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第一章『兄弟』

遼東りょうとうは公孫氏が支配する地。河北一体は袁家の支配下にあり、国が支配して以降も、その威光を懐かしむ者が非常に多かったという。

 盧周は自室で一人、冷静に状況の分析を試みていた。

(「我が軍は辺境の遼東を除く、河北かほくのほとんどを支配下に置くことに成功し、総兵力は挙兵時の三倍、30万にまで膨れ上がった。白馬はくば官渡かんとの戦線では、幾度かの軍事衝突を起こしてはいるものの大規模な戦には至っていない。しかし、我が軍は小さな勝利を積み重ね、確実に曹操を追い詰めていると言って良いだろう。現に、我が軍の大将、顔良がんりょう文醜ぶんしゅうが曹操軍を二、三度敗走させ、主だった敵将の首級、数十を挙げた。昨日は曹操軍白馬方面軍の大将と名乗る徐晃じょこうという男が、顔良に対して挑んできたが、顔良はたった数合でこれも退けている。」)

「それに加えて、袁紹からの遺言とも取れる言葉が……」

 と、その時盧彰が衛兵を通し部屋内に入って来た。『あの日』から袁彰も盧彰として生きている。

「周、首尾良くやったそうだな?」

「当たり前だ、私を誰だと思っておる?」

「では、我らの悲願がついに形となるのだな!」

 その瞬間、空気が張り詰め、盧周は鬼のような形相に変わり、得物の尖刀を袁彰の喉元に突きつけた。

「声を落とせ。首だけになりたいのか?これから我々の成すことは謀反そのものなのだぞ?」

 盧彰は振り払う仕草をした。 

「承知。ときが来たら言ってくれ、その時は……」

「皆まで言うな。『全て』わかっている」

 盧彰は、少し緊張の面持ちではあるが、はっきりとした喜色が浮かび出ていた。

 盧彰が退出した後、再び考え込んだ盧周は嬉しさ故か、思わず声に出してしまった。そう、あの邪悪な笑みを浮かべて。

「あと、あと少しだ。袁紹いや、父上さえこの世からいなくなれば。『全て』は計画通り……」

 盧周の高笑いはいつまでも木霊していた。

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