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序章『運命』
血を噴いて倒れた屍体は、少年ではなく、程遠志のものであった。
程遠志は後ろの大男に一突きで刺し殺されたようだ。
大男は言う。
「少年、大事はないか?」
大男の背後には柔和な印象を受ける、大耳の男と一目で荒くれ者とわかるこれまた先の大男に引けを取らない大男が控えていた。
「……」
少年はふてくされたような顔をしていた。
「礼くらい言ったらどうだ?餓鬼!」
荒くれ者の方の大男が雷鳴のような怒鳴り声を上げる。
「余計な事を」
そう呟く少年には何処か陰りが見えた。
それに気付いた大耳の男が優しげに少年に話しかける。
「両親を亡くしたのか?」
「元々両親はおらん。唯一の家族と言えば兄だけだが、行方不明なのだ」
(「気取った物言いをしやがって、気に入らねぇ」)
(「兄者に対して無礼千万、子供といえど……」)
荒くれ者と荒くれ者とは異なり知性が感じられるもう一人の大男は折りしも同じことを考えていた。