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第十四話:クラスメイト

登場人物が一気に増えました。


 アンリエッタに連れられて、イオは魔法学校の校舎へと足を踏み入れる。

 校内は清掃が行き届いていて非常に綺麗だ。建物自体は二階建てのそこまで大きなものではないが、天井が高めに作られているので開放感がある。窓も大きく、日の光が差し込んでかなり明るい。

 魔法を使った訓練は主に外の訓練場で行うため、座学用の教室や教員室、談話室と図書室くらいしか設備がなく、建物自体は小さいのだとアンリエッタが教えてくれた。騎士科の建物はまた別にあり、この建物は魔法科専用の校舎なのだとか。

 騎士科の建物はもっと大きく、他にも訓練の為に馬も飼育していたり、学生が暮らす寮があったりと設備の種類も多いらしい。


「イオ君は、以前はどこに?」


 教室へ向かうまでの間にアンリエッタがイオへと話を向けた。


「えっと、モーリス村という生まれ育った村で暮らしていました。王都から馬車で一週間くらいかかったんです」

「なるほど。でしたら王都での暮らしは新鮮でしょう」

「はい。人が多くてびっくりしました」

「村には友達はいましたか?」

「村の子達はみんな友達でした。毎日みんなで遊んでて」

「その子達と離ればなれになってしまって寂しくはありませんか?」

「ちょっと寂しいです。手紙とか、書くつもりですけど」

「ええ、きっと喜んでくれます。でもイオ君はしっかりしているし、こちらでも沢山友達を作れるでしょうね。クラスのみんなも良い子ばかりですから、きっと仲良くできますよ」


 そんな風に二人は会話を交わしながら、すぐに教室の前までたどりついた。

 妙に緊張し、イオは小さく唾を飲み込む。


「さぁ、ここです。まずは自己紹介からですね。入りますよ」

「はい」


 アンリエッタが扉を開けた。イオもその後に続く。

 イオが小さな教室を見回すと、中には四人の少女がいた。その全員が教室へと入ってきたイオに注目している。


「さて、みなさん。以前に伝えたとおり、今日から新しい仲間がこのクラスに加わります。さぁイオ君、自己紹介を」

「はじめまして、イオです。年齢は十歳です。これからよろしくお願いします」


 アンリエッタに促され、背筋を伸ばしたイオは四人の少女の視線に晒されながら口を開いた。

 ぺこり、と頭を下げる。彼女たちはイオに対し好意的なようで拍手が返される。


「皆さんもぜひイオ君と仲良くしてあげてください。さて、私は次の座学の準備をしに戻ります。皆さんも彼と色々話したい事があると思いますので、しばらくは自由時間にしましょう」


 アンリエッタは微かに笑ってそう言い残すと、教室を出て行った。

 彼女が出て行った途端、真っ先にイオに近づいてきたのは四人の中でも一番年上に見える少女だった。彼女は短い赤茶の髪をゆらして素早く立ち上がるとイオの手をとり、彼女たち四人の中心まで連れてくる。


「はいはいココに座ってね。はーい、イオ君だっけ? これからよろしくね」

「えっと……?」

「ああ、私はシェスカ。十五歳で、この中だと一番年上ね。シェスカお姉ちゃんって呼んでくれて良いわよ?」

「え、あ、はい。よろしくお願いします、シェスカさん」

「もー、固いなぁ! 今日から私たちは同じクラスの仲間なんだからそんなにかしこまらなくて良いの!」


 やたら元気でフレンドリーなシェスカの態度にイオはたじたじだ。

 シェスカは他の三人にも自己紹介を促した。


「ほら、私ばっかりじゃなくって三人とも、イオ君に自己紹介しなさいな」

「し、しようと思ってましたわ!」


 シェスカに噛みつくように反応したのは、反対に四人の中で一番年下に見える少女だった。ちょうど、イオと同い年くらいだろうか?

 彼女は小さく咳払いをすると長い金髪をふわりとなびかせ、自信満々に薄い胸を張った。


「わたくしはフレデリカよ。イオと言ったわね! あなたもわたくしの子分にしてさしあげますわ! 光栄におもいなさい!」


 微妙に気品があり、微妙に尊大で、微妙に幼さが抜けきっていない、というのがイオの印象だった。子分という彼女の言葉も相まってイオは何とも言えない表情になる。


「いやぁ、流石はお嬢! よっ、ベルニグいち!」


 側にいた別の少女の雑な太鼓持ちで満足そうに鼻を鳴らす、フレデリカと名乗った少女。

 イオは対応に困ってしまい、助けを求めるように思わずシェスカに目線を送った。シェスカもやや呆れ顔だ。


「もう、フレデリカってば。イオ君が驚いてるでしょ?」

「ですがシェスカお姉様! イオはわたくしの後輩ですわ。なら、子分になるのは当然ですのよ?」

「えぇ、子分は嫌だよ」


 イオの発言に、フレデリカは不機嫌に頬を膨らませた。


「子分のくせに生意気ですわよ」

「はいはい、いきなり喧嘩しないの。ほら、チェルシーも」


 そんな二人の間にシェスカが割り込み、次の挨拶を促した。チェルシーと呼ばれたのはフレデリカのことを適当に持ち上げていた少女だ。彼女は薄緑の瞳を細めてへらりと笑う。


「はいはーい。私はチェルシー。年は十三でございまーす。これからどうぞ仲良くしてくださいな」

「チェルシーはわたくしの子分の一人ですわ。イオも、子分同士仲良くするのよ」

「フレデリカお嬢の子分やってまーす」


 子分という割に、チェルシーの態度にはフレデリカへの敬いが感じられなかった。


「ええと、よろしくチェルシーさん」

「私のことはチェルシーでいいですよー? 私とお嬢はこの学校に来たのは去年でね、まだ一年くらいしか経ってないんですよ。だから私もまだまだ新人。かしこまらなくて良いですよ。私もイオって呼ぶので」

「そ、そう? よろしくね、チェルシー」


 チェルシーはへらり、と妙にだらしなく笑った。フレデリカは子分二人が仲良くなったことに、満足そうな表情をしている。


「わたくしのことはフレデリカ様と呼びなさい」

「お嬢はいつもこんな感じだから、呼び捨てでも何でも適当に呼んであげてねー」


 同い年くらいに見えるフレデリカに様をつけるのは少し抵抗があったので、チェルシーの言葉もありイオは思い切って提案する。


「フレデリカって呼んでもいい?」

「お嬢、イオはお嬢と仲良くなりたいからあえて呼び捨てで親しくなりたいみたいですよー。ここは子分の心意気を汲んであげるべきでは?」

「仕方がないわね、イオは。わたくしは心が広いから、呼び捨てでも構わないわよ」

「構わないんだ……」


 個性的な二人だなぁ、という感想を抱くイオだった。ここまで奇天烈な知り合いは村にはいなかった。

 そして名前を聞いていないのはあと一人だが。


「……あっ、私か」


 イオから視線を向けられて、ハッと気付く残り一人の少女。彼女は眠たげに細められた紺色の目を開くとやや宙に視線を彷徨わせ、


「……私はイザベラ。十四歳」


 淡泊にそう言い切ると、イザベラはイオから目を逸らした。


「イザベラはちょっと人見知りなのよ。良い子だから仲良くしてあげてね」

「別に、人見知りってわけじゃない……」


 シェスカが親しげにイザベラの肩に手を置き、イザベラがやんわりと振りほどく。


 みんなのリーダーポジション、シェスカ。寡黙な少女、イザベラ。我が儘気味だが素直なお嬢様、フレデリカ。そしてフレデリカの子分を自称しているチェルシー。

 この個性的な四人が、これからイオが共に学校生活を送るクラスメイトらしい。全員が可愛らしい女の子だった。同性のクラスメイトがいないので、イオはどことなく肩身が狭く感じる。

 だがそんなことはお構いなしのようで、イオは主にシェスカから怒濤の質問攻めを受けることになる。それは授業の準備を終えたアンリエッタが教室に戻ってくるまで続き、イオは授業が始まるよりも前に精神的な疲れを覚えのだった。


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