弟が彼女を連れてきた① Ⅳの鍵マイネージョン
(もしも、空想が現実になったら―――)
一川夏菜衣の両親は海外に単身赴任中。
そのため彼女は弟の灰十と共に、叔父の家に居候している。
「灰十、どこにいってるのかな…」
この進んだ時代、家で学ぶ生徒も多い。
夏菜衣や弟は、学園が家から遠いため、単位を得るために必要な問題は、一定水準の国民備え付けの電子パネルに届く。
学園からの課題を終わらせて、外出している。
夏菜衣は課題を済ませたが、自分の足で通っていない学園に、知り合いや友人はいない。
「…遠くてもいいから、通うほうにすればよかったかも」
夏菜衣は暇でしかたがない。
「つけて」
音声認識のテレビをつけると、報道専門のチャンネルであった。
叔父は常に書斎にこもっていて、滅多にテレビを見ない。
だからこれを観ていたのは灰十。
でも勉強よりゲーム、ってタイプのあの子がニュースなんてめずらしい。
そう思って夏菜衣はどんな事件があるか、確認してみる。
しかし、事件ではなく大統領の記者会見の生中継。
〈えー、我々は…国民のため――〉
「嘘ばっかり」
大統領は自分の利益ばかりで、国民のことを何も考えてない。
(政治家も同じ、あいつらは信用しない)
「消して」
不快感を覚えた夏菜衣はテレビを消した。
「ただいま」
「おかえ…」
若い年上の女性をを連れて帰ってきた灰十。
「彼女…?」
ニヤニヤ、と夏菜衣は冷やかし半分に灰十をいじる。
「ちっげーよ!姉貴は外いってろ」
「はいはい、邪魔はしませんよー」
夏菜衣は外に出たはいいが、なにをすればいいかわからず茫然と玄関前に立ち尽くすのだった。