一日目
十六歳の誕生日の朝、母親に無理やり叩き起こされた。
勇者として旅立つ前に王様に挨拶して来いというのだ。
俺は言われるがまま城へと向かった。
城はデカい。世界救って報奨金もらったら、こういう所に住みたいと思った。
城門の前にいる鼻ほじりに夢中な兵士の人に話しかけると、面倒臭そうに謁見の間という所に案内された。
王様は親切そうな人だったが……話が長すぎる。
朝礼での、校長先生のお話よりも長い。あれは船を漕いでしまう。
いったいどの位経ったか、話を終えた王様は餞別に百グオールドをくれた。
異世界の通貨に換算すれば千五百円ほどになる。
――少ないッ、子供の小遣いか!
思わず心の中でツッコんでしまった。
世界の命運を託している割にはケチである。
仕方ないので、これで装備を整えることにした。
棍棒:三十グオールド
布の服:二十五グオールド
鍋の蓋(アルミ製):十五グオールド
薬草(見切り品)十個:十グオールド
店員のお姉さん(巨乳)の笑顔:プライスレス
以上の品目を中古で購入した。
一応言っておくが、店員のお姉さんは生娘だよ。多分。
外に出るとゲル状のモンスターが姿を現した。
スラ何とかって名前だった気がするが、どうもハッキリしない。
よく思い出せないので“ことぶきさん”と呼ぶことにした。
ことぶきさんを倒すのは簡単だった。序盤だしな。
その後、経験値と資金稼ぎのためにモンスターを狩りまくりながら歩を進めた。
夜も更けてきた頃、ツギノという村で宿屋に泊まる。
部屋のベッドで眠りにつこうとした時、コンコンと扉を叩く音が聞こえた。
扉を開いて現れたのは宿屋の女将。
なかなかの美熟女な女将は入ってくるやいなや俺を誘惑してきた。
話を聞くと、旦那さんに先立たれたらしく、ご無沙汰とのこと。
故に若い冒険者が泊まりに来ると、こうして色気を振りまいているらしい。
数日前に意中の女性に思いの丈を告白して見事にフラれた心の傷が癒えていない俺は、彼女が醸しだす淫靡な雰囲気に飲み込まれ、されるがままだった。
それはもう色々と……。
一言で言えば“すごく良かった”。男としてのレベルが少し上がった気がする。
俺はそのまま、すーっと眠りに入った。
そして、目を覚ますと怪しげな船の上でパンツ一丁になっていた。