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第10話「存在しない者①」

 丸腰のライムは、解放軍の手下達に追い込まれていた。

 ここはライムの中に眠る、“神力”を発揮させるしかない。



「考えるんだライム。よく考えろ!! 必ず君にも神力は眠っている……

 信じるんだ。自分を!!」



 ナヴィはアドバイスを送るも、ライムはどうすることも出来ずに立ち尽くしていた。



(考えろ、信じろっていったって……分かんないよ。俺には何が……

 一体どんな力が眠ってるっていうんだ!)






 カコイマミライ

~時を刻まない島~


第10話

 “存在しない者”






 手下達はライムに注意しながらも、草むらの中に隠れるナヴィの存在にも警戒していた。



「この辺りから声が聞こえたぞ! あの謎の生き物……言葉を話せるのか!!」



 足を引っ掛けられた手下は、ナヴィに怒りの矛先を向けているが、もう片方の手下は至って冷静だ。



「待て! あの変な生き物に注意するのは勿論だが、まずは異界人の方だ!

 まだこいつは神力が使えない。力が目覚めるまえにこいつを先に解放する!!」



「確かにそうだな! へっへっへ……その後にあの変な生き物を、俺があの世に送ってやる!!」



 二人が結託して、ライムに狙いを定めて迫ってくる。


 絶体絶命のピンチ。

 一人でも厳しいのに、さすがに二人を相手にするのは無理がある。



(やばい……頼む、俺。まだ死にたくない。やり残したこともたくさんある……

 神力、何の力だか分からないけど、俺に力を貸してくれ!!)



 ライムはひたすら願った。

 しかし、無情にも何も起きる気配はない。


 ライムは諦めるかのように、目を瞑る。



(何も起きないじゃんか……短い人生だったな……


 でも俺が死んだら、もう一人の俺が元の世界に戻れるのか? なら、それはそれで悪くないか……


 頑張れよ! もう一人の俺!)



 完全にライムは自分の死を覚悟した。





 その時だった。ナヴィの叫び声がこだまする。



「目を開けろ!! ライム!! 右手だ。自分の右手を見るんだ!!」



 その叫び声と共に、ライムは目を開け、とっさに自分の右手を見た。

 ライムの右手は、暗闇の中でぼんやりと光を放っていた。


 その不思議な光景を見て、手下達は身構え、足を止める。



「な、なんだこの光……」



 ライムは光る自分の右手を、じっくりと眺めた。

 すると、そこには先程とはまるで違う映像が、ライムの目には飛び込んできていた。

 思わずライムは口に出す。



「えっ……俺の手……



 拳銃……!?」



 ライムの目には、自分の手が拳銃になっているように見えていたのだ。


 手に拳銃を持っているのではない。自分の手そのものが拳銃と化している。


 幻でも見てるかのような錯覚を受け、ライムは目を擦って、もう一度自分の右手を確認した。



(気のせいか……?)



 やはり幻だったのか、今度は、何てことはない、いつもの自分の右手だ。


 ただの目の錯覚とライムは片付けようとしたが、ナヴィはライムの呟いた一言を聞き逃してはいなかった。



「撃て! ライム!!


 “神力・ガン”


 それが君の神力だ!!」



「神力・ガン!? でも撃てって、どうやってやれば……」



 ライムはなんとなくのイメージで、右手の親指と人差し指を立て、ピストルのような形を作った。

 そして、指先を手下達に向ける。


 すると、ライムの指先が突然光り始め、光ると同時に


 パーン!! と、大きな音を立て、光の弾丸がライムの右手の人差し指から飛び出た。



「な、なんだ今の!!」

 


 一番驚いたのは当人のライムだった。

 光の弾丸は手下の肩に当たり、肩から血が垂れ落ちている。



「くっ……こ、れが貴様の神力か!!」



「これが俺の力……」



 自分の力に驚き、ライムは自分の右手を見つめていた。


 ライムが唖然としている間に、今の銃声に誘き出されるような形で、解放軍の手下がライムのもとに集まり始める。



「なんだ? 今の銃声は?」



「こっちの方から聞こえたぞ!!」



 ゾロゾロと足音を立て、大勢の手下達がこちらに向かってくるのが分かる。

 危険を察知したナヴィは、草むらから飛び出し、ライムの前に姿を現した。



「追っ手が来る!! さすがに大人数相手じゃ厳しい。ここは逃げよう! ライム!!」



「結局逃げるのかよ!!」



 姿を現したナヴィを見て、手下の一人が大声をあげた。



「あー! 変な生き物! な、なんだこれは……ウサギか!?」



 ナヴィという立派な名前があるにも関わらず、変な生き物、ウサギ呼ばわりに、ナヴィは腹を立てている。



「ウサギウサギうるさいなー! ライム、もう一人の持つランプが邪魔だ。撃ち抜いてくれ!

そうすれば完全にここは真っ暗になる!」



「撃ち抜くって……イマイチやり方が……」



 どうやったのか自分でも定かではないが、ライムは先程と同様に右手でピストルの形を作った。

 そして手下が手に持つランプ目掛けて、指先を向ける。


 すると、またしても弾丸は放たれ、弾丸は見事にランプに命中。

 ランプは破壊され、周囲は完全に闇に包まれた。



「こ、これでは何も見えん!」



 再び響き渡る銃声に、追っ手が反応する。



「また音が聞こえたぞ! この辺りか?」



 更にこちらに近づいて来る追っ手に、手下は助けを求めた。



「こっちだ! こっちに来てくれ! 異界人と変な生き物がここにいるぞ!!」



 囲まれたら大変なことになる。再びライムはナヴィを抱きかかえて走り出した。



「早く逃げなきゃまずい! 行くぞ!ナヴィ!!」



「また逃げる気か!! 逃がしてたまるか! 待てーー!!」



 手下は逃げるライム達を追いかける。

 しかし、先程までとは違い、今度はランプの灯りはない。


 街灯等は何もないこの島で、逃げ隠れることは容易い話だ。

 ナヴィの狙い通り、相手のランプを破壊した作戦は功を奏した。




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