第29話「神獣②」
ライムは完璧にレオナの攻撃を防ぐ、神力・シールドの力に、度肝を抜かされていた。
「すごい……びくともしてない! 神力・シールド、何て強靭な盾の力なんだ!!」
話の途中で不意をつかれたミサキは、怒りをあらわにする。
「まだ話してる途中なんですけど?」
「そんなの待つ筋合いはこっちにはないんだよ! チッ……ほんとこの力は厄介だ」
もちろんこちらの都合など、レオナには関係のない話。
神力・シールド
相手にすれば相当厄介な能力なのだろう。
同じ遠距離攻撃を主体とするライムも、もしミサキが敵にまわっていれば、大変なことになっていたかもしれない。
ミサキの盾に苦戦しているように見えたレオナだったが、それでもレオナにはまだ余裕が伺える。
「けどね、守ってるだけじゃ意味ないんだよ! いくら攻撃を防いだって、それだけではあたしには勝てっこないのさ!!」
レオナの言う通り、確かに盾の力は強力だ。
しかし、この力では自ら攻撃することはできない。これでは、ミサキに勝ち目はない
──はずなのだが……
そのレオナの発言に、思わずミサキは笑みを溢す。
「それは──どうかしら?」
ミサキは笑うと同時に、レオナに向けて手をかざした。
すると、ミサキの手からは神力とは違う、また別の力と思われる“水の光線”が解き放たれた。
「──な、なんだと!?」
予想だにしないミサキの攻撃に、レオナは少々戸惑う。
だが、ライムの攻撃すら、簡単に回避する身体能力。
勢いはさほどでもない水の光線を、なんなくレオナは回避した。
この水の力を見て、またもや真っ先にナヴィが気づく。
「もしかして……今の力、これは神獣によるもの!?」
神獣の力を使いこなすミサキに、レオナは唖然としていた。
「あんた……いつの間に神獣を!!」
「あなたに勝つために私も神獣を手に入れてきた!! 許さないんだから……あなただけは絶対に!!」
レオナに怒りを覚えるミサキ。
そんな怒りで満ち溢れたミサキを、レオナは挑発した。
「はっ! そんなちんけな水の力で、あたしのユニコーンと対抗しようとはね! 笑わせてくれる!! まとめて解放させてやるよ!!
“侵略する円盤”!!」
レオナは次々とチャクラムを繰り出し、先程ライムにゲームと題してやってみせた技
侵略する円盤を繰り広げた。
こんなに素早く大量に力を放てるとは、やはりレオナは熟練された神力の使い手に違いない。
「またこれか!! それにしても、すごい数のリングだ!!」
大量に宙に舞うリングの数に、ライムも後ずさりしている。
「私のバリアにも限度がある。全部は無理そうね……」
ミサキも怖じ気づいた様子だが、ここは二人で協力すればなんとかなるはずだ。
ライムが号令をかけた。
「ここは手分けして処理しよう! 俺もガンで撃ち抜いてみせる!」
「えぇ!」
ミサキはバリアで身を守り、ライムがガンでリングを撃ち抜く。
お互いが助け合い、この場を凌ぐことに全力を尽くす。
「いい慌てっぷりだね! まだまだ行くよ!!」
攻撃をかわすことで精一杯のライムとミサキに対し、片やレオナは涼しい顔で余裕の表情だ。
このままいけば、レオナが有利のはずなのだが──
レオナは一気に仕留めにかかる。
「こんなじわじわした攻撃じゃ、おもしろくないね!」
ライムとミサキの二人はユニコーンの力を警戒して、レオナから距離を取り続けていた。
そのため、レオナは自ら距離を詰めにかかった。
「そっちから来ないなら──今度はあたしが近づくまで!!」
レオナは繰り出していた攻撃を一旦止めて、ライムに向かって走りだす。
「──攻撃が止まった!?」
突然止まった攻撃の嵐に、一瞬ライムの集中力が切れる。
その一瞬の隙を──レオナは見逃さない。
一気にライムとの距離を詰めたレオナは、神獣ユニコーンの力を使い、自分の右手をツノのような鋭利な槍へと変えた。
その右手でライムの心臓を一突きに刺すつもりだ。
まだ迫るレオナの存在に気が付かないライムに、ナヴィが大声で危機を知らせる。
「ライム!! 危ない!!」
(い、いつの間に目の前に……!!)
ナヴィの声でようやくレオナに気づくも、時すでに遅し……レオナは白い歯を溢した。
「もらった!! 解放してやる!!」
リングの処理をしていたミサキも、遅れて反応したため、ライムを助けられそうにない。
ここはもう──ナヴィしかいない。
(ライムを救えるのは、僕だけだ! 僕がやるしかない!!)




