第35話「秘策①」
レオナの素早いチャクラムの攻撃
ライムには真似できぬ早さに、自分とレオナの差は一体どこにあるのか?
目を凝らしてレオナを観察したライムは、“ある違い”に気づいた。
(そうか、そういうことか! なーんだ……簡単な話じゃないか! これならレオナの虚をつけるかもしれない!!)
カコイマミライ
~時を刻まない島~
第35話
“秘策”
一方的に攻撃を受け続けるライム。
ミサキはその瞬間の訪れを見逃すまいと、ずっと見守ってた。
(ごめんなさい……ライム、辛いよね……でも、このままじゃだめなの……)
ライム達の作戦は、ライムの放つ神力・ガンを
ミサキのシールド技“リフレクト”で跳ね返すこと。
ただし、このリフレクトには難点があった。
(今のまま跳ね返せば、ライムに攻撃が当たってしまう……)
もし今攻撃を跳ね返せば、レオナにはもちろん当たるが、そのままライムも巻き込んでしまう。
レオナの真正面に入らず、別角度からうまく反射させたいところだが──
ライムが見当違いの場所にガンを放つものならば、恐らくその異変にレオナが気づき、作戦は失敗してしまうだろう……
ミサキにも分かっていた。これは不意をつく作戦……
二度目はない。
勝負は一度きりだ。
そう思うと、なかなか踏ん切りがつかず、ミサキは慎重になっていた。
そして、レオナもさすがである。
ミサキには目もくれず、標的はライムのみ。
守る能力が強みのミサキは、後でどうにでもなる。
先に潰さなければならないのは、力を持つライムの方。
ひたすら集中的にライムを攻め続けていた。
(く、くそっ……このままじゃいつかやられちまう! ミサキ、まだ……まだなのか……?)
ライムは必死にミサキの合図を待ち続け、堪えていた。
いっこうに力を溜めるだけで、なぜか撃ってこないライムに、レオナは痺れを切らす。
レオナが先に動いた。
「もう──飽きたよ。この戦い。あんたに力を溜め続けされるわけにもいかないしね……終わりにしようか!!」
一定の距離を保っていたライムとレオナ。
レオナが距離を詰め、動き出す。
そのレオナが一歩足を踏み出したとき……
待ちに待った、“その瞬間”は訪れた。
(角度が変わった! これなら──いける!!)
「今よ!! ライム!!!」
とうとうミサキが、ライムに作戦の合図を送った。
「待ってたぜ!! ミサキ!! くらえ! “リミット・バースト”!!」
ライムがレオナではなく、ミサキ目掛けて強烈なな一撃を放った。
(任せて!! ライム!! “リフレクト”!!)
神力・シールドで、ミサキはライムの攻撃を跳ね返す。
レオナは自分の方に向かってくるかと思いきや、狙いが外れる“リミッド・バースト”に、意表をつかれ、驚いた表情を見せるかと思われたが……
レオナの表情は至って柔らかく、そればかりか笑みすら見せていた。
「バカだね……そんなの……すべてお見通しだよ!!!」
(──ま、まずい! 読まれてた!!!)
レオナはグッと地面を蹴り、人の力とは思えない程の強力な脚力で一気に加速した。
「ばればれさ!! いつもは反射させてくるのに、今回は使ってこないんだから!!
分かりやすいんだよ、あんた! それでも隠してるつもりだったのかい!?」
ミサキを見下すようにして、レオナはあざけ笑う。
ミサキの絶妙な角度のはずだった“リフレクト”は一気に加速したレオナの動きについていけず
空を切り、無情にも不発に終わってしまう。
二人が綿密に考えた作戦は──失敗した。
突如ありえない速さで急発進したレオナに、ナヴィが勘づく。
「この力も……もしかして神獣の力か!?」
「そうさ! 何もユニコーンの力は角だけじゃない……この尋常じゃない“脚力”!! こいつも立派な武器!!
今まで隠しといたのさ。見とくがいい! こういうのを秘策と言うんだよ!!」
レオナは超スピードに乗りながら、ライムに向かって突進する。
速度を上昇させたことにより、数段にパワーアップされたユニコーンの角で、ライムを串刺しにするつもりだ。
この一撃をもらえば、ライムは確実に死ぬ。
今度はミサキのバリアは──ない。
レオナが勝利の雄叫びとばかりに叫んだ。
「死ねーーー!!! 解放させてやるよ!! あんた!!!」
悲鳴にも似たナヴィの声が響き渡る。
「ライムーーー!!!」
ライムは下を向いている。
涙ぐむナヴィだったが、それに対しミサキは悲しむ素振りは全く見せず、ひたすらにライムをずっと見つめていた。
なぜなら………
(さっきのライムの攻撃……おかしい……あんなに溜めてたのに……
たったあれだけの力……?)
ライムには何か狙いがある。
そう考えていたからだ。
ミサキは最後までライムを信じていた。




