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第13話「時の塔②」

 ライムは苦肉の策と言ってしまった、先程の自分の発言を恥じた。


 犠牲者は自分達だけじゃない。

 時の支配者と呼ばれる者達にも、厳しい決断の迫る、苦悩と葛藤があったのだと。



「僕が事件のことを知るのはここまで。いつかは僕がラビ様を引き継いで、時の支配者になる予定だったけど……

 ラビ様がいなくなってしまったことにより、急遽、僕が時の支配者を継ぐ形となったんだ」



「そ、そうだったのか……


(普段、明るく振る舞っていたように見えたけど、ナヴィもとても辛い思いをしていたんだな……

ごめん、ナヴィ……)」



 ライムは心の中で、ナヴィに謝罪した。


 兄を亡くしたにも関わらず、何事もなかったかのように明るく笑顔を振る舞うナヴィの姿勢に、ライムは尊敬すら覚えた。



「まだまだ未熟な僕だけど、ライムを全力でサポートするよ! まずは時の塔を目指して進んでいこう!

 そこには僕の仲間もいる。行けば必ず役にたつはずだ!」



 またしても、先程まで苦しい顔をしていたナヴィが、笑顔を見せて話していた。


 ナヴィに釣られるようにして、ライムも笑顔を作る。苦い顔をするのはもうやめた。



「あぁ、そうだな! とりあえずまずは、その時の塔に進もう!!」



「決まりだね! じゃあ時の塔目指して………」



 二人の意見は固まり、目的地へ行くことに決まった。

 だが、ライムは突然ナヴィを止める。



「──そう言いたいところなんだけど、ちょっと待ってくれ!!


 ひとつ不安なことがあってね。それだけは片付けておきたいんだ。時の塔に向かうのは、それからじゃだめかな?」



「ん? 何のこと?」



 見当がつかないナヴィは、首を傾げた。

 

 先程、暗い顔はよそうと、ナヴィに習ったばかりなのに、ライムは少し険しい表情を浮かべていた。



「一度、村に戻りたいんだ。嫌な予感がしてね……」





 一方その頃、村人トウゴと出会った


 “ファブル村”では……大変なことが起きていた。



 昨夜ライムを逃がした解放軍達が、ファブル村へと訪れ、ライムを探しに来ていたのだ。



「やつはどこだ? かくまったって無駄だ。いるんだろう? 異界人がよ!!」



「し、知らない! あの子とは知り合ったばかりなんだ。あれから、まったくあの子を見かけてない」



 解放軍ダイキは、手始めにトウゴを狙う。

 ライムと関わりを持つ者として、一番に疑いの目をかけていた。


 ライムをかくまっていると睨むダイキは、トウゴに迫る勢いで、殺気立てている。


 そんな危険な状況にも関わらず、他の村の住人達は、遠目からトウゴ達を見ているだけだった。



「ほら見ろ……異界人と関わると、ろくなことはない。トウゴは人が良すぎるんだよ。自業自得だ」



 村人達は冷たく、トウゴを助ける気配はないようだ。


 神力を扱う異界人に、敵うわけがない。相手にしないのが吉。目をつけられれば最後だ。


 一向にライムの居場所を割らないトウゴに、ダイキは痺れを切らした。



「まだヤツを庇うつもりか。ならば、痛い目を見ないと分からないらしいな!!」



「し、信じてくれ!! 本当に俺は、あの子の居場所を知らないんだ!!」



 ダイキがトウゴに手をかける。このままでは、トウゴは殺されてしまう!!




 絶体絶命の、このピンチに……


 村の遠くの方で、ダイキとトウゴのやり取りを見つめる者達がいた。




「ほらやっぱり。嫌な予感がしたんだよな」



「一度村に戻ってきて、正解だったね!」




 ライムとナヴィだ。


 また村に自分を探しに解放軍が来るのではないかと、ライムは予想していた。

 まさにそのライムの予想は的中する。


 あとはライムが、この危機を救うだけだが……


 果たして、ライムはダイキに勝てるのか? ナヴィにはそんな不安が頭をよぎっていた。



「ライム。どうするつもり? せっかくダイキから逃げられたのに」



 ライムとナヴィは木の裏に隠れて、一部始終を見ている。



「どうするって……このまま放っておくわけにもいかない。

 トウゴさんは何も知らない俺を受け入れて、優しくしてくれた俺の恩人だ」



「じゃあ戦うの?」



「そうするしかないだろ。大丈夫だ! 俺にはこの“神力・ガン”がある!

 勝てる、勝てる……絶対に勝てる!!」



 ライムは右手を見つめ、暗示をかけるように自分を鼓舞していた。

 その際、ナヴィがライムの体の異変に気づく。



「ライム、大丈夫? 体が震えてるよ?」



 ライムの体は恐怖で震えあがっていた。



「悪かったな。怖いんだよ。あんなデカイ男相手に戦うなんて……

 でもトウゴさんがあんな目にあってるのも、全部俺のせいなんだ。俺がなんとかしなきゃ! それに──」



 ライムは自分の顔を両手でひっぱ叩いて、気合いを入れ直す。



「この先、険しい旅になるはず……きっとまた解放軍は現れる。そうだろ?

 こんなところでビビってたら、元の世界に帰ることなんて到底できない!!」



「確かにね。ライムがやろうとすることは決して簡単なことではない」



 ライムの覚悟を知ったナヴィは感心した。

 怖がるライムをよそに、ナヴィの方は興奮してきている。



「よし、分かった! ライムがそうまで言うならやってやろう! 

 神力を使いこなす実戦、いい練習相手だ! 行こう!! 倒そう、解放軍を!!」



「あぁ、分かってるって……

 

 行く……行くよ!!」



「ん……? ライム……?」




 ライムが行くと言ったものの、動こうとする気配はない。

 やはりまだ怖じ気づいている様子だ。



「気持ちではさ、『やってやろう』って感じなんだけど……どうも体がビビって言うことを聞かなくて」



「もう──仕方ないな!」



 呆れたナヴィは、ライムのためを思って、ある行動に出た。



「こうすればいいんでしょ!!」



 ドン!!


 

 ナヴィはライムの背中を、強く押した。

 突然背中を押されたライムは、思わず大声をあげる。



「痛いな! なんでいきなり押すんだよ!!」



 ナヴィはしてやったりの表情で、口元は緩んでいた。



「これが正真正銘の──背中を押す って、やつだね!」



 木の裏に隠れていたライムが外に押し出され、姿をさらけ出す。

 物音とライムの大声に、解放軍の手下が反応した。



「あっ! おまえは!!!」



「あっ………」



 ライムはナヴィのおかげで?

 昨夜ライム達を追い回した、解放軍の手下に見つかってしまったのだ。



「ダイキさん、いました! 異界人です!!」



「何!? はっはっは! まさか自分から姿を現してくるとはな!!」



 不本意だったライムは、ひや汗をダラダラと垂らし、頭の中が真っ白になっていた。



(やっべ~……完全に見つかった……どうしよう……)






第13話 “時の塔” 完

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