1日目 生徒会集合
キーン コーン カーン コーン
今日最後の7限目の授業とHRが終わって放課後の合図を告げるチャイムが鳴り響く。このチャイムを聞くたびにいつも思うことがある。人間は嫌でも、行きたくなくてもどうしてもやらなくてはならないことがあると。しかもそれが自分以外の人間に関わっているのならなおさらだ。自分に課せられた責任は果たさないといけない。人間が社会の中で生きるとはそういうことだから。
僕はいつも通りのルートで廊下を歩いていき、ある場所に向かう。そして、その場所のドアの前に立つ。
いつまでも暗い気持ちのままではいけないと思い深呼吸をして、気持ちを入れ替えてから生徒会室のドアをノックする。
コンコン
「失礼します」
そして僕は生徒会室の扉を開けた。
「あら、ごきげんよう。孝幸」
「こんにちは、会長」
僕の目の前で生徒会室の一番奥にある座席に座って僕に挨拶をするこの人がこの生徒会を治める生徒会長である『リリザ=コズベック』さんだ。黒色のリボンが目立つ金色のブロンドの髪が僕を見たときに揺れる。
「あれ?会長だけですか」
生徒会室を見渡すと僕と会長しかいなかった。僕が会長の斜め前の自分の定位置のパイプ椅子に座ると会長が"そうですわね"と答えてくれる。
まだ全員揃っていないなんて珍しいな
なんて思っていると会長はじっと上目遣いでこちらを見ている。僕の黒い瞳と会長の碧く澄んだ瞳がお互いを見つめ合う。
僕と会長の間に甘い雰囲気が
「頼みが「お断りします」・・・まだ何も言っていないではありませんか」
流れなかった。僕は反射的に会長の頼みを拒絶していた。
「せめて内容を聞いてからでもいいでしょうに」
「じゃあ、何を頼もうとしたんですか」
「もちろんこの前握ったネタ、『野球部長!まさかの二股疑惑』の調査を」
「お断りします」
僕は会長の頼みをやっぱり断った。この人がこんな風に頼み事をするときはたいていゴシップネタのための調査だ。会長はコズベック家のお嬢様で道楽として人のゴシップネタを掴んでは会長権限で学校新聞に張り出している。職権乱用とはこのことかと思う。
「あなた、ここ最近あまり動じなくなりましたね」
「そりゃ、こんな色濃い生徒会で1ヶ月以上過ごしてましたら嫌でも慣れますから」
この1ヶ月、この生徒会には驚かせられぱなっしだった(みんなのキャラ的な意味で)。でもどうだろうか、1ヶ月過ごす内にすっかり慣れてしまっていて、たいていの状況に動じなくなった。いやぁ、慣れって怖いものだ。
「1ヶ月前の面白い孝幸がどこかに行ってしまったですわ」
「僕はそんなに弄りやすかったですか」
会長がつまらなそうに僕が会長とのやりとりに慣れてしまったことを嘆いていた。でも、慣れていなかったら僕の精神は今期の生徒会が終わるまで持ちませんからね。途中で狂ってますよ、きっと。
「でも、確かに人間は慣れてしまう生き物ですからしょうがありませんね」
おっ、珍しく会長が納得してくれている。これからは苦労せずにすむかな?なんて一瞬淡い希望を持ったけれども
「やっぱり、今以上に面白くしていかなくてはなりませんわね」
「僕の希望が一瞬で砕かれた!!」
会長が楽しそうに僕の希望を打ち砕く。いや、少しながら会長がこう言うのは予想していたよ。でもちょっとくらいの希望を持って良かったじゃないか。
「まあ、落ち着きなさい。あなたにあまり苦労かけないようにするから安心しなさい」
会長は不敵に笑うとパイプ椅子から立つと僕の後ろまで移動してくる。いったい何をするのやらと思ったら、急に会長は抱きついてきた。
「ちょっ、会長!?何してるんですかっ」
「あら、こうしたら面白い反応が見れると思ったからやったのですけれども、思った通りの反応をしてくれますわね」
会長の豊満な胸が僕の背中に当たる。あ〜、柔らかい2つの山が・・・・・じゃない
「いつまで抱きついているんですか!早く離れてください//////」
「あら、いいじゃないの。せっかく孝幸は抱き心地がいいのですからもう少し堪能させてもらっても」
僕がせっかく理性を保って会長に離れるように言ったが、会長がクスクスと笑いながらさらに腕の力を強めてくる。完全にからかわれているな、僕。
僕が会長に抱きつかれていると生徒会室の出入口の扉が開く。
「おい、孝幸。なんでお前がリリザさんに抱きつかれているんだよ。そのシチュ、俺に代われ!」
あー、なんともバットタイミングでめんどくさい人がやって来たな。
今、生徒会入って来たのは『後堂 アルファルス』先輩。後輩からは後堂先輩(僕もそう呼ぶ)、同年代の先輩達からはアルという愛称で呼ばれている。名前からしてもうわかると思うけど、この人ハーフだ。一昨年の夏からこの海陽大学附属海陽高校に留学生としてやって来た人で、この生徒会の副会長を務めていらっしゃる。
「羨ましくなんてないですよ、後堂先輩。実際僕はからかわれているだけです。それと代わりたいのなら会長に言ってください」
「そうか!リリザさん、俺に抱きついてくださ・・・・」
「嫌ですわ。孝幸は抱き心地がいいけどアルは変態ですからお断りしますわ」
「NOoooooooooo!!」
後堂先輩の悲鳴に似た絶叫が生徒会に響き渡る。確かにこの人、会長の言うとおり変態だからな。見た目は青髪でイケメンなのにな。どうやら日本のアニメやゲームにハマったらしくてそこから変態に・・・・本当に残念な先輩だ。
「なんか変なこと考えただろ」
「いや、後堂先輩は本当に残念な先輩だと思っていただけです」
「みんな俺のこと嫌いなの!?」
僕が止めを刺すと後堂先輩はいじけてしまった。後堂先輩は自分の鞄からノートPCを取り出して電源を着けると、"もういい、俺はエロゲに逃避する"と言って現実逃避をする。正直、生徒会でエロゲをするのはどうかと思うけど、このひとが暴走するよりかはマシだ。けれども、後堂先輩はいつもこんなだけど女受けはいいからな。あまり女の子にモテたことがない僕にとっては羨ましい限りだ。
僕らがこんなコントをしていると再び生徒会の扉が開かれる。
「すみません、遅れました」
「ごめんなさい、HRが長引いちゃって」
謙虚に謝る長い黒髪の女性と控え目に謝る短い茶髪の少女がいた。
「こんにちは。雫さん、遥香」
僕は生徒会室に入ってきた2人に声をかける。
「こんにちは。孝幸君」
霞ケ丘雫さんが落ち着いた、それでいて凛々しい声で挨拶を返してくれる。やはり、この生徒会の中で一番大人な方は違うな。会長からはお嬢様としての気品が流れているけれどもこの人からは大人の気品を感じさせる。腰よりも少し長い黒髪に黒い瞳のよく整った顔、会長が太陽であるならば雫さんは月と例えられるほどの美少女。いや、美人だ。雫さんの家の霞ケ丘家は天月流という剣術があり、彼女はその後継者らしい。強くて美しい、しかも成績も上位5位以内には入っている。まさに欠点がないように見える。
「孝幸君、今から決闘しましょう」
「いえいえ、やりませんよ!というよりも唐突に何言い出すんですか?!」
「戦いはいつも唐突に起こるものだよ。さあ、構えて」
雫さんはそう言うと竹刀を取り出して構える。
「いやいやいや、何も僕達が戦う理由はありませんよね。無益な戦いはやめましょうよ」
さすがに生徒会室で決闘などするわけにはいかない。というよりも雫さん相手だと命がいくつあっても足りない。
「戦争は無益なものだよ」
「わかっているのなら決闘しようだなんて言わないでください」
この人、血の気が多いんだよな。家の剣術を継いでいるせいなのかすぐに戦闘方面に思考がいくから決闘をよく申し込まれるし。まあ、全部断っているけど。
「あ、あまり争い事とかやめたほうがいいと思います」
可愛らしい声で雫さんの戦闘思考を止めてくれるのは高校生とは思えない小柄な体格の亀井遥香ちゃんだ。会長、雫さんとは違って肩の辺りまでしか茶色い髪を伸ばしておらず、可愛い童顔だ。その体格のせいか性格は控え目というよりも気弱(?)な感じ。その愛らしい様子から学園の天使、小悪魔とか呼ばれている。でも僕は小悪魔など生ぬるいと思うわけである。なぜなら
「決闘じゃなくて一方的に痛みつけるといいですよ。雫先輩」
「やっぱこの子腹黒い」
そう、腹黒いのだ。それもとてつもなく。だから僕は彼女のことを小悪魔ではなく悪魔と呼ぶ。もっとも、本人に言ったら後が怖いから実際に呼んだことがないのだが。
さすがに、雫さんも遥香ちゃんが言ったことを実行はせずにおとなしく自分の席に着いて、遥香ちゃんも残念といった様子で席に座る。
ここでようやく、会長、後堂先輩、雫さん、遥香、そして僕の5人で構成されている生徒会が揃った。




