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第31話「同盟①」

 ライムが溺れながらに見た、人魚の幻。


 しかし、これは決して幻なんかではない。

 人魚の姿と化した、ミサキだったのだ。 



「大丈夫? ライム君。安心して! 私はミサキよ。今助けるから!

 神獣・マーメイドの力でね!」






 カコイマミライ

~時を刻まない島~


第31話

 “同盟”






 これも神獣の力の一種か、水中でもミサキの声がよく聞こえる。



(人魚の神獣! だからこんな流れが速くてもミサキは泳げるのか!)



 海に流されるライムを、もの凄いスピードで人魚と化したミサキは追いかける。


 ミサキの左腕には、必死に息を止めて堪え続けるナヴィの姿があった。



(ナヴィ! よかった! 無事だったか!)



「ライム君! つかまって!」



 ミサキはあっという間にライムの近くまでたどり着き、右手を差し出した。

 ライムは体を流されながらも、なんとかミサキの手を掴む。



「やったわ! 降り落とされないように、しっかりつかまってて!」



 ミサキは全速力で、陸地を目指して泳いだ。




「がはっ!! はぁ……はぁ……息──続かないかと思った……」



 ライムは窒息寸前に追い込まれたが、ミサキの神獣の力により、無事生還することができた。



「はぁ……はぁ……た、助かった。まさか僕まで飛び込むことになるとは……」



 どうやらナヴィも無事だったようだ。

 ナヴィは未だに飛び込んだ際の恐怖が消えないのか、まだ体が震えている。


 二人は地面に這いつくばるようにして、ゆっくりと水辺からあがっていった。

 その二人に対し、まるで何事もなかったかのように、ミサキはさっそうと陸地にあがった。



「ごめんね、二人とも! 手荒な真似して!」



「ほんとだよ! 初めからこういう魂胆なら、先に説明してくれてれば済んだものを……」



 少し怒り気味でライムが言葉を返すと、慌ててミサキは言い訳した。



「ごめんって! レオナの前で説明するわけにもいかないし……こうするしか助かる手段がなかったのよ」



 喧嘩ムードの二人をナヴィがなだめる。



「まぁまぁ。完全に追い込まれてたんだ。なんとか逃げ切れただけでもよかったと考えよう!」



 その言葉で、ライムはハッと我に返り、落ち着きを取り戻す。



「それもそうか……ごめん。まずは感謝だったね。そもそもミサキが助けに来てくれなかったら、俺はレオナの神獣の力で、簡単にやられてた!!」



 そう、怒るどころか先に謝らなければならないのはライムの方なのだ。

 ミサキが助けに入らなければ、ライムはレオナの神獣・ユニコーンの力によって命を失っていただろう。



「それはいいのよ。気にしないでライム君」



「優しいんだなミサキは。それにしても、ほんと不思議な力だな、神獣の力ってのは……

 ミサキの普通の人間の見た目から、まさか人魚になるとは──思ってもみなかった」



 ライムはあの荒れた海を優雅に泳いでいたミサキの姿を見て、改めて神獣について考えさせられていた。



「そうね。神獣の力は見た目じゃ分からないわ。だからこれからはどんな相手でも油断しないことね」



「ご、ごめんなさい……完全に敵を侮ってた。これからは十分気を付けるようにします。

 それと──ライムでいいよ! 君はいらない。俺なんか勝手にミサキって呼び捨てしてたし」



「それもそうね。じゃあこれからはライムって呼んじゃう」



 ライムは謝罪と反省を済ませた後

 先程からずっと気になっていた、ミサキとレオナの関係性について聞いてみることにした。



「どうやらミサキはレオナと面識があったみたいだったけど……二人は一体どんな関係なの?」



 その話を聞くや否や、ミサキはムッとした表情を見せる。



「どんな関係でもないわ!! 私はあいつを絶対に許さない!!」



 地雷を踏んでしまったのか、激怒するミサキ。


 ナヴィがライムの目を見ながら、ゆっくりと首を横に振った。


 ライムには『もうこれ以上聞き出すのはやめよう』

 ナヴィがそう言ってるように思えた。

 納得するように、こくりと頷いたライムだったが……


 しばらくするとミサキの方から、そっと静かな声で語り始めた。



「私ね……異界人としてこの島に来てから、ずっとヒザン村に住んでたのよ。


 この島のことを何も知らなかった私に、村の人達は優しく接してくれた。みんな私の恩人だったのよ!


 それなのにレオナは……平気で村を壊し、村人達を虫けらのように殺していった!!」



「ミサキ……」



 ライムはミサキに自分の姿を重ねていた。


 ライムがこの島にたどり着い時、ミサキ同様にファブル村のトウゴはライムにとても親切にしてくれた。


 何も知らない自分によくしてくれたトウゴに、どれほど感謝したことか……

 ミサキのその気持ちは、身に染みるほどライムには分かった。


 ミサキは自分の右手を見つめ、少し涙ぐみながら声を震わせた。



「私にはこの“盾”の力があったから助かったけど……守るだけじゃ……守ってるだけじゃレオナには勝てない。

 悔しいの! 私は!! レオナを倒してみんなの仇をうって、また元のような元気で明るいヒザン村になる姿を見たいの!!」



「そういうことだったのか。惨い話だ……俺も許せない。解放軍のやつらが……」



 ライムはミサキの思いを汲み、少し考えたのちに、覚悟と共に決意を新たにした。



「よし、決めた!! ミサキ、いっしょに倒そう!! 解放軍のレオナを!! 俺達で!!」




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