怒りの咆哮5
「情報班より一班、トラックが東500メートル接近中、早く移動しろ。」
「一班より、想定内だ。」
ファレルが右手を挙げ、縦隊を作った。先頭と最後尾はスナイパーの二人で、敵の狙撃種などが居ないか警戒していた。曲がり角に当たるたびに緊張が高まり、そして引いて行った。ブーツの底は柔らかく、
「後は一本道だ。」
全員の了解を示すクリック音がイヤホンから流れた。この位敵と接近していると普通話せないものだが、マスクと無線機がそれを可能にしていた。
「情報班、後ろから敵さんが来てる。住人には見えない。3Dプリンターじゃない。本物のAKだ。早く隠れろ。」
「バディで裏道に入れ、早く!」
古林が地面に伏せ、冴木は立膝を付いてhk416を構えた。がやがや音が聞こえてくる。どうやらトラックが通りに入れなかったらしい。銃が擦れる音、アラビア語、トラックの重い音。冴木には呼吸とそれが同じくらい大きく聞こえた。しかし小銃の重みが冷静を保たせてくれた。
すぐ目の前を敵が通り過ぎる。その距離、20センチ
ファレルは全員と目を合わせ、首を飛ばすジェスチャーをした。
冴木は当然だと思った。おそらく、目の前の連中は自分たちと同じ事を考えている。高所から観測、狙撃を企てているのだ。それ以外にこの建物に来る理由は無い。完全な廃墟だという事は情報部から伝えられていた、
全員が腰のベルトに差し込んであったナイフを抜いた。全員がそれなりの技術を習得していた。夜闇に紛れての暗殺など簡単だった。
冴木は裏道から出て最後尾にいる男を狙った。身長は冴木のそれより少し低く、チンピラのような服装をしていた。
男の首にまっすぐ刃が突き立てられた。頸動脈が切断され、ゴボゴボ音を立て、崩れ落ちた。
前に居た男たちが振り返った。三人。冴木は確認した瞬間、残りの全員が裏道から襲いかかり、十秒後、最後の男が最後の息をした。
「さあ、こっからが楽しい所だ。」
古林が楽しそうに言った。