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2/破 - 中

前書き:この作品は「オチなし」「ストーリーなし」の作品です。ただ、文字が羅列してあるだけです



 デートって言葉は甘美な響き。だって、それは恋人との特別な時間。ふたりきりの特別な時間。家にいるときとはまた違った、特別な時間。

 家にいるときはいるときでそれはそれで楽しい時間です。ですが、外で楽しみなことといえば、家の中ではできないことを外で思いっきりすることです! それはつまり未来への投資ってことですよ!

 ……まぁ難しいことじゃなくて、ショッピング。ショッピングで買うものは残るから未来の楽しみへの投資ってことですよ。自分で言っておいてなんだか良く解らなくなってきた。難しい言葉は安易に使うべきじゃないね。うーむ。

 んでもって、私と奈々ちゃんのデートは、まず、ピンク色の店にくることから始まっているワケでありまして……

「うーむ……えくすたしー……」

 思わず、そう呟く。つまりスーパー興奮状態。私としてはちょっとキモチワルイぐらいであって……。だってさ、周りの人間の鼻息は荒いしー、なんか目つき怪しいしー……ちょっとどころかもう完全にキモチワルイ領域まっしぐら。というか、ぶっちゃけ、同じぐらいの興奮具合をかもしだしているのが奈々ちゃんであって…………

「…………」

 無言だけど、いつもどおりの無表情だけど……この奈々ちゃんは内心凄く興奮している。大興奮状態で、もうね、手がつけられない領域だよ。まぁ、奈々ちゃん主導のデートだからね、うん、こうなることは解っていたけどね!

 むむ、世の中の人間の性欲と云うのは、意外なところで発散されているものなんだなぁ。ま、まぁ、本物のひとに迷惑が掛からないならいいんじゃないんですかね!

 しかし、こうして店の中を見ていると、どちらかと云うと男のひとのほうが多くて、女の子の姿がまったく―――とは言わないけど見られない。確かに、こういう場所は男のひとが来る場所だしね。女の子がなかなか入ってくる場所じゃないとは、私も思うよ。ウン。まぁ、私と奈々ちゃんは入っちゃってるけど。……お姉ちゃんの知らないところで、奈々ちゃんがこんなところにひとりで入っているところを想像したら、お姉ちゃん凄く心配になってきちゃったよ。恋人として、お姉ちゃんとして。

 私としてはこの店で見るものはないし、考えることもないので、ずっと奈々ちゃんの後ろで佇んでいるんだけど、まったくもって居心地が悪くて困ってる。なにもしていないと、こう、ソワソワするよね。しかも自分がちょーーーーーっと理解に苦しむものだったりするとね。いや! 奈々ちゃんといる以上つまらないワケじゃないんだけどね! 理解に苦しむだけだけどね!

「ねぇ、お姉ちゃん……」

 私がもんもんと考えていると、奈々ちゃんが横からやってきて私に話しかける。うん、なにかな? その手に持っているのは。

「……どっちの女の子が好み?」

 奈々ちゃんがもってきた箱―――多分ゲームのパッケージとかいうヤツ―――には、色々なピンクとか青とかの髪の女の子が描かれていた。実際の女の子がこんな色の髪してたらコスプレだと思っちゃうね、うん。さすがに金髪ぐらいはいるけど、赤はいないんじゃないかなぁ。ビジュアル系バンドならいそうだけどさー。

 そんな文句はそれぐらいにして、奈々ちゃんの手にもたれているゲームは、恐らく……というか、私の記憶が間違いじゃなければ、その表紙に描かれている女の子と恋愛して、エッチして、恋愛して、エッチして、エッチして、エッチするゲーム。だったはず。

「これ、D指定だから年齢的に大丈夫なやつ」

「そのAとかDとか解らないんだけど……えーと、恋愛の手順?」

 ABC。

「……違う。これは年齢制限を表したアルファベットで、Aが全年齢、Bが一二歳、Cが一五歳、Dが一七歳、Zが一八歳っていうやつ」

 そのDからZの間にはなにがあるんだろう。いや、多分深い意味はないと思うけどね。どういう基準で決めてるんだろうねぇ。……私、ゲームとかやらないから全然解らない。私自身、奈々ちゃんのゲームしてる姿を見ていなかったら子供のするものだと思っていたからなぁ。最近になって改めたのは、ぶっちゃけ、あんなの子供ができるように設計されていないように思えたワケで……いや、違うんですよ、決して奈々ちゃんと対戦して、大人気なくコンセントを抜くとかしたワケじゃなくてですね。ちょっと高価なコントローラーを破壊しただけデスヨ。ゴメンナサイ。あのあとの奈々ちゃんの笑顔が引きつっていたのを、お姉ちゃんは忘れないよ。ナントカカントカ・フィニッシュ。奈々ちゃんの顔が青に染まったよね。ちなみにあれ以来、私たちの部屋に対戦ゲームの音が響くことはなくなったよね。

 さて、そんな私の過去の振り返りが頭のなかで一瞬で行われて、すぐに現実に戻ると、箱を抱えた現実の奈々ちゃんが目の前にいる。さて、どうしたものか。とりあえず、表紙をマジマジと眺めてみることにしよう! うん。私の好みは奈々ちゃん一択だからね。けど、他でもない奈々ちゃんの質問なので真面目に答えることにしましょう!

 まず、右側の女の子から…………

「って! 量が多すぎる!」

 なんだこれ! キャバクラか! 夜の風俗か!

「ううん。学園もの。で、こっちがファンタジー……」

「いやいや。解らない。と、とりあえず、量が多すぎるよ」

「じゃあ好みの子が多いほうでいいから」

 つまり、好きなビジュアルの子がたくさんいるほうを選んでくれ、ってことですね。うーむ。見てくれだけで選ぶというなかなかな簡単基準。奈々ちゃん言ってたけど、ゲームのなかの女の子や男は、基本見てくれどおりの性格らしいから安心、とか言ってた。なるほど、メガネかけてれば知的なひと、目つきが鋭ければ男勝りとかクールなカンジとかで絞れると! なんと楽チン。

 うむぅ。少し悩むなー。とりあえず直感で選ぼうかな。深く考えないで、こう、自分の心のなかできゅんって、じゅんってくるカンジの女の子を選ぼうかなー。むむむむむ……、こっちだ!

「こっちかなー」

 左側の箱を指差す。真中によく解らない民族衣装みたいな服を着ている女の子。あー、さっき奈々ちゃんが言ってたファンタジーってほうなのかな。なんかこう、ツノとか生えてる女の子いるし、尻尾とかある女の子も見えるなー。なんでもいいけど、こういう尻尾のある女のこのパンツとか、スカートとかってどうなってるのかなぁ。凄く気になる。

「ふぅ、ん……」

 ん? あれ? 買うんじゃないの?

 奈々ちゃんは持っていたゲームの箱をゆっくりともとの場所に戻して、店から出る構え。なにかを買いにきたのかと思ったんだけどなぁ。あ、もしかして欲しいものがなかったのかな? え、でもそれじゃあなんで今の箱を私に選ばせたの…………うーん、解らない。

「……お姉ちゃんは巨乳が好き、と……」



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