悪役令嬢は不幸な道を辿ります
私は生まれつき不幸だった。
2歳で体に病気が見つかり、人口呼吸器が無ければ満足に呼吸も出来ない。
そんな私に許されたのはゲームをする事。
ゲームは楽しかった。
自分は主人公で周りには沢山のイケメン達。
ゲームの中の私は幸せだ。
そんなある日私の容体は急変した。
私が何をしたのだろう。
そして同時に「あぁ、私は死ぬんだ」と確信した。
(1回くらいは…恋愛、してみたかったなぁ)
消えゆく意識の中、そんな事を思って私は永遠の眠りについたはずだった。
目が覚めると、私はよく見慣れた顔でで鏡の前に立っていた。
そう、この顔は…
私の容体が悪くなる前までやっていた乙女ゲーム『王国の騎士』に出てくる悪役令嬢「アヴィス.エイブラムズ」の顔だ…。
この世界はもしかして…
と言うように私は『王国の騎士』の悪役令嬢、「アヴィス.エイブラムズ」になり上手くバットエンドを回避していたつもりだった。
つもりだったのだ…が。
「貴殿、アヴィス.エイブラムズを死刑に処す。」
何故?
私はただ…せっかく生まれ変わったこの世界で…っ!
自由に生きたかっただけなのに!
本来、アヴィス.エイブラムズのbad endに死刑というルートはない。
良くて公爵剥奪か悪くても国外追放だ。
(私が今までしていた事は何だったの…)
そうだ…私は余計な事しかしなかったのだ…。
普通に…普通に過ごしていれば…
悪役令嬢はhappy endを目指してはいけなかった。
私はこの世界に来て恋をした。
生前出来なかった事をいっぱいした。
更にその先、を望んだバチが当たったのかな…。
「お嬢様!!」
執事のオスカーが観衆の合間を縫って私を見る。
あぁオスカー。
最後まで私を信じてくれた優しい執事。
貴方ならきっと何処へ行ってもやっていけるわ。
オスカーの方を見て微笑むと下を向いてしまった。
さて、私をこのように仕立てたロレンツオ様は…。
…相変わらず冷めた目をしていらっしゃるわね。
片腕には本来の主人公である「リリィ.ウォーリア」が腕を絡ませている。
私がそちらを見ればリリィ.ウォーリアは小さく「ひゃっ」っと悲鳴を上げてロレンツオ様の腕に顔を埋めた。
「最後に何か言いたい事はあるか?」
「…えぇ。では最期に1つだけ…。聞け!我が愚かな帝国の群衆よ!貴殿らが選んだ妲己は必ずこの国を滅ぼすだろう!!そして苦しみながら己が罪を見返すが良い!」
私が言い終えると所々から石が投げつけられる。
「殺せ!!!」
「そうだ!この国の悪魔を殺せ!!!」
石は体の至る所に当たり流血を促す。
「すまないアヴィ…」
いいえ。良いんですハロルドお兄様。
「私無き世を…オスカーを頼みます。」
「…妹からの最後の頼みだ、兄としてきちんと聞くことにしよう。………楽に逝かせてやる」
「ありがとう…お兄様」
ハロルドが剣を握ると勢いよく振りかざした。
あぁ…この世でも私は不幸だった。
もしも…もしもまた次があるのなら…今度こそは幸せになりたいな…。
そうして私アヴィス.エイブラムズは2度目の生を終えた。
【アヴィス.エイブラムズの蘇生を開始します。】
【蘇生不可。転生準備開始。】
【転生準備完了。転生まで…3…2…1】
【転生完了。15歳リスタート失敗、再度演算。】
【6歳推奨。承認。許可。完了。】
【ステータス、《神々の恩恵》付与】
『さぁ___ちゃん。折角もう一度転生するんだ。今度はbad endにならないように気をつけてね!』




