散歩道
『秋の夜長の歌会』4作目
秋の夜は人恋しい。
「会いたいな」
思わず掛けた電話越しにねだってみる。
「もう、夜だよ…」
そうくるよね。解っていたけど。
「迎えに来てくれるなら…」
彼女がそう言葉を続けたのは意外だった。
「すぐに飛んで行くよ」
外の空気は少しだけ肌寒い。
その分、星がキレイだ。
僕はいつの間にか駆け出していた。
彼女の家に着くと、彼女は外で待っていてくれた。
僕は彼女の手を取って歩き出す。
「キレイだ」
「本当ね。キレイな星空」
「君がね」
「えっ?」
「君がキレイだ」
「あら、お世辞でも嬉しいわ」
そう言って、彼女が体を寄せる。
彼女の温もりが心地いい。
秋空に
そっと寄り添う
散歩道