第32話「同盟②」
突然のライムの言葉に、ミサキは戸惑いをみせる。
「──えっ? どうしたのよ急に! そんなの悪いよ! ライム達は何も関係ないもの……
せっかく逃げれたのに、またあなた達を危険な目に遭わせるわけにもいかないわ」
「いいんだ、そんなことはどうだって! なぁナヴィ、はっきりしたんだよ。俺のやるべきこと」
「──ん? はっきりしたって……どういうこと?」
「正直言うとさ、ミサキに会うまでは、自分のペアさえ見つかれば、解放軍なんてどうでもいいと思ってた。でもやっぱりそれは違った……」
解放軍・レオナの存在は、実はライムに多大なる影響を及ぼしていたのだ。
なぜならそれは、レオナが解放軍に入る理由を知ったからだ。
過激派な解放軍に入るからには、当然それなりの理由があるとライムは考えていた。
しかし、理由といえば
『殺しを楽しむため』、『解放軍に入れば殺しは正当化される』
といった、とんでもないものだった。
ましてや、トップのキリシマには会ったことすらなく、解放軍の方針に感化されたわけでもない。
解放軍とは名ばかりで、ただ殺戮を楽しむ集団と現状、化してしまっている。
そのことにライムは大きなショックを受けていたのだ。
ライムは握りこぶしをぎゅっと作り、強い口調で言う。
「俺は解放軍を許せない!! レオナのような人殺しを楽しんでいるやつらを!! だからいっしょに倒そう、ミサキ!」
「私もあなたと同じ。解放軍が許せない! 目的は同じってわけね。
分かったわ。ありがとう! ライム。協力してレオナを倒しましょう!」
そう言って、ミサキが手のひらを拡げ、片手を高くあげた。
それに応じるように、ライムはバシッとハイタッチする。
「ちょっとちょっと! 僕も仲間に入れてよ!」
仲間はずれにされまいと、ナヴィはピョンとジャンプをして、二人の手を叩いた。
「あぁ、ごめんごめん。ナヴィちゃんもいっしょだね」
「この先、いずれまた解放軍と対峙するときが来るはずだしね。ライムはこんなところじゃ負けてられない……腕磨きと考えよう! 僕もその考えに賛成だ」
打倒、解放軍・レオナ
三人の結束は固まった。
「よし、決まりだな! とりあえずヒザン村に戻ってみようとは思うけど……どうだろう? レオナはまだいるのかな?」
せっかく団結したものの、ライムにはひとつの不安があった。
それはレオナの居場所についてだった。
だが、レオナの行動範囲は、十分ミサキは把握している。その点は問題ない。
「いるわ。必ず。あいつは私達、神力を使う者達の戦いを楽しんでる……
レオナも私達が飛び込んで死んだとは思ってないでしょう。恐らく待ち構えてるはず。
だから今のうちに何か策を練っといた方がいいかもね!」
「策か──そういっても難しいな。とりあえず言えることは、さっきは戦った場所が悪すぎた。
あんな足場が不安定なところじゃ、すぐ追い込まれてしまう」
「追い込まれると、神獣・ユニコーンの餌食になるしね。私は守ることしかできないから……ライムに決めてもらうしかない」
先程までやる気にみなぎっていたのに関わらず、急にライムは不安に陥る。
「やっぱり俺になる──よな」
「守ってるわけでは勝てない……そう思って、力を求めて私も神獣・マーメイドを手にいれたんだけど、やはり力ではレオナに及ばなかった……」
フォローするように、ナヴィが優しく声をかけた。
「マーメイドの力にも、僕たちは助けられはしたんだけどね」
「うん……決して、マーメイドの力を否定してるわけじゃない。私もこの力には感謝してるし、気にいってる。
でも……レオナに勝つには、この力だけじゃ足りないの」
「そんな暗い顔しないでミサキ! 大丈夫、こっちには救世主がいるんだから!」
「救世主……?」
ミサキが首を傾げるも、ナヴィは勢いよく、ビシッと指差して答えた。
「そう、救世主のライムがね!! だから大船に乗ったつもりでいてよ!」
ナヴィの余計な一言に、ライムもため息しかでない。
(おいおい……ミサキの前でまで勝手なこと言うなよ! 救世主なんて恥ずかしい。でも……やるしかないんだよな! それが現実!!)
「ま、まぁ、俺に任せてよ! 俺の神力でレオナを倒すからさ!!」
言葉に覇気がなく、弱々しく見える救世主であったが──
「随分自信がなさそうね。けど……頼りにしてるわよ。救世主さん!」
そんな存在でも今のミサキには十分、心強かったようだ。
こうしてライム達は、神力・盾の力 神獣・マーメイドの力を持つ
ミサキと行動を共にすることとなった。
第32話 “同盟” 完




