第34話「観察②」
解放軍・レオナ
なかなか厄介な相手である。
遠距離ではチャクラムによる攻撃
近づけば、ユニコーンの一撃で致命傷を与える。
見事なコンビネーションだ。
ライムは冷や汗びっしり。
危うく同じ過ちを繰り返すとこだった。
以前ライムは、ユニコーンの角にやられそうになった所を、間一髪でミサキに助けられている。
(あ、危ない! またミサキに救われた。まず一番に気を付けなければチャクラムより、ユニコーンだ……これを食らえば、命の保証はない……)
接近戦は禁物。
それにライムの神力・ガンも、近距離は不向きである。
またライムは力の溜め直し……一からやり直しだ。
ライムはミサキの方をちらっと見て、目で合図を送った。
(やはりここは、ミサキの言っていた作戦に賭けてみるしかないか……)
ライムとミサキには、ヒザン村に戻ってくる間に考えた秘策があった。
今こそ、その秘策を試すべきだ。
鍵を握るのは、ミサキの神力・シールド。
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『私の盾の力の一つにね、反射能力があるの。
その名も“リフレクト”』
『反射?』
『そう、守るだけではなくて跳ね返す。ライムの銃だって跳ね返しちゃうんだから!!』
『すごい能力じゃないか! だったらレオナのチャクラムも跳ね返せるよな? これは使えるぞ!!』
とても有効な技と思われたが、ライムは疑問に思うことがあった。
『でもさ……その反射能力、レオナは知ってるのか?』
ミサキはしかめ面を浮かべ、気まずそうに話す。
『うん、知ってる……何度もレオナに使っちゃった、私……』
あれだけ戦闘慣れしていたレオナのことだ。
安易な反射攻撃に、引っ掛かるとは到底思えない。
ライムの頭に不安がよぎる。
『じゃあ──だめなんじゃないか? レオナには読まれてしまいそう』
『だったらこれならどう!?
──ライムが攻撃を外した! と思わせて、私がその攻撃を反射して当てる。これなら不意をつけると思うけど、どうかな?』
『う~ん……やってみる価値はありそうだけど……』
自信無さそうなライムの返答に、ミサキが気を紛らわすようにして明るく振る舞った。
『まっ、だめならまた海に飛び込めばいいしね。私がマーメイドの力で、また助けてあげるよ』
『い、嫌だよ! あんな崖から飛び込むの!! 二度とごめんだ!!
(だ、大丈夫かな……この作戦……)』
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ライムにある不安は、どうしても拭いきれない。
(本当にうまくいくのか? この作戦……やっぱり今更、ミサキが言ってたみたいにまた海に飛び込んで逃げるか……?)
ライムは波の音が聞こえる海の方を見た。
あいにく、今回は崖までだいぶ距離がある。
ここから走って逃げるのは難しそうだ。
戸惑うライムを見て、ミサキがたまらず声をかける。
「ライム! もう一度、私の後ろに隠れて!!」
そう言って、ミサキはまたバリアを張った。
ライムは再度ミサキの後ろに走って回り込む。
「ライム、ここは作戦通りいくわよ。私がバリアで守るから、その間に力を溜めて!!」
「あぁ、分かった!!
(ネガティブに考えても仕方ない……一度やってみよう!!)」
ライムは一か八か、作戦を決行することにした。
バリアに隠れながら、力を溜め始める。
ライムが指先に力を入れ、集中力を高めていると、今度はレオナの異変に気づいたナヴィが叫び声をあげた。
「ライム! レオナも力を溜め始めたよ!! バリアから抜けるんだ!!」
知らず知らずのうちに、ライム同様にレオナも神力を溜めていたのだ。
強力な一撃を放ち、シールドごと葬り去るつもりのようだ。
「ありがとう! ナヴィ!」
ライムがナヴィの助言により、再びバリアの外へと飛び出す。
慌ててレオナは、中途半端に力を溜めた状態で、チャクラムを解き放つ。
「チッ……勘づかれたか!!」
そこまで洗練されずに放たれたチャクラムは、不格好で大きさも、さほどではない。
そのためか、ライムはいとも簡単にチャクラムをかわした。
しかし、レオナは間髪入れずに、小さいチャクラムを無数に放つ。
その小さく素早いチャクラムはライムに的中し、体に傷を刻んだ。
少しでもライムの集中力を欠くため、レオナは
攻撃の手を緩めない。
(は、早い!! もうレオナはこんなに攻撃を……)
ライムはやられながらも、ひとつの疑問を抱いていた。
(なぜだ……? どうしてこんなに素早くレオナは攻撃できるんだ?)
明らかに攻撃の速度がライムとレオナには違いがある。
やはり熟練度、経験の差か?
ライムは目を凝らしてレオナを観察した。
すると、ライムはあることに気が付く。
自分とレオナの“ある違い”に。
(──そうか、そういうことか! なーんだ……簡単な話じゃないか! これならレオナの虚をつけるかもしれない!!)
第34話 “観察” 完