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第20話「キリシマ①」

 ライムはポケットから、ある一枚の紙を取り出した。

 くしゃくしゃに丸めてあった紙を広げて、突きつけるようにしてナヴィに見せた。



「そ、それは……」



 ナヴィはライムから目を反らし、目を合わせようとしない。

 

 ライムが突きつけた“あるもの”

 それは村の酒場で見つけたものだった。






 カコイマミライ

~時を刻まない島~


第20話

 “キリシマ”






 これはファブル村の酒場での出来事の話。

 酒場でトウゴが寝てしまい、一人取り残されたライム。

 何気なく酒場の中をボーッと眺めていると、ライムはとんでもないものを見つけてしまったのだ。




ーーーーーーーーーーーー




『こ、これは……』



 あまりの衝撃に体が固まる。

 ライムが見ていたのは、一枚の“指名手配”の紙だった。


 呆然とするライムに、酒場のマスターが気づく。



『そいつがいなければ……この島も平和だったんだけどな。そいつが現れてからだ。解放軍と名乗り、この村や島中を荒しだしたのは……』



 その手配書には写真付きで、こう書かれていた。





解放軍 頭首


R.KIRISHIMA




(ライム キリシマ!!

 

 俺……?解放軍のトップが……?嘘だろ……偶然か……?)





 果たして、こんな偶然があるのだろうか……


 ライムは村人達との、ある会話を思い出した。




『きりしま!!!?』



『えっ? そんなに俺の名前が変でしたか……?』




 キリシマと名乗っただけで、騒然とする村人達。

 そしてトウゴの忠告……




『“キリシマ” この名前を言うことだけは、避けた方がいい』




 ライムの頭の中にあった疑問が、次々と解き明かされていく。



(でも……これは本当に俺なのか……?)



 手配書にあった写真

 それはどうみても自分ではない。 


 この島に来てから、年齢は判別できない……

 だが、この写真の人物が確実に自分より老けていて、歳をとっているいうことは分かる。

 ライムは、じっと目を凝らして写真を見た。



(どことなく俺に似ている……



──そうか!! そういうことか!!)



 考えた末、ライムはひとつの答えを見出だした。



(この手配書の人物は……





 未来から来た自分……こいつは俺の“ペア”だ……)



 ライムは声を震わしながら、酒場のマスターに話しかけた。



『この手配書……もらってもいいですか?』



『あぁ、別に構わないけど。それよりおまえ……随分と顔色悪いぞ? 大丈夫か?』



『えぇ……大丈夫です。トウゴさんが起きたら、よろしくお伝えください。

 旅に出た……と。探さないでください……と』




 こうしてライムは、逃げるようにして酒場を後にした──




ーーーーーーーーーーーー




 ライムはナヴィに手配書を突きつける。



「説明してくれないか? ナヴィ。何か知ってるんだろ?」



 ナヴィは下を向いて、中々ライムと目を合わそうとしない。

 その反応を見て、ライムはずくに勘づく。

 そしてナヴィに向けて強く言った。



「大丈夫。覚悟はできてる。だから……ナヴィが知ってることを……事実を教えてくれないか?」



 ナヴィはゆっくりと顔をあげ、ライムの顔を見た。


 ライムはずっとナヴィの目を見つめている。

 ナヴィはライムから強い意志を感じた。


 その強い気持ちにナヴィは負け……



 “すべて”を話すことを決めた。



「分かった……話すね。何度か話そうと思ったんだけどね……タイミングを逃してここまで来てしまった」



 そう前置きをして、ナヴィは険しい表情で、ライムに真実を告げた。



「その写真の人物……



 それはもう一人の君。君のペアだ」



「やっぱり……」



「この世界に時間はないから、僕も年齢は詳しくは分からないんだけど……その人物は、恐らく元いた世界の、数十年後のライムだ」



 例え時の支配者といえど、この島にいるかぎり

 “時間”が関与する、“年齢”を認識することはできない。


 そのためナヴィは、数十年とあいまいな数字をライムに告げるしかできなかったわけだが──


 実際の所は約20年である。

 だが、この具体的な数字を、二人が知ることはない。




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