第28話「神獣①」
ライムVS解放軍レオナ
レオナが謎の力を使い、ライムに強烈な一撃をお見舞いしようとした直前──
突如現れた見知らぬ女の子が、間一髪のところでライムの身を守ってくれていた。
「大丈夫? 怪我はない!?」
「だ、誰だか知らないけど、ありがとう。
(今の力は神力!! この子も異界人!?
でも俺を助けたってことは……解放軍じゃない…!?)」
カコイマミライ
~時を刻まない島~
第28話
“神獣”
ほんのり赤茶色に染まったロングの髪の毛が特徴の、ライムの前に現れた女の子。
華奢な体で、綺麗な瞳をしている。
見た目からして男勝りのレオナとは大違いだ。
一体何者かは分からないが、ライムを見る、この優しい目から敵意は感じられない。
どうやら敵ではなさそうだ。ライムはそう判断する。
「危ないとこだった。おかげで助かったよ!」
女の子の姿を見たレオナは、露骨に嫌な顔をした。
「またあたしの邪魔しやがって! この女!!」
どうやらレオナと、この女の子は面識があるようだ。
ライムが女の子に尋ねる。
「こいつを知ってるのか?」
「えぇ、ちょっとね」
ライムから身を守った力が、神力によるものだとナヴィも確信していた。
しかし、ライムと違って用心深いナヴィは、念のための確認を取る。
「君も神力を使うみたいだけど、どうやら解放軍じゃないみたいだね」
「そうよ! やめてよ! 解放軍なんかといっしょになんてしないで!!
──って、ウサギ!?」
女の子は解放軍と言われて頭に来て怒ろうとしたが、そんなことよりもまず、ウサギが喋っていることに衝撃が走っていた。
「なにこれ!? 神獣? 可愛いーーー!!」
可愛いと言われたナヴィは、照れ臭そうにしながらも、とても満足気な表情だ。
ライムには、ナヴィの可愛さは理解できず、あまり共感はできない。
「そ、そうかな………
(俺にはどこが可愛いの分からないけど)」
どうやらナヴィの風貌は、女の子には可愛くて魅力的らしい。
もしかしたら女子にはウケるのかもしれない。
そのナヴィの見た目の好みは今は置いておいて、ライムは先程から飛び交う、あるひとつの言葉が気になっていた。
“神獣”
ナヴィもこの言葉を使っていた。
果たして神獣とは一体何なのだろうか?
神獣のことを知っていると思われる、女の子にライムは尋ねた。
「それはそうと……神獣って何のことだ?」
「さっきあなたも見たでしょ。不思議な生き物の姿を!」
そう言われてライムは思い出す。
レオナが強力な力を放つ寸前に見た──幻影のような、この世のものとは思えない不思議な生命体の姿を。
「そうだ!! 大きなツノが生えた生き物!! 馬にも似た、不思議な生き物だったけど……あれが神獣!? 幻なんかじゃなかったのか!!」
“大きなツノ”、“馬にも似た生き物”
ライムの言葉のキーワードを便りにして、ナヴィはすぐさま気が付いた。
「もしかして……
神獣・ユニコーン!!」
見事、レオナの神獣の正体を見破ったナヴィに、レオナは驚く。
「へぇ~あんたほんとに何者だい? 神獣に詳しいなんてね!」
レオナにとっては、ナヴィの存在自体が一番の謎である。
ますますナヴィに興味が沸いてきているようだ。
神獣については無知のはずのライムだが、ユニコーンは耳にしたことがあり、容易に想像がつく。
「ユニコーンって知ってるぞ! 馬に大きなツノが生えたようなやつだろ? でもそれって架空の生き物なんじゃ……」
神獣の存在に疑問をもつライムに、同じ異界人の女の子が説明する。
「私達の世界では、そう呼ばれていた、主に神話に出てくる生き物達が神獣よ! 驚く話かもしれないけど、この世界には実在するのよ!」
「そんな伝説的な生き物が存在したのか! けど、その神獣ってのが、どうして神力のような力を発揮して、レオナはそれを使いこなしてくるんだ?」
神獣の存在を理解したライムだったが、それでもまだ疑問は残る。
ライムの疑問に、レオナは得意気に語った。
「神獣があたしに力を貸してくれるのさ!! そうすることで、あたしと神獣は一心同体となる……
あたしの体の中には、ユニコーンの魂が宿っている!!」
よほど自分の力に、自信を持っているのだろう。敵であるライムに情報を与えるとは。
しかし、この説明だけでは今のライムには到底理解できるはずがない。
だが、それでも……
「原理はイマイチ分からないけど、さっきの神獣の攻撃を食らうのはまずい……それだけ危険な存在ってのは分かるよ!!」
レオナのユニコーンの力が、危険なものだということは、ライムもしっかりと肌で感じ取っていた。
ライムの危機管理能力を、女の子は誉め称える。
「よく分かってるじゃない! あいつの懐に飛び込むのは危険よ! ユニコーンの力を甘く見てはいけない!!」
「とりあえずここは力を貸してくれ! えっと、名前は? 俺はライム」
「私は“ミサキ”よ。そうね、ここは協力しましょう! 私の神力はね──」
お互い自己紹介の途中であったが、そんなことはお構い無く、レオナは神力・リングを放つ。
「なめやがって……よそ見してる暇なんて与えないよ!!」
遠距離からのチャクラムの攻撃が、ライム達を襲う。
しかし……
キン!!! と、高音が鳴り響き、またもやミサキの神力によって攻撃は防がれた。
ミサキがライムの目の前で、しっかりと能力を見せながら解説する。
「これが私の神力よ!
“神力・シールド”
盾のようにバリアを張って守ることができるの」
ミサキが広げた手の平の先には、ほんの僅かに丸みを帯びた、巨大な壁のようなバリアが張られている。
どうやらこの盾の力で、先程もライムを助けてくれていたようだ。