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序章『希望』

「翼徳、笑うでない、失礼であろう?」

 言葉とは裏腹に、いまだ腹を抱えている長兄、劉備が言った。

「兄者がそう言うなら……わかったよ」

 この三兄弟は緑の軍服を着ていたが、そこら中に散在している死体は、中央から派遣された官軍を意味する青を基調とした軍服を纏っていた。尤も、鮮やかな青はすでに赤く、その持ち主の鮮血によって染められていたのだが。

 劉備達は何故緑なのかといえば、地方軍所属だからである。義勇軍の劉備達一行はけい地方の劉焉将軍の配下に収まっていた。

 村の端、南東方面からやってくる人影が見えた。服は青色である。

「劉備将軍にご報告、劉備将軍にご報告!」

 大声で叫びながら、息を切らしやってくるその姿は、返り血で真っ赤に染まっていた。

「劉備は私だが?」

「実は……」

 伝令と思われる男は劉備に耳打ちした。

「配属は……朱儁……わかった。急ぎ、参ると伝えられよ」

 伝令は北西方面に消えていった。

「配属が決まったぞ。劉焉将軍の仲介で、朱儁将軍の配下に入ることになった。急ぎ、軍営に来られるように、とのことだ」

「承知」

「わかった」

「兄殿が見つかるといいな、無事生き延びるのだぞ、少年……」

 劉備はそう言うと、少年を時折振り返りながら、ゆったりと騎乗し、弟達を従えて、南東方面に駆け去っていった。

 少年はいつまでも、彼らの後ろ姿を見えなくなるまで、いや、見えなくなっても眺めていた。

「いつの世も争いが絶えんな……」

 文官姿の男は終始、彼らのやり取りを見てから嘆息した。

「変えなければならぬ、泰平の世を造らなければならぬ……その為には、秩序の中心、漢王朝を建て直さねばならぬのだ……」

 文官の男は少年と少年の眼に映る三兄弟の後ろ姿を見つめながら、拳を握り締め、思ったのだった。静かな覚悟を胸に秘めて。(『燕漢演義』~第三の英雄~序章―完―)


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