇もないんだ。
ミサキにはこちらこそ助けられた。ありがとう
!」
ライムも心を鬼にしながら、ミサキを突き放す。
「俺からもありがとう。ミサキ。君のおかげで、レオナを倒せた! 感謝してる。
またどこかで会おう! それじゃあ、俺達は行くね」
ミサキをこの戦いに巻き込むわけにはいかない……
せっかくこの島で出会った、異界人として初めて境遇を共にできる人物
寂しくはあったが、ライムはミサキにあえて冷たく対応した。
あまりにもよそよそしい態度の二人に、ミサキは納得がいかなかった。
「ちょっと待ってよ! これで終わりなの……? ねぇ! 本当に行っちゃうの!?
レオナを倒すことはできたけど、もうかつてのヒザン村や、住人達はもういない……
私、一人になっちゃった……だから──私もライム達といっしょに連れてって欲しいの!!」
ミサキの目には、うっすら涙が浮かんでいた。
ライムはうっかり同情されそうになるも、ここは時の支配者・ナヴィ。
ライムの代わりに悪役を買う。
「きっとこれでこの村も、さっきの人達が視察に来てたようにまた住人が戻ってくる。
ミサキはそのサポートをしたらいいんじゃないかな? 解放軍がまたいつ来るか分からないし、その神力のシールドはきっと役に立つよ!」
どこまでも冷たいナヴィ。
ミサキは心折れそうになるも、せめてもとばかりに言った。
「もう! ほんと冷たいわね……じゃあこれだけでも教えて!!
あなた達を見てると不思議なことばかり……ただ者ではないのは分かるわ……
ねぇ、あなた達、一体何者なの?」
第37話 “秘策” 完




