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第17話「ペア②」

 ダイキの理屈──解放の意志に、違和感を覚えたライムは反発した。



「それならダイキ。おまえだって俺と同じ異界人なんだろ? だったらおまえも同じ事言えるんじゃないか?

 おまえが死ねば、おまえのペアも解放される!!」



 最もなライムの理屈に、ダイキは笑って答えた。



「はっはっは! 確かにな。おまえの言う通りだ。でもな……理屈じゃねぇんだよ」



 ダイキは再び、大きく両腕を振りかぶる。


 足をやられてかわすことのできないライムは、恐怖にとらわれ、全身が震えていた。

 それがダイキの目にも見てとれる。



「な? 人は死ぬのが怖いんだよ……俺だって同じさ……死ねって言ったって、簡単に死ぬことはできない。

 だから俺はこれからもこの世界で生き続ける……おまえみたいな弱者を殺して──人生を謳歌するためにな!!」



 ダイキが振りかぶった両腕を、全力で降ろそうとしている。


 そうはさせまいと、ライムは必死に抵抗した。

 足はやられはしたが、手はまだ使える。



(もうヤケだ!! このまま黙ってやられるよりはマシだ!!)



 ライムは何も考えず、めちゃくちゃに神力・ガンを使った。

 ダイキや手下達だけではない、周りの木、隠れていたナヴィの所まで──適当に弾は飛んでいく。


 あまりにがむしゃらに放った銃の攻撃に、思わずダイキは両腕を降ろした。

 すかさずガードに徹したが、間に合わず、弾丸のひとつがダイキの体にヒットするも──



「ん?なんだ……大したことないじゃないか。痛くも痒くもないぞ!!」



 ダイキはものともしていない様子だった。

 そのダイキの堂々とした態度に、ライムは驚いた。



(えっ……なんでだ……間違いなく当たってたはず! まったく効いてない!?)



 驚いていたライムだったが、ライムは更に別のことにも気づく。


 先程、木の上から何人もの手下達を狙撃したにも関わらず、いつの間にか、その手下達も平然とした姿でライムの前に立ちはだかっていたのである。


 一度ダメージを与えたのは間違いないのだか、どうやら致命傷を与えるまでにはいかなかったようだ。

 ずっとライムの神力に警戒していたダイキは、肩透かしを食らった気分だった。



「今まで何を恐れていたんだ俺は……まぁいい。もう一度力を溜める(・・・)まで……

 それでおまえは、今度こそ終わりだ!! “ブレイクハンマー”の一撃で、解放してやる!!」



 ダイキは降ろした両腕を再び持ち上げた。

 またライムに狙いを定める。

 ライムはもう完全にやる気を失っていた。



(俺の攻撃も効かないんじゃ、勝負は初めからついてたんじゃないか……やるだけやってみたけど、だめだったみたいだな……)



 ライムは死を受け入れるかのように、今度は抵抗することなく目を閉じた。

 ライムは勝負を捨て、諦めた。


 しかし、ライムが諦めようとも、まだこの“人物”は諦めてはいない。

 その人物は、勇気を振り絞って、草影から飛び出した。

 そう、その人物とは……




 時の支配者、ナヴィだ。


 ナヴィは大きくジャンプし、後ろからダイキの両目を、自らの両手で覆うようにして隠した。


 突然目の前が真っ暗となったダイキは慌てる。



「な、なんだ一体! 誰だ!? 何が起きている……」



 ダイキは謎の物体を振り払おうと暴れ回っている。

 それに負けぬよう、振り落とされぬようとナヴィは必死だ。決して手を離すことはしない。



「あー! あのウサギは! 異界人といっしょにいた謎のペット!!」



 手下がナヴィの存在を明かす。

 もはやナヴィはライムのペット扱いだ。



「ウサギだと!? なぜウサギが……? 邪魔をするな!!」



 ダイキには手下の言っている言葉の意味が、よく分からなかったが、更に強く体を揺らして、ナヴィを振り落とそうとしている。



「ライム!! 力を放つだけじゃだめだ。力を……神力を“溜めて”放つんだ!!」



 体を揺らしながらも、ナヴィはライムに叫んでアドバイスを送る。


 ダイキの僅かに放った一言を、ナヴィは聞き逃しはしなかった。

 その大きな耳で、しっかりと捉えていたのだ。 



「ダイキは言った。力を“溜める”とね! 神力を極限まで溜めて、一気に放出させるんだ!!


 そして──放て!!


 ライムの必殺技 “リミット・バースト”を!!!」



「力を溜める……?」



 ナヴィの言葉を聞いて、ライムもすぐにピンときた。


 ダイキが神力を使う時……

 必ず腕を大きく振りかぶっている。


 そのまますぐ攻撃には移らない。

 決まっていつも、何かしらの予備動作がある。


 この時ダイキは毎回、力を溜めていた!

 そうに違いない。



(そうか!! 溜めるってのはそういうこと か!! いまいちやり方は分からないけど……とりあえずやってみるしかない!!)



 ライムは右手に力を集中させた。

 すると、ライムの右手がどんどん熱を帯びてきているのが感じられる。

 それは次第に、強く──大きくなっていく。



(くっ……力が爆発してしまいそうだ……)



 もう片方の左手で、右手をしっかりと押さえつけた。更にライムは力を溜め続ける。



(まだだ……こんなもんじゃない!! もっと──もっとだ!!

 ギリギリまで、ナヴィが粘って稼いでくれる間まで、力を溜めてやる!!)



 ライムの小刻みに震える右手に気付いた手下達は危機感を覚えた。



「──あいつ……力を溜めることを覚えたのか!?

 このままだとまずい!! 今すぐやつの攻撃を止めるぞ!!」



 手下達は一斉に、ライムに狙いを定め飛びかかった。

 その手下達に対し、ダイキは未だにナヴィを振り払うことに必死になっている。



「しつこいウサギめ!! いい加減にしろ!!」



(もう限界……ライム! あとは任せた!!)



 限界を迎えたナヴィは、自から離れるようにして、ダイキの背中を蹴って跳びはねた。

 ここでようやく、ダイキの目の前の視界が晴れる。




「サンキュー!! マイペット!!」



 しかし、そこには……


 光で覆われて、眩しすぎて目も当てれないほどの、巨大な力に包まれるライムが待ち構えていた。






第17話 “ペア” 完

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