第33話「観察①」
ライムはミサキと手を組み、解放軍・レオナを倒すことを誓った。
ナヴィを含めた3人は知恵を絞り、あるひとつの作戦を立てる。準備は整った。
レオナのいるヒザン村へと舞い戻る。
カコイマミライ
~時を刻まない島~
第33話
“観察”
ライム達はヒザン村に到着し、真っ先にレオナを探した。
相変わらず倒壊した建物がいくつも並ぶが、少し歩くと開けた場所に出た。
ここは特にひどく荒らされた地のようで、建物など遮る物は一切ない。
この見通しのいい場所に、レオナはまるでライム達が来るのを予測していたかのように、仁王立ちして待ち構えていた。
「やっぱり生きてたのか! あんたら」
「レオナ……!!」
ミサキがレオナを睨み付けた。
ミサキとは対照的に、レオナは笑みを見せる。
「どうやって生き延びたのかは知らないが……私を楽しませてくれて何よりだよ!」
ミサキの予想通り、戦闘を楽しむレオナはヒザン村を離れることはしなかったようだ。
ひとまず前回戦った高台は足場が悪すぎた。
ここなら崖を気にすることはないし、存分に戦えそうだ。
レオナがさっそく神力・リングを使い、無数のチャクラムを作り出す。
その攻撃に気づいたミサキがライムを呼んだ。
「ライム! いきなり来るわよ! 私の後ろに隠れて!!」
ミサキも神力・シールドを使い、バリアを張る。
ライムは走ってミサキの背後に回り、身を隠した。
神力・シールドのバリアはとても強力で、レオナが放つチャクラムを完璧に防いでいた。
びくともしないミサキの神力に、ライムは驚愕する。
「すごいなこの力……これなら全く攻撃をくらわないじゃないか!」
楽観視するライムに対し、ミサキは顔を曇らせ唇を噛んだ。
「あまり過信しないでよね……今はまだ平気だけど、このバリアの力も限度がある。
次第にヒビが入り、粉々に砕け散る……いつまでバリアが持つかは分からないわ」
「そ、そうなのか……じゃあバリアに頼りきりではだめなわけだ。そうなると……俺が前に出て、レオナを撃たなきゃ!!」
やはりミサキが口を酸っぱくして言っていた通り、最後はライムがやるしかない。
ミサキが守っているだけでは勝ち目はないのだ。
ライムが気合いを入れ直し、いざ前へ出ようとするも……
レオナの激しい攻撃により、なかなかバリアの外へ飛び出すことができない。
(くそっ、なかなか出るタイミングを掴めない。レオナが高台ではなく、“ここ”を選んだ理由はこれか……)
レオナはこの見晴らしのいい開けた場所を選んだのにも理由があった。
レオナの神力・リングは、輪っかの形をした鋭利な円盤が、ブーメランのように弧を描き戻ってくる。
その習性により、遮るものが周りにないこの地では、チャクラムが悠然と飛び交う。
よってライムは、前方と背後、両方からの攻撃を警戒しなければならないのだ。
苦戦するライムを見て、レオナがニヤつく。
「ほらほら、どうした? いつまでも女に守られてばかりか? だらしない男だね、まったく!!」
レオナがライムに挑発し、ライムがカッとなりかけたところで
随分と離れて隠れていた、冷静なナヴィがライムをたしなめる。
「ライム! 相手の口車に乗っちゃだめだよ! 落ち着いて行動して!!」
ナヴィは戦闘に巻き込まれないようにと、10メートルほど離れており、廃墟の影からひょっこりと顔を出し、ライムにアドバイスを送っていた。
(ナヴィ……あんなところに……それにしても遠すぎないか? あいつ。まぁいいや、おかげで冷静になれたよ!)
危うく挑発に乗るところだったライムは、深呼吸をして気を落ち着かせる。
そして覚悟を決め、いよいよバリアから飛び出した。
(これじゃ前回と一緒だけど……神力・ガンでチャクラムを打ち落としてやる!!)
ライムは走りながら銃を構え、チャクラムを狙い撃つ。
しかし、チャクラムの数が異常なまでに多すぎるため、狙撃し損ねたチャクラムに、ライムの体はやられて斬り刻まれた。
「ライム!!」
ナヴィが心配そうに声を上げるも、ライムは踏みとどまる。
「大丈夫──こんな傷、大したことないよ!」
ライムは以前の解放軍・ダイキ戦のことを思い出していた。
神力は、ある程度溜めなければ、存分に力を発揮することができない。
これはすでに身をもって実践済みだ。
だからこの無数に放たれる神力のチャクラム
数は多けど、一発のダメージはそれほどではない。
たがそれはライムとて同じ。
チャクラム同様に、ライムもガンの力を溜めなければ、強力な力を生み出すことはできないのだ。
(やはりそうだ。力を溜めなければだめ。この程度の痛みなら我慢できる……だったらチャクラム含めて、全部いっぺんに撃ち抜いてやる!!)
ライムが力を溜め始めた。
バリアを飛び出たライムをターゲットに、いくつものチャクラムは投げられている。
ライムは体を斬られながらも耐え、力を溜め続ける。
すると、突然レオナはチャクラムの攻撃はピタリと止め、走り出して一気にライムとの距離を詰めた。
そのレオナの動きに気づいたミサキが叫ぶ。
「ライム、下がって!! レオナが近づいてきた! 距離を取って!!」
ライムは溜めた力を一度解除し、ミサキの言われるがままに、バックステップをして距離を取った。
勘づかれたレオナは足を止め、舌打ちをした。
「チッ……もう少しで神獣・ユニコーンの餌食になるとこだったのに!!」