それは天秤のような
前世、僕はハッカーを目指すプログラマだった。プログラムとは、自分の思った通りの結果を出すための手順だ。中二病的にいうと、自分の望む結果を生成する論理世界、そのような法則を編み出す神の御業、といったところか。
当然ながら、一発で完璧な法則が書けるわけではない。デバッグにデバッグを重ねる必要がある。それは、僕にとっては繊細な天秤のバランスを取るような行為に感じられた。
魔道具に魔力を流すのは、そんな崩れやすいバランスを取る行為にそっくりだ。そして魔力を流す道筋を調べるのは、ハッカーを目指していたころに培った、他人のプログラムを読み解く行為に似ていた。
その2つが合わさり、僕はついに前世を思い出したのだった。
それからは解析につぐ解析、解明につぐ解明の嵐だ。手持ちの魔道具、全部を調べ尽くした。
カップ型は炎が出る(卓上ライター?)。2本のくっついた棒は魔力で剥がすことができた(あいだに何かを挟んでとめるクリップ?)。綺麗なクリスタルのキューブは表面に水滴がいっぱい出てくる(空気中の水を集めてる?)。
ほとんどはそんなしょうもない機能ばかり。だけど、綺麗な宝石の嵌めこまれた複雑な文様のペンダント、これだけは違った。
ひときわ難しいバランス、複雑な道筋にようやく魔力を通すと。
目の前に地図が開いたのだ。




