第27話「間一髪③」
致命傷を与えることができず、レオナは悔しそうに唇を噛む。
「チッ……ウサギの余計な一言のせいで!! あのままだったら今頃、体は真っ二つだったのに!!」
一度間違いなく回避したはずの神力。
それが、一体なぜ後方から……?
ライムの頭は困惑していた。
「おまえも俺と同じ、銃じゃなかったのか?」
「あたしのは少し違う。
“神力・リング”
あたしの放った神力は、“ブーメラン”のように弧を描き戻ってくるのさ!!」
レオナの神力・リング
“チャクラム”と呼ばれる、円盤の形をした物体が、弧を描き飛び回る。
おまけに、その円盤は鋭利に尖っており、触れるものを斬りつける。
(なるほど……村中の至るところにあった傷跡は、このブーメランのような力によるものだったのか)
ナヴィの見つけた村にあった無数の傷跡も、これで解明された。
やはりこの女が、ヒザン村を壊滅に追い込んだ人物とみて、間違いない。
「せっかくウサギのおかげで死なずに済んだんだ。ならば、楽しんでいこうか!! “ゲーム”でも始めるかい?」
「ゲームだと!?」
生き生きとして戦闘を楽しむレオナは、ゲームと題して、ある技を繰り広げる。
「あんたの銃と、あたしのリング……どっちが強いかのゲームだよ!!
“侵略する円盤”!!」
そう言って、レオナは次々と神力を繰り出した。大量の数の鋭利な円盤が宙を舞う。
「な、なんて数だ!! これじゃ、かわしきれない!!
相手のゲームとやらに乗るのは癪だけど……望むところだ!! 全部撃ち落としてやる!!」
まるでレトロゲームを彷彿させるかのように宙を舞う円盤を、ライムは銃の力で相殺させるようにして撃墜させる。
この勝負はライムの勝ちだったのか、すべてのリングをライムは打ち落とした。
「やるねぇ! 銃の腕前も見事とは、なかなか骨のある男だね!!」
「はぁ……はぁ……くそっ……
(ゲームに……勝負に勝ったから、なんだってんだ)」
まんまと相手に乗せられ、ライムは息を切らすも、今のゲームのやり取りはライムにとって決して無駄な行いではなかったようだ。
苦労のすえに、ライムは神力・リングの弱点を見つけていたのだ。
(こいつと俺の武器は同じ遠距離タイプだ。でもこいつの攻撃には必ず……“投げる動作”がある!!)
ライムが力を溜めて神力を放つと同様に、レオナもリングを投げる際には、力を溜めるために“テイクバック”を取る必要がある。
ライムは、その攻撃の始動の重要性に、早くも気が付いていた。
また、ライムが気付いたのはそれだけではない。
(距離を取ってるから、その分にリングに威力が増す!
距離が近づけば威力も弱いし、俺のが始動は早いため、レオナが一度力を放てばヤツは隙だらけになるはずだ!!)
リングは距離と共に加速し、スピードをあげて威力を増している。
その事にもライムは気付き、早くもライムは敵の弱点を見抜いていた。
(よし、力を溜めながら近づいて、あとは俺がうまくあいつの攻撃を回避さえできれば──行ける!!)
ライムはそう頭を働かせ、ガンの力を溜めながら、思いきってレオナに近づいた。
いつになくライムの頭は冴え、その勇気ある行動は活路を見出だしたと思われたが……
ナヴィは嫌な予感を察知し、レオナに迫るライムを引き止めた。
「近づいちゃだめだ!! 今すぐ離れるんだライム!!」
「えっ……!?」
しかし、そのナヴィの助言も手遅れ。
ライムはすでに、レオナの懐に入り込もうとしている。
レオナの口元が緩んだ。
「もう……遅いんだよ!!!」
ライムの目には不思議な光景が映っていた。
(!!! なんだこれ……化け物……?)
ライムには、そこにいるレオナの姿が一瞬
──馬にも似た、見たことのない謎の生命体の姿へと変貌を遂げているように見えていた。
ライムが呆気に取られていると、その謎の生命体から突然ドリルのような力が放たれ、ライムの体をひと突きにしようと、襲いかかってきている。
「な、なんだこれ!? や、やばい!!」
明らかに危険な香りがする……
ライムは必死に回避しようと抵抗するが、あまりにもレオナとの距離が近づきすぎたため、今から回避することなど不可能だ。
ライムの体に、ドリルのように尖った、強力な攻撃が触れる──
そう思われた、その時
また別の“何か”がライムの体の前に現れ
キン!!! と、金属音のような高音と共に、ライムへの攻撃を、間一髪のところで防いだ。
「大丈夫? 怪我はない!?」
殺られると悟り、目を瞑っていたライムが、その“何か”を放出した声の主の方を見る。
「──だ、誰だか知らないけど、ありがとう」
そこには、見知らぬ女の子がライムの前に立っていた。
その女の子の姿を見て、レオナは顔を曇らせる。
「チッ……あんたか!! 余計な真似を!!」
突然の出来事で何が起きていたかさっぱりのライムだったが、そんな状況下でも、はっきりと分かっていた事があった。
(今の力は……神力!! この子も異界人!?
でも俺を助けたってことは……
解放軍じゃない!?)
第27話 “間一髪” 完




