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前世を思い出したんだ

 これまでの僕の生活は、ほとんど一人だった。


 屋敷に住むことは許されず、離れの掘っ立て小屋みたいなところが僕の部屋だった。一応、食事は出されていたので健康に問題はない。祖父の指示で産まれた僕を殺してしまうことは、父としては最低限避けたかったのだろう。

 父と夫人(兄と姉の母親)は僕に会いに来ることは一度もなかった。兄と姉は何度か来たことはあるが、姉はまるで汚物を見るような目で一瞥するだけ。兄は馬鹿にする言葉を投げかけてくる。

 普通の子供なら、こんな疎外感の中でまともでは居られないだろう。


 そんな僕の唯一の友達は、祖父がくれた魔道具だった。

 僕という魔法の使えない子供が産まれてしまっても、祖父は諦めきれなかった。魔法がダメでも、魔道具が使えれば、という大逆転にすがった。

 食事を届けてくれるメイドに聞いたところ、この世界の魔道具はかなり不遇だ。基本的にはほぼ全ての魔道具はガラクタ。子供の玩具にさえ使われているくらい。

 別格なのは、王家に伝わる神から与えられた神器。過去、これを使うことができた英雄がいたらしい。本当にこれが使えるなら、確かにものすごいことだろう。

 しかし魔道具を使える人間は、現在ではほぼ居ない。メイドの話では王都に2~3人いるだけ、しかも神器ではなく、たくさん発掘されるガラクタのうちのいくつかが使えるだけ、だそうだ。


 魔道具をいじる僕を、兄は頭のネジが何本か抜けた阿呆とけなし、姉はさらに嫌悪感を露わにした。でも、僕にはそれしかない。だから、必死になって魔道具を眺めたり、調べたり、時には分解してみたりした。


 今日も魔道具に魔力を注いでみる。魔法は使えないものの、血筋は本物だ。魔力を操ることはできる。それに、なんだかコツをつかんだ気がするんだ。

 マグカップのような形をした魔道具に魔力が入っていく。魔力を操って、ちょうどカップのフチのところに沿わせる。ある程度のところまで魔力が行き渡ると、とたんにそこで散ってしまった。


 ……なんというか、バランス?形?そういうのが悪い、気がする。カップのフチに刻まれた文様に合わせて、丁寧に魔力を添わせるとうまくいく感じ。

 そして、左右にバランスよく流していくのも大事。そう、上手に、丁寧に、自分の考えたとおりの道筋をたどる……。

 ああ、何かを思い出しそうだ。昔、とても昔にこんな感じでバランスをとって、道筋を整えて、そして、自分の思い通りに何かを動かしていた気がする……。


 カップの真ん中、中央部分に炎が発生した。その揺らめく青い炎を見て、僕はついに思い出した。


 僕は前世を思い出したのだ。


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