第15話「狙撃の才能②」
ライムは“ある場所”に隠れ、遠くから解放軍を狙う策に出ていたのだ。
(まともに戦ったって勝てやしないんだ……俺には神力・ガンがある! 距離さえとれれば、こっちのもんだ!!)
決してライムは怖くて、解放軍から逃げたのではない。
すべてはこのため。
距離をとって、遠くから狙撃するためだったのである。
ナヴィは茂みからひょっこりと顔だけを出し、戦況を見守っている。
ナヴィにもライムの姿は見えなかったが、寸分の狂いもなく解放軍を狙い撃ちする、ライムの銃の腕の実力には驚かされていた。
(すごいじゃないかライム! 神力をもう使いこなしているまでもか、こんな才能を持っていたなんて!!)
次々と手下を倒していくライム。
どこから飛んでくるか分からない銃弾に、手下達は怯えていた。
しかし、ライムの真の狙いは解放軍の手下ではない。あくまで狙いは、大将のダイキだ。
(くそっ、手下ばっかりじゃ意味がない。肝心のダイキを狙わなきゃ。でも……これじゃ厳しいな……)
ダイキは手下達をいいように使っているのか、自分の周りを囲むようにして、盾にしている。
この状況下では狙い撃つのは困難だ。
「どこだ……姿をあらわせ!! 異界人!! 隠れてないで出てこい!!」
こそこそと隠れるライムに、ダイキは苛立ちを覚える。
じっとしていればよかったものの、落ち着きのないダイキは、ライムを見つけるためにその場を少し動いた。
(来た!! ここだ!!!)
そこでライムにチャンスが訪れる。
ずっとこの時をライムは待っていた。
狙いすましたかのように、ライムは神力・ガンを放ち、ダイキを撃つ。
撃ち取った!!
ライムはダイキを完全に捕らえた、その自信があった。
だが、さすがは解放軍を従える男。そんなにダイキも甘くはない。
銃声と共に、弾丸が放たれた瞬間
光を発していることにダイキは気が付いた。
その光に反応したダイキは、自分の両手を体の前に出して肘を曲げ、体を覆い隠すようにしてガードする。すると……
キン!!!
と、高音が鳴り響き、ダイキはライムの神力の攻撃を防いだのだ。
(──な、なんで!? 完全に当たったはず?)
狙いは完璧だったはずのライムは驚いた。
しかし、ダイキは何事もなかったかのように、堂々とした立ち振舞いで、笑みを見せている。
「甘かったな! 異界人! 俺の“神力・ハンマー”は何も殴るためのものだけじゃねぇ……この鋼鉄のようになった腕で、おまえの攻撃も弾き返すことができる!!」
ライムは完全にダイキの神力のポテンシャルを侮っていた。
使い方次第で、神力は様々な形で応用できるのだ。
それまでもか、更なる悲劇がライムを襲う──
「そんなところに隠れてやがったのか。どうりで見渡しても見つからないわけだな!!」
ダイキがとうとうライムの居場所を見破ったのだ。
弾丸が飛び出ると同時に放たれる、“光”の位置をダイキはしっかりと記憶していた。
ままばたきほどの、僅かな瞬間さえも見逃さない。
手下達には、まるでライムの居場所は分からす、ダイキをおだてるように褒め称える。
「さすがダイキさん! あの一瞬で気づくなんて! それにしても一体どこに……」
ダイキはゆっくりと移動し、大きな木の前まで歩み寄った。
まんざらでもない笑顔で、得意気に居場所を手下達に伝える。
「まぁな。俺様にかかれば、たいしたことはない!! やつはここにいる……
この木の“上”にな!」
実はライムは村から走って逃げたような素振りを見せていたが、いち早く木の上に登っていたのだ。
そして、解放軍が射程圏内に来るまで、ひっそりと待機し、近づいたところを狙撃していたわけだ。
「さぁ、降りてこい! 異界人!!」
(誰が降りるものか……このまま居過ごせば、なんとかなるか?)
ダイキの声かけに、もちろんライムが応じるわけはない。
ダイキのデカイ声だけが響き渡っている。
降りてこないと判断したダイキは、右手を大きく振りかぶり、大木に向かって思い切り拳をぶつけた。
すると大木は、いとも簡単に折れ、パンチをお見舞いした部分よりも上にある木が、徐々に倒れ始める。
木の上にいたライムは、どうすることもできない。
(わわわわ! やばい! 倒れる!!)
ドシーンと大きな音をたて、大木は完全に倒れ
それと同時に、木の上に隠れていたライムの姿はあらわになった。
「痛ててて……」
バランスを崩したライムが地面に寝そべっている。
ダイキが寝そべるライムの前へと立った。
「へっへっへ! 見つけたぞ。異界人!! もう逃げも隠れもできねぇな!!」
ダイキだけでなく、手下達までライムの傍まで集まっている。
ライムは解放軍に包囲され、完全に逃げ場を失った。
第15話 “狙撃の才能” 完