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第十八話:騎士科について


 イオが魔法学校に通い始めて、はや一週間が経った。


 カイネスによる送迎も今日で最後だ。明日からはイオ一人で登下校をすることになっている。アルマの屋敷から魔法学校までの道順はしっかり覚えたので一人でも迷うことはもうないだろう。

 この一週間でイオも魔法学校での生活に慣れ、元々人見知りしない性格もあってかクラスメイト達と打ち解け気兼ねなく会話できるようになっていた。


 またそれは他の生徒にも言えることだった。シェスカとチェルシーの二人は元々フレンドリーな性格のためあまり変化はないが、人見知りがちなイザベラはイオに対しても慣れてきたのか、眠たげで起伏の薄い表情は相変わらずなものの少しずつ口数が増えてきた。

 フレデリカも初日こそ気合いが空回りして子分だのとやや偉そうな態度だったが、話す内に本当は素直で優しい子なのだとイオは感じている。

 イオやチェルシーに対して子分だとたまに言うが、どちらかというとそれは彼女なりの同年代に対する友達扱いなのだと、イオはフレデリカの態度を少しずつ、そして好意的に理解しつつあった。

 休み時間や昼食の時間のお喋りがイオにとっては同年代との数少ない交流であり、楽しみだった。


「今日はイオ君に、みんなで騎士科の方を案内してあげようかと思ってるんだけど、どうかな?」


 そして今日も午前の座学が終了してさぁお昼ご飯だ、とイオがロッジお手製の昼食を広げようとすると、シェスカが手をあげてクラスメイトを見回しながらそんな提案をした。

 まっさきに反応したのはチェルシーだった。椅子に座ったまま上体をシェスカの方へ反らす。


「良いですねー。私は賛成しておきます」

「……暑苦しい人が多くて、苦手」


 チェルシーは乗り気で、イザベラは否定的なようだ。というよりも、イザベラは騎士科の生徒が苦手らしい。あまり表情の変わらない彼女にしては珍しく、眉を寄せていた。


「よろしいのでは? シェスカお姉様がいれば安心ですし」


 その一方でフレデリカに異論はない様子。これで多数決は三対一となった。シェスカが笑顔で一つ手を叩く。


「はい、それじゃあ決定! 今日の午後の訓練、私は騎士科と合同だから、そのときに話をつけておくね」


 シェスカは魔法の訓練の中で、騎士科との連携を図る実戦的な訓練も少しずつ行うようになっている。

 具体的には騎士の隊列と合わせた行動を取る訓練や、馬への騎乗訓練などだ。いつかはイオや他の生徒も同じく騎士科との合同訓練をするのだろうが、今の段階で騎士科と積極的に関わっているのはシェスカだけである。


「学校で過ごしている間に顔を合わせることもありますしね。イオの顔見せくらいはしておいてイイでしょう。かくいう私も、騎士科の人達とは仲良くさせてもらってますしねー?」


 と、思っていたイオだが、実はチェルシーはすでに騎士科の生徒と仲が良いらしい。彼女の行動力の高さにイオは驚く。


「チェルシーって、騎士科の人と仲良いの?」

「ええ。愉快な人が多いですよ」

「どんな人達?」


 漠然としたイオの質問にチェルシーはへらりと笑みを返した。


「そりゃ、性格は人それぞれですよ。ただ騎士科もやっぱりエリート揃いですからねぇ。小さな頃から剣を振るような家柄、要するに領主の次男、三男みたいな方がたくさんいらっしゃいますよ。あとはみなさん体を鍛えていて、美形が多いですかねぇ。遊びに行くとちやほやしてくれるので愉快です」

「へ、へぇー……」


 妙に歪んだところの見えるチェルシーの評にイオは表情を引きつらせた。チェルシーがみせる軽薄そうな笑みがフッとあくどくなり、妙に似合っている。まだ十三歳の少女とは思えないほど、マセていた。


「あちらも、魔法使いと仲良くしたい下心が透けて見えますから。魔法使いは女性が多いですしぃ? それに仲良くなって将来、筆頭騎士に指名してもらえればそれでもう勝ち組ですしねー」


 騎士は世間から見れば十分にエリートへ分類されるのだが、やはりその中でも筆頭騎士というのは違うらしい。しかもその選抜基準は実力や成績によるものではなく、あくまで魔法使いの主観なのだ。魔法使いの卵達に今から顔と名前を覚えて貰う努力をするのは理解出来る。

 とはいえ、


「僕、それは聞きたくなかったかも……」

「確かにそういう人もいるかもしれないけど、私はそういう下心だけで仲良くしてくれてるわけじゃないと思うなぁ……」


 思わず口を挟んだシェスカ。だがイザベラも似たようなことを感じるようで、


「……でも実際、時々視線が嫌らしい」

「そうですか? わたくしはそうは思いませんが」

「お嬢はまだ女性的な魅力が足りないのでは?」

「ちょっとチェルシー、それはどういう意味かしら!?」

「いや、そのまま出るところが出てないって意味ですよー」

「な――」

「まぁまぁ。フレデリカはまだ十一歳だし……」

「シェスカお姉様が言うと嫌みにしか聞こえませんわ!?」


 話の方向が徐々にフレデリカをからかう路線に移り、イオは途中から苦笑いを作り続けるしかなかった。ここで何か口を出せばやぶ蛇になりかねないことを本能的に悟っている。

 こういう女性同士の雰囲気を作られると、イオは困ってしまう。

 彼女たちに言っても仕方が無いことなのだが、こういう時は気兼ねなく話せる同性の友達がほしいと思うイオだった。


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