僕は要らない子
僕はジャック・フォート。フォート伯爵の3人めの子。兄と姉に比べるまでもなく、出来損ないの子だ。なぜなら、貴族なのに魔法が使えないから。
僕の居るこのエイシャント国において、貴族とは魔法が使える人間を指す。貴族はその高貴な血によって神が与えし力である魔法を操る。そして民を魔物から守るのだ。ゆえに、貴族は人々の上に君臨する。
そういう建前なのだが、最近は血が薄れてきているのか、かなり弱い魔法しか使えない貴族も出てきた。そういう貴族は統治能力で判断するというのが決まりではあるのだが、強い魔法が使える貴族からしてみれば、弱小貴族などただの恥さらし。すぐに見下してくる。
我がフォート家も結構前の世代から魔法が弱まってきた。幸い、統治能力については問題なかったため即座に取り潰しなどということはないものの、政治の世界では肩身の狭い思いをしてきた。
そんな状況を見かねた僕の父、現フォート家の当主レスター・フォートは、そういう弱い魔法しか使えない家同士の派閥をつくり、対抗をしている。これにより救われた家もあるらしい。
本来、貴族は魔法を絶やさぬよう、そしてより強い魔法を持つ子を生み出すために婚姻を結ぶ。しかし父はこの派閥をまとめるために、財力はあるが魔法の消えかかった家から妻を迎えた。つまり、魔法力をほぼ諦めてしまったのだ。
このことをよく思わなかった僕の祖父、オラフ・フォートは貴族の位を剥奪されてしまった家の女性を父にあてがった。その家は昔は有数の魔法力を誇った血筋だ。今は魔法力が弱まっているものの、血筋は本物。その婚姻から生まれる子に強い魔力が宿ることを期待してのことだった。
フォート家を再び偉大な魔法使いの血筋にすることを祖父は夢見ていた。
その結果は、祖父を打ちのめした。魔法力の劣る家から迎えた正妻が産んだ僕の兄と姉、彼らに強い魔法が宿ったのだ。
そして祖父があてがった女性から産まれた子、つまり僕には、なんと魔法が宿らなかった。産後の肥立ちも悪かったため、僕を産んですぐに母は亡くなったそうだ。
結果として、僕の立場は物凄く弱いということだ。




