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第26話「間一髪②」

 殺人を楽しむような女の態度が、ナヴィは許せない。



「やはりおまえがこの村を潰したんだな!? なぜこんなことを!! 村のみんなはどうした!!」



「へぇ~。喋るウサギとは……



 あんたは“神獣”かい?」



 ライムの知らない単語が耳に入ってきた。

 神力と似た響きの言葉に、ライムは勘違いする。



「しんじゅう……? 神力じゃなくて?」



 この島に来てナヴィに色々教わったが、ライムの知らないことはまだまだたくさんあるようだ。


 解放軍から飛び出た “神獣” というワードに

ナヴィはより一層、警戒心を高めた。



(その言葉を知ってるってことは……)


「ライム!! ぼーっとしないで!! 油断は禁物だよ!!」



 ナヴィは大声をあげ、ライムにエンジンをかけるように活をいれる。



「お、おう……!」



 ナヴィは再度、女改め、レオナに質問を繰り返す。



「僕のことはどうだっていい……村のみんなはどうした? 異界人同様、殺したっていうのか!?」



「何勝手な事言ってんだ……あくまで手にかけたのは異界人のみさ!

 他の村の住人は、みんな逃げ出したんだよ! あたしの力を恐れ、全員いなくなったのさ!!


 それはそうと──あんたも異界人なのかい?」



 レオナは鋭い眼光でライムを睨み付けている。

 ライムも負けじと睨み返し、堂々と答えた。



「だとしたらどうする?」



「それなら……あたしがあんたを殺すまで!! この島では異界人なら、殺してもいいルールだからね!!」



 とんでもないレオナの暴論に、ナヴィの怒りは最高潮に達した。



「ふざけるな!! そんなルールはない!! 人の命をなんだと思ってるんだ!! 異界人だからって許されるわけないだろ!!」



「じゃあ仮にもし、目の前に自分のペアがいたらどうするんだ? 見てみぬフリをするって言うのかい?」



「そ、それは……でも関係ないだろ! おまえが殺したのはペアじゃない。そんなもの──論ずるに値しない!」



 少し押され気味のナヴィに代わり、ここはライムが対処する。



「なんだっていいよ。ナヴィ。


 俺は──おまえを許さない!!


 それだけは、何が理由だろうと関係ない!!」



「あぁ? 偉そうな口を……」



「おまえが解放軍なら、知っているのか? キリシマを……?」



 トップのキリシマのことを、ライムはレオナに尋ねるも、レオナは思わぬ反応を見せる。



「キリシマ……?あぁ、解放軍の頭のことね。さぁ、知らないね。会ったこともない」



「なんだと!? じゃあなんでおまえは解放軍なんかに……」



「理由? そんなもの単純さ! 楽しいからに決まってる!

 解放軍にさえ入れば、人殺しも認められるっていうからね! 解放軍の思想なんてもの、あたしには興味ないね」




(──そ、そんな道理が……まかり通っていいものなのか!?)



 レオナの発言にライムは驚かされた。


 それは解放軍の者のすべては、てっきりキリシマに感化されて入隊したものだと思っていたからだ。

 すべての者が皆、そういった思想を持っているわけではないらしい。


 レオナの解放軍に対する考え方はさておき、すでにキリシマの情報はないと判明している。


 当初の予定通りに事を進めようと、ナヴィはレオナに聞こえないよう、ライムに小声で話しかけた。



(ライム。この女、どうやらキリシマのことは知らないみたいだ。確かにこいつは頭くるけど、ここは逃げた方が……)



 ナヴィは怒りの気持ち圧し殺し、なんとか平常心を保っていた。

 しかし今のライムには、ナヴィの声は響きはしない。



「いや、最初はそう思ってたけど……


 やっぱりやめだ!! ナヴィ! 解放軍に入った理由が、楽しいからだって!?

 そんなふざけた理由で、この村の人達は大変な目に!! こんなことが許されていいわけないだろ!!」



(ラ、ライム! 落ち着こうよ!!)



「さっきまで怒ってたのはナヴィの方だろ!? 決めた!! 俺はここでこいつを倒す!!」



 ナヴィの冷静な判断を無視し、ライムが先に手を出した。


 神力・ガンを発動させる。

 ライムの右手が光に包まれた。



「神力!? やっぱりあんたも異界人か! あたしとやろうってのかい!! いいね、血が騒いできたよ!!」



 異界人との戦いに飢え、うずうずしていたレオナの心は踊っていた。



「笑ってられるのも今のうちだ! リミット・バースト!!」



 ライムは溜めたガンの力を放つ。


 だが、レオナはいとも簡単にライムの攻撃をかわす。

 明らかに戦闘慣れしているのが、これだけでも十分に分かる。



「へぇ~……あんたも、あたしに“似た”能力を使うんだね」



 ライムの神力を見たレオナが、意味深な発言をしている。


 口で言っても止まることをしなかったライムに、半ば呆れるようにして、渋々ナヴィも腹をくくった。



(僕も腹は立つけどさ……もう!仕方ない!! ライムがやるって言うなら、僕もやってやる!!)


「ライム! 油断しちゃだめだよ! 相手がどんな力か分からないんだから、気をつけて!!」



「あぁ、分かってるよ!!」



 ライムの先制攻撃は不発に終わり、今度はレオナの番だ。



「こっちからも行くよ!!」



 レオナはテイクバックを取る動作で、何かを“投げる”ようにして神力を解き放った。


 ライムもレオナ同様に、相手の攻撃を見切り、うまく攻撃をかわす。



「なんてことないね! こんな攻撃!!」



 完全に攻撃を回避したと判断し、ライムは余裕を見せているも──


 次の瞬間、ナヴィの叫び声が聞こえた。



「ライム危ない!! 後ろだ!!」



「えっ……?」



 ナヴィの声を聞いたライムは、後方を振り返る。

 すると、回避したはずのレオナの神力が、背後から迫っていた。


 すぐさまライムは、その攻撃をかわそうとするが、気づくのが遅かったためか、完璧には避けきれずライムの脇腹をかすった。



「くっ……」




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