第14話「狙撃の才能①」
解放軍ダイキと村人トウゴのいざこざを、遠目で見ていたライムとナヴィ。
ナヴィの粋な計らい?
──により、ライムは解放軍ダイキの前に立ちはだかった。
ダイキはライムの突然の出現に、高笑いする。
「はっはっは! まさか自分から姿を現してくるとはな!!」
喜ぶダイキに対し、心の準備ができていないライムは焦っていた。
(やっべ~……完全に見つかった……どうしよう……)
カコイマミライ
~時を刻まない島~
第14話
“狙撃の才能”
目の前に現れたライムの姿に、トウゴは自分の身よりも、まずライムの心配をした。
「ライム、何で戻ってきたんだ! 解放軍はおまえを狙ってるんだぞ!」
(なんでって……俺は……)
ライムは体の震えが止まらなかった。
けれども、トウゴの顔を見て肝心なことを思い出す。
(──そうだよ! 俺はトウゴさんを助けに来たんじゃないか! それなのに、俺……何一人でビビってるんだよ!
だったら……だったら!!)
ライムの顔色が急変した。
そして何かを思い付いたように、ライムは村の外へと一目散に走り出す。
「また逃げるのか!! 追うぞ!!」
逃げるライムを解放軍は追った。
自ら飛び込んできたにも関わらず、いつかの再現のように逃げ出すライム。
その姿にナヴィも驚き、慌ててライムの後を解放軍と共に追いかけた。
「ちょっとライム! なんで逃げるんだよ! 村人を助けに来たんじゃないのか!?」
「そう、助けるんだよ! だからこれは逃げてるわけじゃない……こういう作戦だ!!」
完全に言い訳に聞こえる……
ナヴィには、ただ逃げる口実を作っているのだけなのではないかと思えていた。
ライムの少し後ろを走るナヴィの存在に、昨夜ライムの相手をしていた手下が気づく。
「あの変なウサギ!! やっぱりあいつも異界人と一緒だったな!」
また、相手をしたもう一人の手下が、ダイキに注意を促す。
「ダイキさん! 気を付けてください! あいつは銃のような神力を使ってきます!」
ライムが神力を使えるようになったことを知り、ダイキは不適な笑みを見せていた。
「あいつ神力を使えるようになったのか! これは楽しみになってきたな!!」
どうやらダイキは、ライムとの対戦を楽しむ余裕まであるようだ。
しかし、走ってライムを追うダイキは、あることに気づいて、すぐさま顔を曇らせた。
「それにしてもあいつ──どんだけ足が速いんだ!!」
異常なまでのライムの足の速さに、ダイキを含めた解放軍は驚きを隠せない。
ライムと解放軍達の差はどんどん開いていく……ナヴィもそのスピードには、当然付いていけなかった。
「もうだめ……ライム速すぎ」
追いかけることを諦めたナヴィは、得意技の如く、茂みの中へと隠れ込む。
ライムとの距離を取られた解放軍達は、ついには完全にライムの姿を見失った。
「くそっ、どこ行きやがった! 今度こそ逃がすわけにはいかねぇ!!」
手分けしてダイキと手下達は、くまなくライムを探す。
「これで逃げられると思うなよ! 前回とは訳が違う。前回は夜だったから、うまいこと逃げられたが、今回はそうは行かないぞ!!」
以前ライムが逃げられたのは、運がよかっただけに過ぎない。
前回は日没を過ぎ、夜を迎えようとしていた時だった。
日が沈むと真っ暗闇に包まれるこの島……だからライムは簡単に逃げることができたのだ。
ただし、今はまだ日は昇ったばかり。視界は随分と良好だ。
前回のように、この解放軍の手下達の数からして、逃げきることは不可能だろう。
「少しの足音も聞き逃すなよ? まだやつはこの辺りにいるはずだからな」
ダイキを筆頭に、解放軍達は聞き耳を立てる。
辺りは静まり返った。
ナヴィも自分の居場所がバレないようにと、物音をたてまいと必死だ。
沈黙状態がしばし続いた。
風の音だけが響き渡る。
待つだけでは我慢できなくなり、痺れを切らしたダイキが、先に動いた──
その時!!
何かの物音と共に、解放軍の手下がパタリと突然倒れ始めたのだ。
「──何!? どうした!?」
突然の出来事に、ダイキは慌てている様子だ。
すると、その慌ててる間に、今度は別の手下がまたしても倒れ込んだ。
「な、なんだ……一体何が起きている?」
何が起きているのか、ダイキはさっぱり状況を掴めていない。
ダイキは焦るも、倒れた手下が何かを伝えようとしている。
すぐさまダイキは手下のもとへ駆け寄り、耳を澄ました。
「あの異界人の仕業です……銃の神力で、こちらを狙撃しています……」
「なんだと!? 一体どこから……」
手下から事情を汲み取ったダイキは、銃声があったと思われる方角を見渡す。
しかし、ライムの姿はどこにも見えない。